A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

【私の地下ジャズ愛好癖】ブロッツマン/エドワーズ/ノーブル/アダシェヴィッツ『live at Cafe OTO』

2016年07月18日 03時29分56秒 | 素晴らしき変態音楽


Bo Ningen/MainlinerのTaigen Kawabeは執筆した沖至『しらさぎ』の再発盤ライナーノーツの中でロンドンのフリージャズ/実験音楽の状況について書いている。

(英国の)フリーJazzも筆者が渡英する10年前まではJazzと同じく、アンダーグラウンドとしてロンドン各地に点在し雲隠れしていた印象である。しかし東ロンドンのDalstonという若者やアーティストに人気のお洒落エリアに2008年に出来た"Cafe Oto"という名のVenueの存在によりロンドンのフリージャズシーンは大きく変貌する。数年経たないうちに各地に点在していたロンドンの実験音楽家、イベントが集結しだし文字通り実験音楽のセントラルとなった。

同じことはCafe Otoに何度も出演する大友良英も自らのブログで語っている。日本から沖至や豊住芳三郎などジャズミュージシャン、灰野敬二やメルツバウ、非常階段などの前衛ロックが数多く出演するCafe OTOが現在ロンドンの先鋭的音楽シーンの中心地として重要な役割を果たしていることは周知の事実である。

書きたいのはcafe OTOのこと。ここでの数日間は本当に楽しかったし、どのコンサートも本当に素晴らしかったけど、単に僕等の演奏がよかったって話ではなく、もうじきオープン1年を迎えるこのカフェの存在がロンドンのアンダーグラウンドな音楽シーンを静かに変えつつある、というのをひしひしと感じで、それが本当に面白かったのだ。いつも書くことだけど、なにかが生れる瞬間に立ち会えるってのは本当に幸せなことだ。
ーーーー大友良英のJAMJAM日記(2009.3.15)


(Cafe OTOの)功績は、ロンドンのフリーJazzミュージシャンを一点に集中させ、シーンを活性化させただけではない。その土地柄もあり、世間、特に流行もの好きのロンドンの若者に向けて、フリーJazzの認知度を大きな高めた点にあると思う。「何をやっているのか分からない難しい音楽」と、無視又は耳にも留まらなかった音楽が、真剣に向き合ってもらえるようになったのは素晴らしい事である。
ーーーーTaigen Kawabe/沖至『しらさぎ』ライナーノーツ


そんなCafe OTOがOTOROKUというレコードレーベルを主宰し「Live at Cafe OTO」音源をリリースしていることは先日紹介した。2012年にスタートしたレーベルの記念すべき第1弾がドイツ出身のサックスのヘラクレス、ペーター・ブロッツマンのアルバムだった。
【レーベル紹介】<OTOROKU Digital Downloads>ロンドンCafe OTOの前衛ライヴ音源の宝庫。

●ブロッツマン/エドワーズ/ノーブル『ザ・ワース・ザ・ベター』
BROETZMANN / EDWARDS / NOBLE - THE WORSE THE BETTER (ROKU001 / 2012)


Peter Broetzmann / reeds
John Edwards / double bass
Steve Noble / drums

Recorded on Saturday 30th January 2010 at Cafe OTO by Shane Browne
Mixed by John Edwards
Mastered by Andres [LUPO] Lupich at Dubplates & Mastering, Berlin.

2010年1月、ペーター・ブロッツマンの初めてのCafe OTOでのレジデンシー公演でのスティーヴ・ノーブルとジョン・エドワーズとの初共演のライヴ音源。ノーブルとエドワーズは80年代から英国即興シーンで活動するミュージシャンで、エヴァン・パーカー、デレク・ベイリー、ロル・コクスヒルなどと共演。リズムセクションとしてチームを組み、Alex WardとのN.E.W.、Alexander HawkinsとのDECOYで活躍する。ヨーロッパとイギリスのミュージシャンの初の顔合わせが実現したのもCafe OTOという「場」の磁力であろう。

第一音から全力疾走のハードコアジャズ。ブロッツマンの豪快なブローが複雑かつ大胆なビートに乗ってドライヴする快感は、数多いブロッツマンのレコーディング作品の中でも群を抜いた爽快さを持っている。三者の絡み合いがヴィヴィッドに刻まれたレコーディングの秀逸さは、アートワークの芸術性、パッケージの頑強さと合わせ、Cafe OTOスタッフの音楽に体する愛情の賜物である。

Peter Brötzmann, John Edwards, Steve Noble @ Cafe Oto 28.3.12



●ブロッツマン/アダシェヴィッツ/エドワーズ/ノーブル『メンタル・シェイク』
BROETZMANN / ADASIEWICZ / EDWARDS / NOBLE / Edwards / Noble – MENTAL SHAKE (ROKU010 2014)


Peter Broetzmann / alto and tenor sax, Bflat clarinet, Taragato
Jason Adasiewicz / vibraphone
John Edwards / double bass
Steve Noble / drums

Recorded live at Cafe OTO on 12 August 2013 by James Dunn.
Mixed by Rupert Clervaux at Grays Inn Road.
Mastered by Andreas [LUPO] Lubich at Calyx.
Design by Brö/Untiet. Drawing by Brö.
Photocollage (on sleeve reverse) by Dawid Laskowski

初共演から3年後、シカゴ出身のヴィブラフォン奏者ジェイソン・アダシェヴィッツを加えたカルテット編成でのライヴアルバム。2010年の初共演以降、ブロッツマンのレギュラーグループとなり、ヨーロッパ各地をツアーしてきたエドワーズ&ノーブルとのトリオのコンビネーションの素晴らしさはもちろん、ヴァイブが入ることにより、空間の広がりが加味され、宇宙遊泳するような浮遊感を持つハードコアジャズの爆走が、サウンドだけでなくメンタル(精神)をシェイクさせるトリッピーな世界を描き出している。

Cafe OTOで誕生した奇跡が、3年の間に熟成され、新たな種子を交えた化学反応により、更に高次元のミラクルへと進化した。たったひとつの「場」のパワーが、数多くのメンタルの交わりにより拡大されて行く、人類のエヴォルーションセオリー(進化論)の現れといえるだろう。

Brötzmann/Adasiewicz/Edwards/Noble - Sound Forest festival, Riga 09/10/2015


カフェオトの
アナログ盤が
重い理由(わけ)

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする