8MM RECORDS FESTIVAL IN JAPAN
-本日の放射線量は8mmシーベルト この数値は直ちにあなたの精神に影響を与えます
イタリア/ポルトガルを拠点に良質な地下音楽のリリースをつづける8mm Recordsからリリースされた東京サイケデリアが一同に集う、極彩色な闇となる二日間。
<LIVE>
UP-TIGHT/魔術の庭/Los Doroncos/ASTRO
<DJ ROOM>
DJ / VJ: 園田佐登志、コサカイフミオ
「園田佐登志+コサカイフミオ~地下音楽の夕べ / ジャパニーズ・アンダーグラウンド 1975 - 1990」
Liquid Light: dbqp (liquidbiupil, sunvize, etc.)
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当初は8mm Recordsの主宰者でありマルチプレイヤーのミュージシャンでもあるLuca Massolin(伊)が来日しセッションする予定だったが諸事情により中止になり、日本のアーティストのみのイベントになった。出演者を見ると日本のアンダーグラウンド/サイケデリック・シーンを代表するアーティスト大集合でサイケ好きには堪えられない2日間だ。いずれも10年以上の活動歴のあるベテランだから内容は保証付。2日目も行きたかったがこちらも諸事情で1日目だけの参戦。
トップがUP-TIGHTで7:00PMスタートとのことで急いで新大久保へ向かう。この時間の山手線は激混みで死にそうだった。ギリギリ間に合い最初から観ることが出来た。時間が早いせいか客は10人程度。浜松で活動する彼らは、最近はリーダーの青木智幸氏(vo.g)が単身上京しソロやセッションをしていたが、UP-TIGHTとしては久々の東京ライヴ。正規のベーシストが諸事情で(こればっか)出演できずヘルプだったが、彼らならではの強烈な演奏を聴かせてくれた。名前から分かる通りヴェルヴェット・アンダーグラウンドの特に「ホワイト・ライト/ホワイト・ヒート」の影響の色濃いメランコリーとヴァイオレントの共存するパラノイア・ワールド。ルー・リードを想わせるサングラスと黒いシャツの青木氏の深くリバーヴのかかった幻想的なヴォーカルと引き裂くように叫びを上げる覚醒的なファズ・ギターに魅惑される。最後はギターを投げ捨て唄う荒々しいステージングには破滅の美学が漲っている。昨年青木氏が店長だった浜松のライヴハウス、ルクレチアが閉店してしまい、現地での活動はどうしているのか尋ねたら、機材をそのまま引き取って新しいライヴハウスがオープンしそこが拠点になっているそうだ。たぶん「zoot horn lolo」というロック・バーのことだろう。以前紹介したノイズ・バンド庭やもよぽん嬢率いる原子力牧場も静岡なので是非現地へライヴを観に行きたいものだ。
2番手は魔術の庭。2007年に17年の活動に終止符を打ったアングラ界の老舗オーヴァーハング・パーティ(以下OHP)の福岡林嗣氏が2008年に結成したサイケデリック・バンド。OHPは大好きで何ども観たしレコード/CDも殆どすべて集めた。2000年代前半の東京アンダーグラウンド・シーンでは光束夜、ザ・スターズ、マーブル・シープ等のサイケ・バンドが活発に活動しており、独自のシーンを形成していた。福岡氏はOHPの他にもソロやセッションで活動し、光束夜の故・金子寿徳さんや向井千恵さんと共演アルバムをリリースし、ライヴ・セッションも数多い。彼が元OHPの諸橋茂樹氏(ds)と結成した魔術の庭を観るのは初めてだが、YouTubeのライヴ動画ではサイケデリックな照明でヘヴィなギター・サウンドを奏でておりずっと観たいと思っていた。この日のステージは照明は普通だったが、轟音でドライヴするハード・サイケをたっぷり聴かせてくれてOHP時代を思い出す懐かしい世界に浸った。今回のイベントは元OHPのベースのSachiko嬢が中心に企画され、彼女がステージ前でビデオ撮影をしていた。
バー・ラウンジでは園田氏とコサカイ氏が1970年代後半のアングラ・シーンのDJトークをしている。園田氏所有の数々のフライヤーを壁面に投射し、貴重な音源を解説を交えて聴かせる。リキッド・ライトも投射され、60年代のゴーゴーバー(死語)の雰囲気。演奏の合間に覗く程度だったのでじっくり聴けず残念。UPLINKかDommuneあたりで単独イベントをやってくれまいか。
3番手はASTRO=長谷川洋氏。当初はLuca Massolinとのデュオの予定だったが、来日中止でソロに。長谷川氏は先日のUPLINKでの「中国極端音楽」イベントにも来ており、挨拶したら「あの日は最前列で大変でしたね」と言われた。最近純ノイズを聴いていないことはその時のブログでも書いたが、ASTROのソロ・ライヴも3年ぶりくらいだろうか。機材テーブルを前に足を開いてスクッと立って演奏するスタイルはカッコいい。最初は比較的大人しい電子音で始まるが、やがて空気を振るわす大音量ノイズに。ハーシュノイズの中から光が差すように美旋律が立上がる。さすが活動30年を超えるベテランだけあって単調な垂れ流しノイズとは全く違う豊饒の海に溺れる。
最後がLos Doroncos。この日の出演順を知った時は年齢の若い順か?と訝ったのだが、実際に観ると最後がDoroncoさんで大正解。轟音のファズ・ギターと濃厚なハーシュノイズが続いた後に訪れた開放的な安らぎの時間。肩の力を抜きレイドバックした演奏がすんなり心に滲み込む。ヘロインとアシッドをキメてトリップしまくったあとにマリファナで余韻に浸るような感覚(経験したことないけど)。再びヴェルヴェッツを例に出せば「シスター・レイ」の後に「アフター・アワーズ」を聴く感じ。高揚した精神が沈静化してゆき、拡張するDoroncoさんのギターが浮遊感覚を持続させる。気持ち良く酔えたライヴだった。
川口雅己New Rock Syndicateや水晶の舟が出演する2日目も大久保の明るいコリアン・ストリートに極彩色のパラレル・ワールドを出現させたに違いない。
サイケ道
曲がりくねって
奥深く
これらのアーティストの作品を海外でリリースするLucaさんにも話を聞いてみたかった。Sachikoさん、また企画してください。