「離場有浮」とはアルタード・ステイツ、是巨人、ウンベルティポ・トリオ、ザ・ワールド・ヘリテッジ、サンヘドリンといったバンドで活躍する日本のアンダーグラウンド・シーンを代表するベーシスト、ナスノミツル氏のプロジェクトで、2008年に灰野さん(g)と石橋英子嬢(ds)を迎え、同名のアルバムをリリースした。そのプロジェクトとしての初のライヴ。灰野さんとウンベルティポのギタリスト今堀恒雄氏を迎えての演奏である。巨匠3人の組み合わせということで平日にもかかわらずショーボートは満席。
ライヴ開始前物販席でスタッフの人と話していたら灰野さんがふらっと現れて私の横に座る。対バンのmujerの女性が運んできたバリトン・サックスがケースだけで11kgもあるとか、今日のライヴはゆったりとした静かな演奏になるとか、しばし歓談する。ナスノ氏もやってきて演奏の簡単な打ち合わせ。この日はあくまでナスノ氏メインのライヴだから灰野さんは心からリラックスしている様子。
女性5人組パフォーマンス・グループmujerの演奏が始まる。最初はドラムとダンスのデュオ。ダンスがキビキビしていて気持ちがいい。そこにもう二人のダンサーとバリトン・サックス奏者が加わりダンスと即興音楽の入り交じったステージを展開する。ダンサーは時折電子楽器を弄ったりやジャンベを叩いたりして飽きさせない。まだ若い乙女たちが創り出すトライバルな世界の虜になる。全員なかなかの美人だ。大里俊晴氏の「ガセネタの荒野」に登場する女子高生前衛バンド、火地風水を連想させた。観たことないけど。
続いて離場有浮。チラシには灰野さんの楽器が"???"となっていて何を演奏するのか楽しみだった。まずは久しぶりのハーディーガーディー。今堀氏はマンドリンを弾く。ナスノ氏のディレイをかけたベースが空間を埋める音の中に浮かび上がる。灰野さんは続いてSGを手にアブストラクトな音を爪弾く。今堀氏のギターと絡み合って美しい響き。灰野さんの天上のファルセット・ヴォイス。弦楽器3人が紡ぎ出す無上の世界にユニット名通り魂が身体を離れて宙に浮くような感覚に身を委ねる。そしてこれも久々灰野さんのドラムス。浮かび上がった魂を叩きつける打撃音が襲う。このg,b,dsのトリオの時が一番興奮した。その後灰野さんはギターに戻り、ノー・マイクで搾り出すように歌う。はじめに言っていたようにゆったりとリラックスした演奏の中に魂を込めた演奏が伺えて夢見心地の1時間半だった。
リヴァーブの
中に浮かんだ
病み上がり
離場有浮の第2回目はベーシストばかり4人集めて12月に開催されるそうだ。