グローバルネイチャークラブのガイド日記

グローバルネイチャークラブ(旧グローバルスポーツクラブ)のガイド仲間が観察した伊豆大島の自然の情報を中心にお届けします。

火山勉強会の報告その2

2017年03月10日 | 火山・ジオパーク
先週ブレイクを挟んだので、なんと3週にわたってお送りしてます、2月21日に行われた火山勉強会の報告。
火山勉強会の報告その1


その1でもちょっとにおわせましたが、今回のは、書くのがためらわれるくらい、非常にセンセーショナルと感じる内容でした。
次の噴火は、大噴火になる可能性が十分にある、ということがわかったからです!

こういうと脅かしているようですが、きちんと知ることが、何よりも自分や家族や大切なものを守ることにつながる。
だから知ることは大事です。


↓1986年。これでも中規模噴火。

出典:大島観光協会


今回は、気象研究所 火山研究部 鬼澤さんという方が、
「伊豆大島の火山活動と地殻変動」というテーマでお話してくださった部分の報告です。


かなり昔から大島を観測している方。地殻変動が主な研究テーマだそうです。


そもそも地殻変動とはなんでしょう?
goo国語辞典では、地球内部のエネルギーによって地殻が変形・変位を起こす運動、とあります。
では地殻、とは? 地球を卵に例えると殻の部分。

つまり私たちの目に見える地表面が、マグマなどの地球内部のエネルギーによって変形したりするさまを観測している、ということですね。

火山活動とは何でしょうか?と考えると、図のように様々ありますが、
やはり主役はマグマであり、マグマがどれだけどこから噴出するのか?が一番知りたいことではないでしょうか。



そもそも地下は見えません。なのでわからないことだらけです。
そんな中で、地下のどこにどれだけのマグマが溜まっているのか?についての情報を与えてくれるところに、
地殻変動観測の意義がある、と話してくださいました。



観測の方法を教えてくれました。
主に傾斜計とGPS(GNSS)という形で行なうそうです。

キラウエア山の例。

カルデラのあたりに傾斜計を置いておくと、図を見てわかるように、だんだん傾斜が上がってきて、ある時ガクンと落ちる。
この時矢印のライン上で噴火が起きているそうです。

もう一つは桜島の例。
山頂付近にGPSをいっぱい置いておくと、山体が膨張・収縮すれば位置が変わるので観測されます。
このデータを説明するのに、地下どのくらいのところにどれだけの量のマグマが入るとこの結果が得られるか、ということが導き出せるそうです。


では30年前の伊豆大島の噴火の事例を見てみましょう。

◎山頂噴火
実は山頂噴火においては地殻変動の前兆はなく、役に立たなかったそうです。
三原山の中央火孔から噴出した溶岩は、まず吹き出し口の穴を埋め立てて溶岩湖ができます。
しかし活動が収まると、地下にまた帰っていきます。
(ちなみに地表に残された溶岩の量だけが、噴出量として数えられる)
こうして噴火の度に上がったり下がったりしているので、中央火孔の通路がしっかりしたものであることが、理由と考えられます。



しかし噴火開始に時を同じくして地殻変動がはじまり、上記の観測方法により、しぼんだ場所が分かりました。
そして山頂から噴出した量と同じくらいの量に値する陥没が起こったこともわかりました。

ということは、その陥没したところの地下がマグマ溜まり、ということでしょうか?!
それが分かればすごいことです。明確には言及されていなかったので、今度の機会に聞いてみます。


◎割れ目噴火
6日後に起きた割れ目噴火では全く様相が違い、傾斜計が降り切れてしまうほどだったそうです。
この時に地震活動も帯状に活発になり、水準測量も帯状に沈降しました。(図上)
ということは、この場所の地下に板状にマグマが入った(岩脈)ということがいえる、とのことです。(図下)
(下がった=マグマが出たではなく入った なのはなぜなのか、私にはわからないのですが)



そして、この数字がどれだけ確かかはわからないそうですが、
この時に地下に入ったマグマの量、86年噴火したマグマの量の10倍入った、とのことです!
噴火したのは一部で、地下にはもっと貫入していたと思われます。

地震波速度をマッピングしたものでも確認してみると、
同じ場所に、地震波が伝わるのが早い帯が見えます。これは、固い岩盤があると早く伝わる=ここに過去に何回も入った岩脈がある。
ということで、図が一致しました!



ということで、次の噴火はここから大量にマグマを噴出する!
、、、という安直な予知ができるのかはわかりませんが、
今どれだけマグマを地下に蓄積しているのかはわかっているそうです。


86年の噴火から10年ですでに前回の噴出量は超えたマグマが溜まってしまいました。

マグマの量10の8乗トン=100,000,000トン噴出して大規模噴火。
約7×10の6乗トン=7,000,000トン/年 蓄積し続けているとのこと。
単純に計算したら×30年=210,000,000トン。
大規模噴火を起こすのに充分なマグマの量が、すでに溜まっているといえるそうです。


大規模噴火とは、地層大切断面のように、中央火孔から遠いところに地層を形成するほどの噴火。
その中には、溶岩流も噴石も火山灰も積み重なっています。
しかも、「いつ」噴火という予測が一番難しいそうです。
これは色々なことを想定しておく必要がありそうですね。

住民としても、ガイドとしても、身が引き締まる思いです。
(あい)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする