A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

藤原清登+灰野敬二@調布市 せんがわ劇場 2013.7.20(sat)

2013年07月22日 00時17分01秒 | 灰野敬二さんのこと

(撮影・掲載については主催者の許可を得ています。以下同)

崖っぷちSESSIONの翌日、灰野敬二は『JAZZ ART せんがわ2013』に出演。今年で6回目になる巻上公一プロデュースの音楽フェスティバル。"JAZZ"と銘打っているが、巻上の弁によれば「ひと言で判られないフェスティバルを目指した。簡単じゃない、音楽も楽しくないもの。よく音を楽しむのが音楽だと言われるが、冗談じゃない。言葉はあとから作られたのであって、音が先にあった。だからなるべくたいへんな音楽をやっている」とのこと。ラインナップを見れば一目瞭然だが、いわゆる真っ当な「ジャズ」はひとつもない。かといってロックでも前衛音楽でもドドンパでもない。言葉やジャンルで言い表せないややこしい音楽と出会える世界的にもユニーク極まりないフェスである。

他では有り得ない出会いのひとつがこの藤原清登灰野敬二のデュオである。藤原は70年代半ばからホレス・シルヴァー、クリフォード・ジョーダン、アーチー・シェップなど大物ジャズマンと共演し「モダンベースの王者」と呼ばれる筋金入りのベテラン・ベーシスト。灰野がウッドベース奏者と共演するのは、故・吉沢元治以来だと思う。前述した巻上の口上は、このデュオの前説MCのものだが、楽しくない/たいへんな音楽とは、まさにふたりの共演に当てはまる。

 

前日のライヴの終演後に灰野が「明日はヴォイスだけ」と言っていた通り、ギターは用意してあった弾くことはなく、ウォーターフォン、金属棒、鉄琴、タンバリン等のパーカッションと声のパフォーマンス。藤原の経歴を見る限りジャズの王道という印象だが、ここでの演奏は限りない柔軟性と深い洞察力に満ちた自由度の高いもので、予想不可能な灰野のパフォーマンスに真っ向から対峙する心の炎がメラメラと燃えるのが伝わってきた。アルコ、ピッチカート、スラップを駆使する奏法は極めてオーソドックスだが、魂の籠った音の気配は単なるベース音ではなく、暗号となって灰野の魂と対話する。



灰野の言葉のひとつひとつが藤原の音霊に吹き上げられてホールの四方八方へと飛翔してゆく。その反響が木霊のように聴き手の体内に感情のさざ波を起こす。静謐なステージから発せられたふたりの"気配"は、頭で判ろうとしたら確かに簡単ではないが、心を開けばあっさりと落ち着き場所を見つける。言葉より先にあった音と、音より先にあった言葉の出会い、さらに恐らく大半が灰野敬二初見であろう観客との聴覚と視覚による会話、それがこのデュオのもうひとつの奇蹟に違いない。



SOUND(音)
WORD(言)
どちらも
二文字目がO

JAZZ ART せんがわ2013のレポートは後日掲載予定です。




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