Live At The Rock May Kan ~King Of Garage Metal Returns~
ちょうど5年前2007年9月に川崎クラブチッタでデビュー25周年記念ライヴを観た名古屋のヘヴィメタル・バンド、アウトレイジが25周年記念ライヴを行った。しかも目黒鹿鳴館というメタルの聖地に20数年ぶりに出演。デビュー当時、まさにガレージバンドのノリでまだ珍しかったスラッシュ・メタルをがむしゃらに奏でていた頃の初心に還り四半世紀の活動の総決算をするという意図。前日にさいたまスーパーアリーナで開催されたLOUDPARK12に出演し15000人の観客の前で演奏したバンドがキャパ350人のライヴハウスに出演するのだから当然チケットは即日ソールドアウト。大物バンドが小さなクラブでシークレット・ギグをやる感覚である。「ガレージ・メタルの王者」とは言い得て妙。
権之助坂を通るたびに「まだ鹿鳴館はやってるかな」と気にとめていたが、ココでライヴを観るのは20数年ぶり。というかアウトレイジを観るために通っていたので、彼らと全く同じである。入口にはアルバム・ジャケットを年代順に並べた大きなパネルが設置してある。階段を地下へ降りると20年前と全く同じ馴染みある光景が広がり感動する。HPには"新装オープン"と書いてあるが、以前あった椅子席を撤去し内壁をペイントし直しただけでこの会場ならではの独特の雰囲気は変わっていない。20年前もいつも満員だったが、この日は肝入りのアウトレイジ・ファンが集結しており開演前からむせ返るような熱気が渦巻いている。大半がアウトレイジのTシャツを着ているが面白いのがそれぞれデザインが違っていることである。長い歴史を誇るバンドだから物販Tシャツにも歴史ありである。筋金入りの年配ファンもいるが予想以上に若いファン、しかも女性客が目につく。浮き沈みがありつつも現役で活動し続けてきたことの証である。
開演時間が近づくと客席から自然にアウトレイジ・コールが沸き起こる。客電が落ちるとステージ前のカーテンにアルバム・ジャケットの映像が投射されそれぞれの収録曲が流れる。曲に合わせて掛け声が上がり、拳が突き上げられる。スペシャルな夜の始まりだ。カーテンが上がると神々しい4人の姿。ギターの阿部氏がスリムになっていて驚く。"ウオーッ"という大歓声に迎えられて2ndアルバムのタイトル曲「ブラインド・トゥ・リアリティ」からスタート。ひたすら過激でへヴィなサウンドという印象だったが、改めて聴くと練り上げた複雑な構成としっかりしたメロディの曲ばかりなのに気づく。どの曲にも掛け声やシンガロングしやすい部分があり、否応にもオーディエンスの興奮を高めるように出来ている。客席はモッシュの嵐で人間サーフィンも連発。キレイで華奢な女の子が躊躇いなく男性客の頭の上に飛び乗るのが面白い。構成が複雑なので必然的に長尺曲が多い。「今日はタップリやるから楽しんでね」とドラムの丹下氏がMC。その通り最初期の曲から「始めて俺達らしい歌詞が書けた」とヴォーカルの橋本氏が語った新曲、さらに大好きなラモーンズ「電撃バップ」のカヴァーまでこれ以上ない名曲のオンパレード。90年代後半に橋本氏が脱退し3人で活動していた時期があった。その頃の曲も「俺らの大切な曲だから」と演奏。ベースの安井氏がヴォーカルを取る。昔から安井氏はハードコアやドゥーム系やグラインド系が好きだったので王道のスラッシュ・メタルというより叩きつけるようなパンク・ナンバーでこれまたカッコいい。
90分ほど経過したところで橋本氏が「初老に入った方に悲しいお知らせがあります。実はまだ半分しか終わっていません」とMC。観客が大歓声で迎え撃つ。演奏する側も40代半ばなので20年前に比べれてかなりキツイはず。しかも全曲全力疾走のエネルギーの塊だから普通のロック・バンドのようにバラードでひと休みという訳にはいかない。演る側も観る側も真剣勝負の密度の高い濃厚な空間である。本編のラスト3曲は彼らの最初の海外レコーディングであり初期の最高傑作「ザ・ファイナル・デイ」収録曲で締め。個人的にも思い入れの深いアルバムだから大興奮。本編2時間。
しかしこれで終わる訳がない。アウトレイジ・コールの鳴り止まぬ中、バックドロップが1987年の自主制作デビュー・ミニ・アルバム「OUTRAGE」のロゴに変わる。アンコールはミニ・アルバム収録の4曲を演奏。25年前から恐ろしく完成度の高い楽曲を作っていたことに驚愕する。メタルばかりじゃなく日本のロック界の別格的存在であることを実感。2度目のアンコールも披露して計25曲2時間45分に亘るロング・セットにバンドも観客も燃え尽きた。去り際に橋本氏が「またやろうな!」とひと言。そう、これはアウトレイジの最初の25年の節目に過ぎない。噂によれば来年メジャー・レーベルから新作をリリースするらしいし、再び世界を股にかけたスケールの大きな活躍を期待したい。
胸をはれ
名前の通り
無法者
90年代に鹿鳴館でよく対バンしていたUnitedも現役で活動しているし「ガレージ・メタル」の再来に祝杯を挙げよう!