「生き残るための音楽」
サブカルチャーからカウンターカルチャーへ。
アーバンギャルドが創る、新しい音楽の基準値。
女性アーティストの記事が続いているが、正直言って今面白いのは去勢され従順な草食動物と堕した男子諸君ではなく、100%アイデンティティを取り戻しつつある女の子達なのは間違いない。心の檻から自由になり、偶像=アイドルは病み死に絶え、ここに新たなる対抗文化の扉が開かれた。アーバンギャルドの頭脳は思考過激論者=松永天馬氏だが、その福音をポップ色に磨き上げる伝道師は水玉姫様=浜崎容子嬢(よこたん)に間違いない。よこたんのきゃりーぱみゅぱみゅのお姉さん風萌えヴォイスがなければ、残るは片翼をもがれ墜落する堕天使のようなキモ系男子集団と言っても良かろう(って言い過ぎ?)。メジャー2作目となる「ガイガーカウンターカルチャー」には前作「メンタルヘルズ」で若干モザイクがかかっていた"前衛都市哲学"の神髄が剥き出しにされ直裁的な言葉と音響が如実に提示されている。
いつものように天馬氏のプロパガンダを引用しよう。
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新しい、音楽の基準値 松永天馬
世界は絶えず壊れ、創られ、変化する。この国だって変わった。
表面的には何も変わっていないように見えるが、実際は違う。
旧来のメディアとの"絆"は断ち切られ、傷となった。
それに応じて、カルチャーの在り方も生まれ変わろうとしいる。
我々にいま必要なのは、サブカルチャーではない。
怒りの、抵抗の文化。すなわちカウンターカルチャーだ。
『ガイガーカウンターカルチャー』は、この国いま、
そしてこれからを十一の歌に活写した作品だ。
ニュースといっても構わない。報道かもしれない。
この国いま…しかしそこには"音楽"だけがない。
"音楽"が旧来のメディアとなったからだ。
ロックンロールは死んだと言われて久しい。
対抗文化の象徴であったロックに代わって、
アーバンギャルドが新しい音楽の基準値を創ろう。
新しい文化のために。
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この新作には「生まれてみたい」(歌は死なない。 聴くたび、あなたは生まれるだろう。)、「病めるアイドル」(我々はバンドなのか。アイドルになりたいのか。どちらでもあり、どちらでもない、音楽そのものであり続けたいのか。)、「さよならサブカルチャー」(僕だけのサブカルチャー。 それからの決別は、即ち、これまでのアーバンギャルドからの決別を意味する。)<かっこ内は各曲の天馬氏によるプロパガンダから抜粋>の3曲の先行シングル曲が収録されている。どの曲もそれぞれ重要な意味を付加された独立したナンバーであるが、アルバムにパズルのように納まり「魔法少女」「処女」「ILL」「眼帯」「血文字」「天使」「ガイガーカウンター」「ノンフィクション」というアーバンギャル&ギャルソンに馴染み深い暗号が附された楽曲に挟まれると一瞬にして壮大な宣言文、例えば「アメリカ独立宣言」、マルクス「資本論」、フロイト「夢判断」、毛沢東「実践論」、サルトル「弁証法的理性批判」など歴史的な著作を思わせる革命的文脈の一章に変わってしまう。しかし小難しい理論/思想が微塵も感じられず紛れも無いポップ・ソングとして成立しているのがアーバン・マジック="血文字系魔法少女"よこたんの魅力故なのである。
ヴィレッジヴァンガードやまんだらけに通い詰める現代の少年少女への啓示。共に旗を振り唱和することで創出される連帯感。時代は流れ政治は不安定で日常に倦んでも変わり得ないのはすべての人間に赤い血が流れているということである。ジャケットの街の上にべっとり印されたキスマークを見ながら「血文字系」で警告するように何度も鳴るピー音を聴きつつ、そんな当たり前のことに思い至った。またしても天馬氏とよこたんと3人の手練音楽戦士の術中に絡み摂られてしまった私である。
音楽の
新たな基準の
測定値
アーバンギャルドが音楽・主題歌を担当した映画「恋に至る病」が絶賛公開中!