金峯山寺の山号は国軸山、宇宙の中心の山という意味を号しています。
蔵王堂は過去6回の焼失記録があり、現在の建物は天正20年(1592年)頃再建されました。
高さ34メートル、四方36メートルという巨大な木造の建物で檜皮葺の建物としては世界一です。
お祀りされる御本尊・金剛蔵王大権現は像高728cmの巨大秘仏で、
二度とないことが起きたときしか一般公開されません。
しかし仁王門大修理勧進のため今年3月31日から6月7日まで開扉されています。
平成24年から向こう10年間毎年一定期間に開帳されるようです。
パンフの写真
左から弥勒菩薩(未来世)、釈迦如来(過去世)、千手観音(現在世)の権化
権現とは権(仮り)に現われるという意味で、
過去・現在・未来の三世にわたる衆生の救済を誓願して出現されました。
私たちを守ってくださる守護仏でもあります。
3尊の全身はことごとく悪魔を払う忿怒の形相を現されています。
怒髪天をつく頭髪、口の両端から刃のように突き出す牙。
左足で地下の悪魔を押さえ、右足は大地を高く蹴り上げ天地間の悪魔を払うお姿。
右手にある三鈷は天魔を砕く相で、左手の刀印は一切の情欲や煩悩を断ち切る剣。
さらに、背後の火炎は偉大なる智慧をあらわし、智慧の焔で煩悩の薪を焼きつくすということ。
御身の青黒色は深い慈悲を現しています。
この青黒(しょうこく)色は、ラピスラズリだそうです。
これだけの巨像を塗りつくすのに、どれだけのラピスラズリが要ったことでしょう。
目に入った最初はその色と巨大さに驚きます。
表情とその肢体の奇天烈さに度肝を抜かれます。
しかし
じっと拝見していると、怒ってそうだけど怖くないのです。
役行者が汚濁に満ちた世の中に救済を求める苦行の中で強い祈念によって祈り出された権現様。
心静に拝めば、すべてを認め一切をゆるす「恕(じょ)の心」を感じ取ることができるといわれています。
見るからに恐ろしい姿は、ただ怒りに燃えているというのではなく、
その根底には「恕」(じょ)のこころがあります。
一切を恕(ゆる)し育み、人々を導こうという慈悲の心です。
まさに、大自然の霊威そのものの発現とも思われる金剛蔵王権現は
神であり、仏として、神仏混淆を旨とする修験道のご本尊です。
ちょっといままでにお目にかかったことのないお姿です。
向こう10年間チャンスがあれば、是非実物のお姿を拝まれると感じるものが多々あると思います。