昨日に続き、Aで始まるアメリカのB級サイケ・レコードを順番に聴いた。自分のTop5に入るAutosalvageがやはり素晴らしかったが、Asylum Choirの良さに気づいたことと、長らく謎の存在だったAmanda TreesとAndy Zwerlingの経歴を突き止めたことが今回の収穫。B級サイケの道は奥が深いだけに1日聴いていると頭が飛びそうになる。ゆっくり寝て明日のリスニングに備えるとしよう。
●Ars Nova / Ars Nova
1968 / US: Elektra – EKS-74020 / 1985.11.28 新宿Disk Union ¥100
1967年にNYマネス音楽大学出身のWyatt Day (g, key, vo)とJon Pierson (tb, vo)を中心に結成された6人組がエレクトラからリリースした1stアルバム。メンバーはDay, Piersonの他にMaury Baker (org, perc), Giovanni Papalia (g), Bill Folwell (tp, b, v), Jonathan Raskin (b, g, vo)。トロンボーン、トランペットをフィーチャーし、中世・ルネサンス音楽のクラシックの要素を取り入れた音楽性は当時かなりプログレッシヴなスタイルだった。気品のあるソフトロック路線は、サイケの中でもトップクラスの高学歴なイメージがある。同傾向のバンドにThe New York Rock Ensembleがいる。B-1「Field of People」はイギリスのMoveが70年のアルバム『Shazam』でカヴァーした。
Ars Nova - Fields of People (1968)
●Ars Nova / Sunshine & Shadows
1969 / US: Atlantic – SD 8221 / 1986.2.21 吉祥寺TONY
68年にいったん解散し、DayとPierson以外のメンバーを一新して制作した2ndアルバム。新メンバーはSam Brown (g), Jimmy Owens (tp), Art Koenig (b), Warren Bernhardt (key), Joe Hunt (ds)。Brown、Owens、 Bernhardtはそれぞれジャズ・ミュージシャンとして実績がある。基本的に前作のクラシカル・ロック路線を継承しているが、ジャズ、ボサノバ、フォーク、バラード等幅広い要素を取り入れワールドポップ感覚に磨きがかかった。大半の曲を作曲しているWyatt Dayは才能があると思うが、解散後目立った活動がないのが残念。
Ars Nova - Sunshine & Shadows
●Aesop's Fables / In Due Time
1969 / US: Cadet Concept – LPS-323 / 1996.7.12 Los Angeles Aron's Records $7.98
「アリとキリギリス」で有名なイソップ寓話をバンド名にしたNYロングアイランド出身の8人組。66年から数枚のシングルをリリースしたあと69年に発表した1stアルバム。メンバーはRonny Alterville (b), Sonny Bottari (vo, perc), Robert DiMonda (fl, sax), Joe Fraticelli (sax), Frank Krepala (g), Louis Montaruli (tp, tb), John Scaduto (vo, ds), Barry Taylor (key)。ブルー・アイド・ソウル+ブラスロックと言えるが、所々サイケなギターやオルガン、ヴィヴィラフォンが聴けるA-1 In the Morning、B-3 Look Outがいい。しかし残念ながら曲の大半が凡庸でほとんど記憶に残らない。チープなイラストのジャケットが酷すぎて逆に愛おしい。72年にもう1枚アルバムが出ている。
Aesop's Fables- And when it's over (1969)
●Amanda Trees / Amanda
1972 / US: Poppy – PP-LA003-F / 1996.7.12 Los Angeles Aron's Records $2.98
アヘンの材料にもなるケシの花のレーベル面が飾られたPoppyレーベルは、それだけでサイケっぽいが、謎の女性シンガーソングライター、Amanda Treesの唯一のレコードは、サウンドを含めて幻想的な1枚。コケティッシュで天真爛漫なギター弾き語りが、深いリバーヴとフルートや鳴り物やエフェクトで彩られ、アシッドの香り漂う想像の花畑へ連れてってくれる。特にB-2 Rock Salt、B-3 Spiritの長尺ナンバーの呪術的な歌は、アシッドフォークという使い古された形容を吹き飛ばすオリジナリティ。現在もアンビエントなピアノと歌を作り続けている。https://www.amandatreesmusic.com/
Amanda Trees / Prehistoric Animals
●The Alan Franklin Explosion / The Blues Climax
1970 / UK reissue 1983 : Psycho Records – PSYCHO 18 / 1987.11.27 渋谷CSV ¥500
PsychoはフランスのEvaと並んで80年代前半に知られざるサイケのレア盤を再発して世界中にサイケブームを巻き起こしたレーベルである。明大前モダーンミュージックの故・生悦住英夫も「PsychoとEvaの再発は衝撃的だった」と語っている。フロリダ州タンパ生まれのAlan Franklin (vo)率いるExplosion=Chris Russel (g), Buzzy Meekins (b), Dave Dix (ds)のアルバムはマイナーレーベルHorne Recordsから70年にリリースされたレア盤。ローカル・サイケの典型と言えるローファイガレージロックだが、マリファナでハイになった狂騒的な明るさが突き抜ける。ラリッた挙句のロングセッション「Climax」で文字通り絶頂に至る。Psychoの中で人気が低いのは逸脱しきれていないからだろう。
The Alan Franklin Explosion - Say You Love Me At Last (1970)
●The Appletree Theatre / Playback
1968 / US: Verve Forecast – FTS-3042 / 1991.6.21 下北沢Flash Disc Ranch ¥1,480
JohnとTerenceのBoylan兄弟によるスタジオ・プロジェクト。ラリー・コリエルやエリック・ゲイルといったジャズギタリストを含む20人以上のミュージシャンが参加し、ペット・サウンズやサージェント・ペパーズの影響を受けたストーリー仕立ての組曲を聴かせる。ナレーション、コラージュ、サウンドエフェクトを交えた、美しいコーラスのソフトロック~サイケポップは完成度が高い。ジョン・レノンが手に入れた頃はかなり愛聴していたが、今聴くとなんだかまどろっこしく感じてしまったのは、作りこみ過ぎたせいだろうか。John Boylanはイーグルスやリンダ・ロンシュタットなどのプロデューサー、Terenceはシンガーソングライターとして活躍する。
Appletree Theatre - What A Way To Go
●Asylum Choir / Look Inside The Asylum Choir
1968 / UK: Mercury – 6338049 / 1995.11.12 London Camden Out on the Floor £10
Leon RussellとMarc Bennoのデュオユニットの1stアルバム。スタジオワークを駆使し、すべての楽器を二人で演奏して完成させたという。ビートルズ的なポップセンスあふれるサウンドは、カラフルなサイケ感と美しいメロディに溢れており、後にソロで大ヒットを飛ばす二人の才能を実感させる。トイレットペーパーが表紙のアメリカ盤の内ジャケを表紙にしたイギリス盤のカラフルさがサウンドにマッチしている。レオン・ラッセルはほとんど聴いたことはないが、このレコードは今後もっと聴くようにしたい。
Asylum Choir - Welcome To Hollywood
●Autosalvage / Autosalvage
1968 / US: RCA Victor – LSP-3940 / 1985.8.13 明大前モダーンミュージック ¥1,800
1966年夏にニューヨークで結成。メンバーはThomas Danaher (vo, g), Darius LaNoue Davenport (vo, oboe, p, ds, tb, g, b, krummhorn, recorder), Rick Turner (g, banjo, dulcimer), Skip Boone (b, p)。最初はThe Northern Lightsと名乗っていたが、フランク・ザッパの提案でAutosalvageに改名した。唯一のアルバムである本作は、捻くれたポップセンスとサイケなギターと適度なアヴァンギャルド性と洗練されたサウンド・プロダクションで時代性を全く感じさせない傑作であり、筆者のB級サイケTop5に入る。この1枚で解散後、BooneとDavenportは短命に終わったバンドBearで活動、その後セッション・ミュージシャンとしてTerence Boylan(上記Appletree Theatre参照)などのバックを務めた。2013年に再結成しSXSW 2013に出演したという。http://www.autosalvagemusic.com/
Autosalvage - Auto Salvage (1968)
●Andy Zwerling / Spiders In The Night
1971 / US: Kama Sutra – KSBS 2036 / Los Angeles Aron's Records $2.98
ニューヨーク州ロングアイランドの高校生で、ローリング・ストーン誌のライターをしていたAndy Zwerlingが、Flaming Grooviesのレビューを書いた縁でプロデューサーのRichard Robinsonと知り合い、Kama Sutraからリリースしたソロ・アルバム。全曲当時17歳だったZwerlingの作品。バック・ミュージシャンはLenny Kaye (g,b,org,p), Richard Robinson (g,b), Anne Marie Micklo (cho), Lisa Robinson (cho)。孤独を感じさせる内省的な歌は、ティーンエイジャーにしては老成している気がするが、この暗さも十代特有のメランコリーの発露である。パティ・スミス・グループのギタリストとなるレニー・ケイの初の共同プロデュース作品でもある。Andy Zwerlingは法律家の道を進むが、80年と2008年にアルバムをリリースしている。http://badcatrecords.com/BadCat/ZWERLINGandy.htm
Aのパートは
あと1回で
終わりそう