A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

ディアフーフ/私立恵比寿中学@渋谷 O-East 2012.10.13 (sat)

2012年10月15日 00時28分43秒 | ガールズ・アーティストの華麗な世界


VICE Japan presents THE OTHER NEWEST ONE
vol.0 attack of the killer panda
act: DEERHOOF/私立恵比寿中学/DJ ☆☆☆

1994年にサンフランシスコで結成されたディアフーフは当時全米を席巻していたグランジ/オルタナ・ムーヴメントとは一線を画した新感覚派アヴァン・ロックで、変態パンクの大御所レッド・クレイヨラ、ペル・ウブ、ハーフ・ジャパニーズ、セバドー、フレーミング・リップス、ヨ・ラ・テンゴ、ダンディ・ウォーホールズなどの流れに属し、グランジに馴染めずブリットポップに傾倒していた私が唯一追っていた90's USロック一派だった。その中でもディアフーフは日本人女性サトミ・マツザキ嬢がいるので親しみを感じていた。日本との繋がりは深く90年代から何度も来日しているが、生で観るのは今回が初めてである。

9月半ばに来日を知りO-East公演のチケットを購入しようとしたらどこでもソールドアウト。そんなに人気があるのか?と思ったら、対バンが"謎の超人気アーティスト"と書いてある。そのせいかなと諦めていたら招聘元のコントラリードから特別入場枠のメールが届いた。コントラリードは昨年来PHEW+高橋悠治、AKRON/FAMILY+不失者、坂田明+ちかもらちでチケットを購入しておりメルマガ会員になっているのだ。おかげで無事にチケット確保。対バンは私立恵比寿中学とある。メジャー系に疎い私でも名前だけは知っているアイドル・グループだ。略称「エビ中」、人気大爆発中のももいろクローバーZの妹グループである。アイドルのライヴが如何に熱いかは「アーバンギャルドの病めるアイドル五番勝負!!!!!」で経験済みだから慣れているが、何故ディアフーフと?という疑問は残る。とにかく貴重というか珍奇なイベントであることは確か。

開演時間にO-Eastへ行くと予想通りTシャツに首タオルのアイドル・ヲタの若者で大混雑。特別枠のチケットは意外に整理番号が早く群れなすヲタ軍団を尻目に早々に入場。前列で声のデカい若者達に囲まれるのは遠慮して後方の一段高い柵から観戦。90%を占める男性客に交じる女性客はディアフーフのファンか。

開演15分前に客席がカラフルな照明で照らされ右手のカーテンが開きDJの蝋人形が出現。確かに出演者に「DJ ☆☆☆」とあるから誰か著名なDJがまわしているのだろう。どこかで見た顔のような気が。。。ロネッツやシュプリームス等60'sガールポップをプレイ。エビ中ファンは待ち切れず曲が終わる度に歓声が上がり、次の曲がかかるとあ~あというため息が漏れる。

15分押しで客電が落ちいよいよエビ中の登場。怒号に似た野太い歓声と一斉に掲げられる蛍光ライトが眩しい。中学生の少女(実際に年齢は13~15歳)が笑顔で駆け足で出て来て四つ打のテクノビートで踊り歌う。毎度のことながらファンの掛け声がバッチリ統制されているのに感心する。3・4曲程歌ってお約束のメンバー紹介。エビ中はライヴのことを「学芸会」、ファンを「中学生のみんな」と呼び、メンバーは「出席番号7番 エビ中イチの元気っ子ミレイです!」という風に明るく自己紹介。ヲタの方々から「ミレイちゃんレッツゴーっ!」とか声を合わせたコールがかかる。「初めましての方はどれくらい?」と聞くと半分くらいの観客が手を挙げる。「ひとりひとりの名前を覚えるのは無理だから"エビ中"とだけ覚えて下さいね」と健気なお言葉。「ところでみんなディアフーフさんってどんなバンドか知ってる?」との問いにメンバーのひとりがwikiを読み上げる一幕も。「アメリカ出身のノイズロックバンド」と言うとメンバーから「ノイズロックって何ですか?」との質問。「質問はあとにして下さい」との台詞になるほどこれは授業風景を模しているのだと納得。アイドル戦国時代を生き抜くためにそれぞれ色々工夫して個性をアピールしているのだ。



後半は最近アイドル界で流行のヘビメタ/パンク風の曲やラップ調の曲やバラード・ナンバーが続く。ファンのノリも最初に比べて大人しめで歌に聴き入っている感じ。O-Eastは1年前にエビ中がワンマン学芸会をやった思い出のホールとのこと。最後は再びテクノビートの盛り上がり大会で終了。やはりアイドルのライヴは熱い。



この日のみディアフーフとエビ中のコラボTシャツが会場限定で発売。終演後販売開始なのでエビ中ファンもディアフーフが終わるまで帰れない。隣のヲタ4人組の会話を盗み聞くと「Tシャツ並ぶから早めに出た方がいいですよね」と作戦会議をする一方で「ディアフーフをYouTubeで観たけどドラムがめちゃ凄いんですよ」「CDにはいろんな音が入ってるけどライヴだと4人だけだからシンプルでしょうね」と意外に研究熱心なことが伺える(因みにヲタさん達の言葉使いは丁寧語が基本)。目当のバンドが終わるとさっさと帰ってしまうロック・イベントにありがちな客よりよっぽど音楽好きだな~と感銘を受ける。謎のDJは今度はジェファーソン・エアプレインやストロベリー・アラームクロック等60'sサイケで会場の雰囲気をディアフーフ向けに塗り替える。

シタールのSEの中ぶらりとメンバーが登場し楽器を構える。エビ中に負けない歓声。左からジョン・ディートリック(g,b)、サトミ・マツザキ(vo,b)、エド・ロドリゲス(g)、グレッグ・ソーニア(ds)。ジョン&エドの粘っこいギターリフでライヴ開始。サトミ嬢のキュートなハイトーン・ヴォイスでポップなメロディが歌われ、それに酔って気持ちよく踊っていると突然の急転直下に足を挫くこと間違いなし。元祖脱臼ポップの本領発揮である。アソビ・セクスのユキ・チクダテ嬢の声を聴いたときサトミ嬢に似てると思ったら、今回の来日に向けてチクダテ嬢が「ディアフーフは多分、ライブで見るのが一番好きなバンド! 私にとって彼らは、生を肯定してくれてインスピレーションを与えてくれる存在。」とメッセージを寄せていたのでかなり影響されたのだろう。ディアフーフがオブ・モントリオールやジャパンドロイズ等の注目バンドを擁するインディー・レーベルPolyvinyl Recordsと契約しアソビ・セクスとレーベルメイトになったのも何かの縁か。ベースを持ってピョンピョン飛び跳ねる小柄なサトミ嬢はノン・バンドのNONさんを思わせる。グレッグはタムのないシンプル極まりないセットで驚愕のドラミングを披露。辿々しい日本語でMCもする。曰く「今日はとても嬉しい。エビ中とディアフーフはちょっと.....ほとんど同じ!エビ中のシャツはボタン一杯。ワタシのシャツはフサフサ一杯」。

こんなユーモア溢れる演出もありエビ中ファンの心も掴んだ様子でヲタの皆様もジャンプして盛り上がっている。会場にほんわかした温かいヴァイブが溢れ出す。硬派な前衛バンドやノイジシャンとのイベントではあり得ない不思議な連帯感が生まれる。"ポップと前衛の融合"というこのブログではお馴染みの命題が見事に結実したイベントだった。60分の本編のあとのアンコールは代表曲「パンダパンダパンダ」。アーバンの時のようにディアフーフとエビ中の共演は適わなかったが終演後の観客は皆笑顔だった。



階段には予想通りコラボTシャツを求める若者の長蛇の列。Tシャツのデザインがもろデスメタルで笑ってしまう。アイドル・ファンは若いし感性も豊かなので、大人が押し付けるジャンルの壁を易々飛び越えてしまう。日本の音楽界もまだまだ捨てたもんじゃないと実感した。


このイベントはDommuneでストリーミング放送された。宇川直宏氏のツイートで謎のDJの正体がサイケデリック・アートの巨匠、田名網敬一さんだったことが判明!これはすげぇコラボイベントだぁ~!!!


アイドルと
ノイズの共演
いと楽し

ディアフーフは14日(日)札幌公演、16日(火)には渋谷WWWで増子真二氏(Boredoms/DMBQ)率いるギターオーケストラThe Floating Guitar Borchestra Of Boredoms!と対バンする。これも面白そうだ。
コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする