『アイ・アム・レジェンド』
I AM LEGEND(2007年アメリカ)
監督 フランシス・ローレンス
脚本 マーク・プロトセヴィッチ
アキヴァ・ゴールズマン
原作 リチャード・マシスン
出演 ウィル・スミス
アリシー・ブラガ
ダッシュ・ミホク
サリー・リチャードソン
■ストーリー■
ガンを治療する新薬が開発されるが、治療した者たちが狂犬病のような症状を見せ始める。この病気はニューヨークを中心に広がっていくのだった。3年後、90%の人類は死滅したが、残りの人々の一部は感染者となり凶暴な生物となっていた。免疫を持っていたため生き残った軍の科学者ロバート・ネビルは、ニューヨークで病気の治療の研究を行っていた。
□■□ネタバレあり!□■□
■感想■
リチャード・マシスン原作「アイ・アム・レジェンド」(ハヤカワ文庫)の映画化作品です。
リチャード・マシスンの「アイ・アム・レジェンド」も度々タイトルが変わりますね!
最初が「吸血鬼」、その後「地球最後の男」に改題されて、今回は「アイ・アム・レジェンド」と味も素っ気もないカタカナタイトルになっちゃいました。
それに、今回は新訳での発売だったんでビックリ!ハヤカワ文庫の「地球最後の男」の版持ってるんですけど、今回の「アイ・アム・レジェンド」版も買っちゃおうかな??って。けっこう題材的には今風の感じの作品なんで、「新訳」って、こういうのって珍しくないですか??ただ、タイトルの「アイ・アム・レジェンド」はいかにも映画の宣伝みたいで好きじゃないですけどね!
このリチャード・マシスン原作の映画化なんですすけど、みなさんご存知だと思いますけど3度目の映画化です。まず、1964年にヴィンセント・プライス主演で映画化されてます。最近、DVD化されたので観た人も多いはず。実は自分もDVDを購入したんですけど、まだ観てないです。
そして2度目の映画化がチャールトン・ヘストン主演で1971年に映画化されてます。原作とはまるっきり違うアクションSFになってますけど1970年代ってこともあってか、なかなか面白い作品になってると思うんですけどね。
ただ、原作者のリチャード・マシスンは
「自分の小説とまるっきり関係ないような作品なのに原作料もらえた」と言ったって噂もあるくらいの作品です。これって、すごいイヤミなのか皮肉なのか??
で、今回3度目の映画化の『アイ・アム・レジェンド』なんですけど、主演がウィル・スミスっていう段階でかなり観る気が萎えたんですけど、
「もしかしたら面白いかも」
と思って観にいきました。
やっぱり前回の映画化と同じくアクションSFになっている気が…。
同じアクション風なデキならチャールトン・ヘストン版の方が100倍面白いです!
もう、一言で言えば、“なぜリメイクしたの??”
今作はかつてリドリー・スコット監督、アーノルド・シュワルツェネッガー主演で映画化の動きがあったんですけど、結局、その企画はお流れになったことがあったんですけど、今回の映画化を観る限り、リドリー・スコット版も観てみたかった気がします。ウィル・スミス主演でも、アーノルド・シュワルツェネッガー主演でもアクション風な感じなら、絶対にアーノルド・シュワルツェネッガー版の方が面白そう!
今回の映画化で、良かったのはランニングタイム100分と最近の映画では短いところだけです。
ウィル・スミスは軍人や警官には見えても、どうも科学者には見えないです!
ルームランナーや筋トレしてるシーンは、やたらマッチしてましたけど、ウィル・スミスが科学者役、なんで??って感じです。
あと、水、電気、ガスはどうしてるの??トイレは??まぁ、トイレは公園でしてるのかもしれないですけど、そういう描写や説明は必要でしょ。だって、ウィル・スミスが住んでる家ってすごく快適そう。パソコン使ってたり、ご飯作ってたり、シャワー浴びたりして。水、電気、ガスの供給源の説明の描写は絶対に“必要”です!
あと、あの凶暴な感染者がいるのに、あの家の装備は薄すぎ!もうちょっと要塞化しておかないと。紫外線灯や爆弾を仕掛けるんだったら、もっと重装備にしておかないと!『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』(1968年)みたいに偶然逃げ込んだ一軒屋じゃないんだから!あれだけ警備にかけられるんだったら、もっともっと重装備にしないと!
まぁ、そんなことは良いんですけど、どこが“レジェンド”なのか??ってことです!そんな終わり方あり??って感じの終わり方です!あのラストだけでマイナス50点!!
まぁ、今作の主人公は、ゾンビみたいな感染者たちが相手だし、主人公が感染者たちを次から次へと、木の杭で殺しまくってるわけでもないから、レジェンドにならないのかもしれないですけど。
あの逆転の発想の素晴らしい原作をどうやったら、こういう映画に作り上げようって気持ちになるんですかなね??このラストなら1970年代の雰囲気たっぷりの『SF地球最後の男オメガマン』の方が断然上です!
脚本も、もう1ヒネリ2ヒネリして欲しかったです。いや、いっそのコト、最初から書き直して欲しいです!!
ラストは原作通りにしちゃいけないんですか??
原作では、誰が「吸血鬼」だったのか、恐れられる存在なのか、まさに逆転した発想の秀逸な作品なのに、映画版の今作は血清を発明して主人公が“伝説”になったって、単なる良くありがちなヒロイックなSFに成り下がってるじゃないですか!
「アイ・アム・レジェンド」でなく「ヒー・イズ・レジェンド」にしてどうするの??
あまりの結末に、映画館で愕然としましたよ!
このラストはヒドすぎ!!
大体、感染者が凶暴なゾンビみたいな感じで社会性を持ってない設定なのも、原作の魅力をまるっきり引き出してないです!原作は原作!映画は映画ですけど、だったらリチャード・マシスン原作の「アイ・アム・レジェンド」の映画化でなく、オリジナルな終末SFとして映画化すれば良いのに!!
あと、ウィル・スミスが地球最後の男どころか、女性が生き残っていたりして!!彼女は新しい感染した生き残りの人類なのかな??とも思ったんですけど、全然、そんなコトもなく普通の生き残りでした。
あのラストの村の描写もすごすぎ!今作って『世界が燃えつきる日』(1977年)なの??って印象です。
ニューヨークで1人で孤独を味わっていた描写が台無しなラストに、もうマイナス30点!
どうせなら『ドーン・オブ・ザ・デッド』(2004年)のザック・スナイダー監督、ジェームズ・ガン脚本のコンビにでもリメイクして欲しかったかも! マイナス20点
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