A Challenge To Fate

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百鬼夜行の回想録~80'sインディーズ特集 第12回:ポストパンクは郵便で届く訳ではない 

2013年07月26日 01時06分28秒 | 素晴らしき変態音楽


1978年セックス・ピストルズ脱退時にジョニー・ロットン(ジョン・ライドン)が放った言葉が「Rock Is Dead(ロックは死んだ)」。パンクを体現する男によるロック死亡宣告。それは、旧態依然としたロックを否定することで生まれたパンクというムーヴメントを端的に象徴するエピソードだが、そのパンクを殺したのは先ほどFREEDOMMUNE ZERO 2013で来日したペニー・リンボー率いるハードコア・バンド、CRASSだった。1978年に発表したシングル「Punk Is Dead(パンクは死んだ)」で、商業化したロックを否定したパンクもまたムーヴメント化/メジャー化することで方向性を見失った、と批判し、自らのレーベルを立ち上げ、アンチコマーシャリズム&D.I.Y.精神を貫いた。



ロック&パンク死亡宣告後に生まれたのがニューウェイヴとハードコアとポストパンクだった。ニューウェイヴはシンセやテクノビートを活かした新たな商業音楽、ハードコアはオリジナル・パンク精神を発展させたエクストリーム・ミュージック。ポストパンクは「パンク後」の意味であり、特定のサウンドをさすものではない。旧態依然としたロックの否定を出発点としたロンドンパンクの流れをそのまま受け継いでいるためローファイなサウンドを重視しているものの、レゲエ、ファンク、フリー・ジャズ、民族音楽を取り入れるなど音楽的挑戦には貪欲なバンドが多い。一般的には硬質なビートを核にした闘う姿勢がポストパンクのイメージだろう。

●グンジョーガクレヨン


1978年にパンクの影響を受けた東京ロッカーズや関西NO WAVEが勃興した日本では、初期段階から所謂パンクっぽい3コードR&Rよりも、プログレやサイケデリックやアヴァンギャルドなど前時代ロックの要素が濃く、サウンドの感触は逆にポストパンクに通じるバンドが多かった。それを象徴したのがPASS Recordsだった。東京ロッカーズの中心的存在のフリクションと関西NO WAVEの歌姫PHEWが坂本龍一のプロデュースにより無機的でクールなサウンドを提示したのに加え、突然段ボールやグンジョーガクレヨンは存在としてもパンクとは異質な突然変異だった。特にグンジョーガクレヨンの切れ味鋭いサウンドは、日本のポストパンクの象徴と言える。PASSからのデビュー12インチ『GUNJOGACRAYON』はジャケットからして非ロック・非パンクな圧倒的個性を放つ名作。園田游の身体パフォーマンスや、新感覚ギタリスト組原正の奇矯なプレイはサウンドだけでは捉え切れない。出来れば全盛期のライヴ音源だけでも発掘が望まれる。




●絶対零度


ディスクユニオンのSUPER FUJI DISCSから、1982年にEPを1枚リリースしただけの知る人ぞ知る存在のポストパンク・バンド、絶対零度の未発表音源CD2枚組が2セット発売された。アンビエント音楽家中川一郎(b,g)、篠田昌已の東京チンドン、風の旅団、ソウルフラワーユニオン、シカラムータで知られる大熊ワタル(key)など現役で活動するメンバーがいるから実現した発掘音源集である。パンク/ニューウェイヴ期だけではなく、GS、ニューロック期に於いても日本にはロックバンドが多数存在したが、その多くはライヴ活動のみで録音作品を発表することなく忘れられてしまった。音源を発表したか否かということは大きな運命の分かれ目で、後世再評価・音源発掘されるのは、カセットでもソノシートでもカセットでも何かリリースしていることが重要。絶対零度が発掘されたのもEPをリリースしたからだろう。




同様の存在に、連続射殺魔とザ・ラビッツがいる。

●連続射殺魔


和田哲郎(vo,g)、川辺徳行(b)、渡辺正巳(ds)などによる連続射殺魔は数枚のEP,12inchをリリース。基本的には和田のジミヘン・スタイルのギターによるヘヴィサイケだが、ニューウェイヴ時代には逆に新鮮だった。じゃがたらとの交流も深かった。和田は琴桃川澟として21世紀も活動しており、その縁で2002年にベスト盤とライヴ盤がCDで発売された。




●ザ・ラビッツ


ザ・ラビッツは遠藤ミチロウの盟友、宮沢正一が率いたサイケパンク・バンド。宮沢はミチロウのレーベルからソノシート「キリストは馬小屋で生まれた」(1981)でデビュー、LP『人中間』(1982)はダークな歌と改造ノイズギターで灰野敬二『わたしだけ?』と並ぶ暗黒サイケの傑作と評された。内省的なソロ作品に比べザ・ラビッツはサイケなエナジーを発散するバンドサウンドを展開。当時は遠藤ミチロウ編集のミニコミ「ING,O!」の付録でソノシートがリリースされただけだが、2001年にライヴ盤2作とコンピ盤がCDリリースされた。2011年末には遠藤ミチロウ、割礼、インキャパシタンツ等が参加したトリビュート盤がリリースされた。




●コミューヌ


「Reality」というカセットを所有しているが正体不明だったバンドの素性が少し判明した。アーント・サリーの丸山孝(ds)と中岡義雄(b)に山本ヒロユキ(vo,g)を加え、大阪で結成されたトリオで、7”シングル「Will/I Can't Believe」(1979)とカセット『Reality』(1981)の2作をリリース。聴き様によってはアーント・サリーのクールなビートに通じるリズムセクションを感じ取れる。しかし特徴は山本のメッセージ色強い歌詞と吐き捨てるヴォーカル。こちらも音源発掘を期待したい。




ポストパンクと
ポストロックは
宛先違い

グンジョーガクレヨンの組原正は現在千野秀一と共にドイツ・ツアー中。

コメント (4)
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