A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

坂田明&ちかもらち+ゲスト@渋谷WWW 2011.11.9(wed)

2011年11月11日 01時58分16秒 | 素晴らしき変態音楽

10月21日新宿ピットインから始まった坂田明&ちかもらち~ちかもらち 空を飛ぶ! 東京ーモスクワーヨーロッパー東京~の最終公演。ピットイン2daysの後モスクワ~ポーランド~ロンドン~ベルギー(坂田さんだけそのあとオーストリアでペーター・ブロッツマン70歳記念フェスティバルに参加)とツアーしてきたトリオの凱旋公演は山下洋輔氏(p)、ジム・オルーク氏(g)、八木美知依さん(箏)と豪華盟友陣をゲストに迎えてまさにスペシャルな一夜となった。

私はチケット整理番号1番でど真ん中最前列の座席を確保。先日クラブ・チッタで開催された“イタリアン・ロック・フェスティバル”は年配の客が多く、中原昌也氏の弁によれば「コンサートというより法事」(笑)だったらしいが、この日渋谷WWWに集まった観客は思いのほか若く30代中心で意外に女性客が目につく。明らかにピットインの客層と違う。ジム・オルーク氏目当ての客もいただろうが、60代半ばを過ぎたアーティストのライヴにこれだけ若いお客さんが来ることが嬉しい。

坂田さんの演奏をある人は「オールド・スクールだけど今の音」と表現していたがなるほどと納得。でもジャズのニュー・スクールって何なんだ、という疑問もある。ターンテーブルやエレクトロニクスやクラブ・ビートを取り入れれば新しいのか?ONJQやDCPRGは新しいのか?いまいち判然としないが、坂田さんが40年間追及しているのはまさに人間の息遣いを持った生身のジャズ。その意味ではオールド・スクール万歳!である。海外からのニュースによれば坂田さん、ダーリン・グレイ(b)、クリス・コルサーノ(ds)の演奏は各地で信じられないほどの大喝采で迎えられ、このトリオの世界的人気を証明したとのこと。

コンサートはまずトリオの演奏から始まった。天井が高くステージが広いWWWで観る演奏はピットインとはスケール感が違う。照明も見事でこの祭りを盛り上げる。その後、坂田+ダーリン+八木→山下+ダーリン+八木→山下+クリス→坂田+山下+ジム+ダーリン+クリス、と出演者が入れ替わり立ち替わり出演して進行する。坂田さんのMCによるとこの構成はジム・オルーク氏の「企て」だという。これがとても楽しい。30年近く前に観たミシャ・メンゲルベルク&ICPオーケストラの来日コンサートを思い出した。10数名からなる彼らも様々な組み合わせで演奏し観客を楽しませてくれた。坂田さんの「平家物語」の激唱、洋輔さんの久々のドシャメシャ演奏、坂田さんとの共演時に見せるジムのブチ切れたギター、八木さんの箏は演奏の重要なアクセント。第一部は70分。あまりの素晴らしさにしばらく立ち上がれなかった。

第2部はジム+ダーリン+クリス+八木→ジム+ダーリン+クリス→坂田+山下+八木+ダーリン→全員、という順番。ジムとちかもらちの二人が組むとバンド名は「恐山」になる。のっけからジムのハーモニカで鳴らす反則ギターが炸裂。ダーリン&クリスの柔軟なリズム隊はカメレオンのように多彩に表情を変える。圧巻は全員のセッション。ジャズらしいソロまわしがあるのだが、その漲るパワーは演奏していない人からも発せられるようだ。最後は全員が最高潮のヴォリュームで驚くべきスケールで観る者を包み込む。アンコールも含め80分の演奏。

とにかく一片の隙もなく神々しい至福に満ちたライヴだった。フリージャズだけじゃなくあらゆる音楽を包括した演奏に「音楽を好きでいて本当に良かった」と感慨が湧きあがった。坂田さんも「こういうことがあるからミュージシャンもそんなに悪いもんじゃないな」と話していたし、演奏者にとってもいいライヴだったのだろう。

物販でピットインでは買わなかったちかもらちのLPを購入。例によってメンバーにサインを貰った。私がハーレー・ダヴィッドソンのパーカーを着ていたらダーリンが「それはどこで手に入れたの?僕の息子がハーレーの大ファンでお土産に買っていきたいんだ」と言ったので次回来日時にはプレゼントすることを約束。

会場には七尾旅人氏(お父様がフリージャズのファンとのこと。「平家物語」CDにサインを貰っていた)、狂うクルーの村田学氏が来ていた。また元Studio Voice編集長で現在フリーの編集者/ライター/湯浅湾のベーシストとして活躍する松村氏、elle-kingの野田編集長、Jazz Japanの三村氏など、昔お世話になった方々に久々に会えて楽しかった。



燃え上がる
渋谷の街を
後にして

この最高の祝祭に参加できなかった人に吉報!この日の演奏をキング・レコードがライヴ録音し来年3月にリリース予定とのこと。さすがAKB-48やアニメで儲けているキングさん、レコード会社の鑑!
コメント
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