60年代日本のサイケデリック・アートの騎手、田名網敬一さんの新作個展が開催された。田名網さんの個展には数回行ったことがあるが毎回「色彩地獄」とでも呼ぶしかないカラフルな世界に幻惑され頭がクラクラした状態がフラッシュバックする。
今回はNANZUKA UNDERGROUNDの白金で「結び隔てる橋」、渋谷で「迷いの橋シリーズ」と2ヶ所での開催である。「結び隔てる橋」は巨大な立体オブジェ「渡れない反り橋」を核に、赤い太鼓橋と髑髏のキャラクターが登場する巨大な曼荼羅絵画が会場を取り囲む。ひとつひとつの絵をよく見ると数々の畸形やお化けの氾濫の中にアトムやポパイなど著名漫画のキャラクターが描かれている。「幼少の頃にみた、映画のワンシーンに出てくるさらし首と太鼓橋や、空襲の夜の死者と太鼓橋等、この奇異でドラマチックな取り合わせは、橋を隔てたこの世とは別の異界へと私を誘うのである」(田名網敬一/プレスリリースより)。ギャラリー全体が髑髏の頭蓋骨(田名網さんの脳内)の中に飲み込まれたような異界体験であった。
渋谷の「迷いの橋シリーズ」は14点のシルクスクリーン作品に囲まれ、再び脳内シナプスが活性化する。こちらも太鼓橋、髑髏、漫画のキャラクターが隙間なく描き込まれた田名網さんの強迫症的な世界が広がる。まさに魂が迷子になるような空間だ。
今年76歳になるこの巨匠の個展は朝日新聞でも「サイケは滅びず」というタイトルで紹介された。白金の展示は終わってしまったが、サイケに興味ある人はNANZUKA UNDERGROUND渋谷へ足を運んでみては?
日本の
サイケの歴史
ここにあり
草間彌生さんと並ぶサイケデリック・アートの重鎮である。