灰野敬二 Keiji Haino 2017年最終公演
不失者 Fushitsusha
open 18:00 / start 19:00
adv.¥4320/ door.¥4860
毎年恒例の灰野敬二の年末公演、2017年は不失者ワンマン。2016年に続いて2年連続不失者で年忘れするとは格別だ。この1年間に中国とアメリカ・ツアーを敢行し、国内でも3回公演(うち1回は青葉市子と対バン)した不失者こそ灰野の分身であり核であることは灰野自身が30年前から公言している。2017年はリリース数ではここ数年で最も多い年だった。2017年のリリース数はコンピレーション/Download含めて11作。16年6作、15年6作、14年7作だから、2013年の12作に次ぐ作品数である(An Unofficial Keiji Haino Homepage調べ)。特に10〜12月にアナログ盤のリリースが5作重なった。
1. Keiji Haino + John Butcher - Light Never Bright Enough (December, 2017)
2. Keiji Haino + Konstrukt - A Philosophy Warping, Little by Little That Way Lies a Quagmire (December 1, 2017)
3. Keiji Haino, Jim O'Rourke & Oren Ambarchi - This Dazzling, Genuine "Difference" Now Where Shall It Go? (November 17, 2017)
4. Various Artists, including Keiji Haino, Fushitsusha - Tokyo Flashback 1 (October 20, 2017 )
5. Nazoranai - Beginning To Fall In Line Before Me, So Decorously, The Nature Of All That Must Be Transformed (October 6, 2017)
そのうち過去のコンピレーションの再発(4)を除く4作はすべて海外のミュージシャンとのコラボレーションである。それだけ灰野が海外で支持されている証であるが、いずれも2016年以前にレコーディングされたものであり、現在の(というより常に)灰野の最大の関心は不失者に注がれていることは間違いない。
⇒不失者@高円寺ShowBoat 2016.12.30(fri)
開演前の物悲しいヴァイオリンのSE、15分過ぎて暗転した客席の向こうの、薄暗い照明で表情も見えないステージで蠢く三つの肉体が発する音が、空気を溶かして深いリバーヴで液状の感触を与え、聴覚と無化しようとするかのように放射するマキシマムな音響システム。次第に激しく身体を捻り舞踏のように舞う灰野の銀髪に目を奪われながら、脳裏に16年前に同じ会場で初めて観た灰野と小沢靖の二人組の不失者の感触がフラッシュバックした。
2001年秋、同僚との飲み会の約束まで2時間ほど隙になり、持て余した時間を潰そうと訪れた高円寺の地下ライヴハウスShowBoatのドアを開けるといきなり耳を圧する轟音が襲ってきた。ノイズやパンクやヘヴィロックで慣れていた爆音とは次元の違う大音量は、しかし決して不快ではなく、音に包まれる快感に身を委ねるうちに時間感覚を失っていった。ステージ上の二人は完全の演奏に没頭し音の高まりに任せて身を捩ったり屈めたり跳躍したりして、身体を何処かへぶつけたりステージ外に飛出したりすることをまったく恐れてはいないようだった。
ギターとベースだけなのに、激しく突き上げるビートの鼓動を感じ、心と身の不整脈の動悸が次第に振幅を広げる。それと共に意識と無意識の境界が失われ、ただひたすら視覚と聴覚を研ぎ澄ましてステージ上の動きと音を体内に取り込むと同時に、何を聴き何を見て何を感じたか記憶しようと知覚を働かせていた。いっそのこと人間の形を捨てて魂という暗号になってしまいたいと祈るような4時間近くが過ぎて、真夜中近くに音は止まっていた。当然ながら飲み会のことなど完全に頭から消え去っていた。
結局何を聴き何を見て何を感じたかは朧げにしか思い出せず、ただ茫洋とした意識の中に無数の「?」が漂うのみ。聴覚は麻痺して10分の一程度の機能しか果たさないが、その分視覚は覚醒したまま暗い夜道を迷わず進み続けたのは確かだが、肝心の知覚は果たしてどんな状態だったのか、今となっては思い出せない。ひとつだけ間違いないのは「?」の秘密を知るために灰野のライヴに足を運ばなければならないと決意のような気持ちが芽生えたことである。
それから月日が流れて同じSHowBoatで観る不失者。灰野敬二は新たなエフェクターで予想もつかない奇怪な音を出し、はっきり聴こえる声で明快な言葉を聴かせ、Ryosuke Kiyasuは最初から最後までロングヘアーを振り乱してドラムを奏で、ナスノミツルは太い低音弦を思いのママに操ってトリッキーなフレーズを繰り出す。16年前に比べてレパートリーもメンバーも変わり、観客の姿も年代も変わり、灰野も同じく歳を取ったが、あの頃と同じように視覚と聴覚と知覚を研ぎ澄ませて暗闇の中に座っている自分がいる。そして23時過ぎに演奏が終わってみると、やはり無数の「?」が漂っていることに気付くのである。
不失者は
失われない
?(クエスチョン)
また観なければならない、否、まだまだ観たいという気持ちは変わらない。
<灰野敬二Live Schedule>
2018年
1月12日(金) 東京・青山 月見ル君想フ
【月見ル君想フpresents灰野敬二×BO NINGEN】
op18:30/st19:00
前売¥3500/当日¥4000(ドリンク代別)
【出演】
・灰野敬二
・BO NINGEN
1月26日(金) 東京・東高円寺U.F.O.CLUB
【human filter】
OPEN 19:00 /START 19:30
ADV.¥2,500(+1D)/DOOR.3,000¥(+1D)
LIVE
■MERZBOW
■灰野敬二
MODULAR SYNTHESIZAR DJ
■LEF!!! CREW!!!
1月28日(日) 東京・秋葉原Club Goodman
GIGADISCO!
Open 12:30 / Start 13:00
Adv. ¥3,000 / Day ¥3,300 (+1d)
出演
灰野敬二 / 七尾旅人 / テンテンコ / 美川俊治 / 吉田達也 / 天鼓 / 河端一 / Li2MIHOLiC / 妖精マリチェル / isshee / 齋藤久師 / 花園ディスタンス / dj.sniff / BONSTAR / HATAKEN / 遊神 /ニーハオ! / HIKARI / galcid+Machina / 沼田順 / DJ.MEMAI / 飯田華子 / ドラびでお