A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

【Disc Review】Tokyo Flashback - P.S.F. Psychedelic Sampler

2018年01月25日 02時33分28秒 | 灰野敬二さんのこと


Tokyo Flashback - P.S.F. Psychedelic Sampler
2LP : Black Editions ‎– BE-001/012

A1. Marble Sheep & The Run-Down Sun's Children "22 February.1991"
A2. High-Rise "Mainliner"
B1. Ghost "Tama Yura"
B2. White Heaven "Blind Promise" (Alternate Take)
C1. Fushitsusha "Kotchi, Omae" (Here - You)
C2. Verzerk "Tsumi To Warai" (Crime and Laughter)
D1. Kousokuya "Akatsuki No Owari" (End of Dawn)
D2. Keiji Haino "Tattaima" (Right Now)

東京・地下・ 1991

モダーンミュージックのオーナー生悦住英夫が1984年に立ち上げたP.S,F,レコードのコンピレーション・シリーズ『Tokyo Flashback』の1991年の第一弾がアナログ盤二枚組でリイシューされた。オリジナルCDはプラケースに16ページ・ブックレットが入っただけの無味乾燥なパッケージだったが、アナログ盤はブック型ケース入厚紙見開きジャケットに、カラーLP袋と解説カード2枚が挿入された豪華な作りになっており、レコードヲタクにとっては灰野敬二『わたしだけ?』に続くBlack Editionsのこだわりが嬉しい。

筆者が最初に買ったのは92年の『Tokyo Flashback 2』だったと記憶しているが、ライヴ一発録音中心の音質は正直言って聴き辛く、余り熱心に聴かなかった覚えがある。第一弾のサウンド的にはそれ以上に歪み潰れた音質は、レコーディング費用を最小限に抑えるマイナー・レーベルの宿命かもしれないが、PSFの場合はそれよりもアルバム・タイトルのヒントとなった60年代ガレージパンクやサイケの盤起こしの再発盤に結果的に近づいたといえる。実際のところ『Pebbles』など初期コンピ盤の歪んだプチノイズ入の音色は、オブスキュアなB級ガレージ/サイケの魅力を倍増させる効果があった。後にマスターテープが発見されリイシューされたCDの余りにクリアな音質に、最初に聴いたときの魔法が消え失せてしまった経験も多々あった。

今回の再発に当たりアナログ用リマスタリング/カッティングされたレコード盤に刻まれた音は、煤を払ったようにヴィヴィッドになったが、元々の歪んだ音質は当然そのまま残っている。アナログ特有の太い低音が音の厚みを増加させ、曲によっては音の壁や塊のような迫力で迫ってくる。当時1991年に25年前の60年代サイケ音源の再発を聴いていたことを考えれば、2018年から25年以上前の91年の音源は、まったく同じ意味合いのオブスキュア音源と言える。以前も書いたが「Flashback=回想・回顧」というタイトルは、25年以上経った今になって初めて真の意味を露にしたのである。
【Disc Review】極私的東京地下音楽シーン回想録〜『V.A. / Tokyo Flashback P.S.F. 〜Psychedelic Speed Freaks〜』

マァブルシィプ&ザ・ランダウンサンズ・チルドレン、High-Rise、White Heavenのそれぞれジャーマン・ロック、ヘヴィサイケ、ガレージパンクにインスパイアされた大音量のハードロックは90年代地下ロックの大きな底流を形作った。その影響を諸に受けたのがコンピ中の最年少ユニットVerzerkである。ブリティッシュ・ロックの要素を持ったヘヴィなサウンドは、ベテラン揃いのラインナップの中で一際新鮮な光を放つ。マァブルシィプのメンバーでもあるMasaki Batoh率いるGhostのアシッド・フォークは当時仕組まれたワールド・ミュージックとはまったく異なる次元で民俗音楽をロック文脈に昇華していた。そして東京の地下音楽の源流吉祥寺マイナーで生まれた二つのバンド=光束夜と不失者の孤立性こそは、すべてのアンダーグラウンド生活者のサウンドトラックに相応しい。光束夜は金子寿徳の死により二度とこの世で聴くことは出来なくなってしまったが、灰野敬二の不失者は現在も苔むすことなく転がり続けている。最後を飾る灰野敬二のヴォイスのみのトラックは、地上と地下/生と死/光と闇/あっちとこっち云々を問うことなく、たった今ここに存在する音の気配に過ぎない。「過ぎない」ことの難しさがわかるかわかろうとしないかは、あなたの心の蕩け方次第だ。

積み上げた
カウンター越しに
聴こえる音



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