11作目の最新アルバム「ソニック・キックス」で持ち前のロック&ソウル魂にクラウトロックを加えたニューウェイヴ的サウンドを展開したポール・ウェラー兄貴の3年ぶりの来日公演。ジャム時代から日本贔屓の兄貴は来日公演は15回を超える。私が前回観たのは90年代だから10数年ぶりのご対面である。
Zepp DiverCityはZepp東京が改名したのかと思っていたら、今年4月にオープンしたばかりの商業施設ダイバーシティ東京プラザの地下に出来た真新しいホールだった。キャパは約2500人。Zepp東京と似た作りだが、より広く開放的で気持ちがいい。ポール兄貴のツアーは東京3日間、大阪、名古屋の5公演でこの日が最終公演。土曜日なので真っ先にソールドアウトになった。
海外ではオアシスのギャラガー兄弟を始め若手バンドをゲストにツアーをしており、ジャパン・ツアーでもthe HIATUS、OKAMOTO'S、The Birthdayなど日本のバンドがゲスト出演。この日はくるりがゲスト。会場を埋める比較的年齢の高い客層にはピンと来ないかもしれないが、ヴォーカル&ギターの岸田繁氏をリーダーに1995年に結成され若者から大きな支持を集める京都出身のバンドである。渋谷系とブリットポップとエレクトロを混ぜ合わせたサウンドはUKロック・ファンに高く評価されている。ライヴを観るのは初めてだがCDは聴いていて当時スピッツ、ホフディラン、サニーデイサービスに次いで気になる存在だった。メンバーチェンジが激しいバンドで、現在はドラムレスの4人組。ライヴではヘルプのドラマーが参加。トランペットとエレクトリック・チェロを取り入れているのが面白い。ELOの様なポップなメロディ、室内楽風のアンサンブル、タイトなギターロックとバラエティのある演奏。観客も温かく迎えて30分という短いステージだったが、オープニングに相応しかった。「美容院でポール・ウェラーの写真を見せて『こんな風にして下さい』と言うと、いつも全然違う髪型に仕上がった」と岸田氏がMC。私も同じ経験があるので微笑ましくなった。
30分間の休憩とアナウンスがあり、ずいぶん長いな、と思ったらトラブルで天井の照明を下ろして交換していた。交換が終わり直った照明が光ると会場から歓声があがる。
いよいよポール兄貴の登場。ブルーのシャツにエピフォンのギター。相変わらず細身でカッコいい。タイトなロケンローを連発。新作の曲もジャムやスタイル・カウンシルも含む昔の曲も全く同じように魂を込めて歌う姿は、額に青筋を立ててジャンプしまくっていたデビュー当時のジャム時代と変わらないテンション。兄貴は年を経てもオヤジではなくアニキのままだぜ! スタイル・カウンシル時代はオシャレ路線で軟派になったと思い離れていたが、今回演奏された「コスト・オブ・ラヴィング」「マイ・エヴァー・チェンジング・ムード」を聴くとソロになってからの曲と変わらぬソウルフルR&Rで、モッズ魂が貫かれていたことを実感する。ギターをSGに持ち替えシャウトする姿は30年前以上に円熟した味があり憧れてしまう。エレピを弾く曲には特にモータウン・ソウルの影響が濃い。2度のアンコールを含め2時間超えの力演。ジャム時代血気盛んな頃イギリスの音楽紙で憧れのピート・タウンゼンドと対談し「同じ曲(マイ・ジェネレーション)を10年以上演奏し続けてるなんて信じられないよ」と噛み付いていたポールだが、その頃のピートの年齢を過ぎてもパンク精神を失わず現役で歌い続けているのは素晴らしい。
オープニングを含めて3時間スタンディングのライヴ、客層的には辛い世代も多かっただろうが、ぎゅう詰めになって階段を登る観客の顔はみんな満足感で輝いていた。出口ではフライヤーの配布はなし。先日の八八のクアトロでもなかったし、プロモーターはフライヤーを配らないのが流行なのだろうか?確かに大量のゴミが散らかることを考えればコスト削減にはなる。
お台場に
溢れるかつての
モッズ少年たち
ポール兄貴は12月下旬にヨーロッパ・ツアーを行う。