週末2日間、森林インストラクター東京会のメンバーが、島を歩きに来てくれました。
今回の講師役はFIT会長で樹木医&環境カウンセラーでもある石井誠治氏。
http://www.env.go.jp/policy/counsel/kirakira/05-1.html
私はガイド役として参加しました。
昨日の三原山は霧だったので、火口はさっさと諦めて“噴火による植生の移り変わりが見える道”へ。
道中ヒサカキの花が満開でした。
「あれはオスの木ですか?メスの木ですか?」と石井氏の解説が始まりました。
「雄の方が一杯ついているので遠くからでもわかるんですよ。」
では、これはメスですね。
この後しばらく、皆さん熱心にヒサカキを観察していました。
(ヒサカキがこれほど注目されることって、滅多にないのではないでしょうか?笑)
ヒサカキに続いて、注目を集めていたのがこれ。
花のようにも見える、イタヤカエデの新しい葉です。
「こんな状態、初めて見る」という声をうけて「いや、普通のカエデはもっと背が高いし、こういう状態は数日で終わってしまうので、タイミング的に会っていないだけだと思いますよ。それに普通は森の中の下の方の葉は、光が当たらないとこんなふうに赤くならないので、雰囲気が違うんですよ。」と石井氏。なるほど~。
次に石井氏は、森の中で急に足を止め「じゃあここで、タイワンリスの気持ちになってみましょう。」と語りだしました!
「周辺のイヌツゲやヒサカキにはリスが歯を研いだ傷があるのに、桜に無いのはなぜか?」という問いかけです。
「歯がひっかかる」「やわらかい」「ヤニがでる」皆さんから色々な意見がでます。
どうやら、オオシマザクラはリスが食べた時にマズいと感じる物質(ヤニ)を出すようです。
「みなさんも噛んだとき甘く感じるのと、ニチャニチャで歯につくのとどっちがいいですか?」と石井氏。面白い表現に引き込まれます。
さらに…
「『もうヤニなっちゃた。』って感じですよね。」…石井氏は、落研だったらしいです。(笑)
と、まあ、このように始まった2日間のツアー。
このまま書くと、ものすご~~い長編になってしまうので、全行程を少し整理して報告します。
今回のツアー、かなり森林インストラクターらしいツアーでした(笑)
なにが「らしい」のか?
まず、皆さん何でもじっくり観察します。
しかも、自分たちで見つけて(名前もわかっている)観察をはじめます。
ガイドいらずです!(笑)
例えば、今が花盛りのオオシマザクラ。
背の低い木は、近づいて観察。
匂いも嗅ぎ比べています。
眼下の森一面に広がる桜の景色に、見とれながらも…
「色が少し違うのもある…オオシマザクラって本当に多様なんだね。」という発言。
普通なら「奇麗」で終わるところを、「多様」だと感じるところが素敵です。
石井さんの話では、オオシマザクラは「早く成長し、早く腐り、どんどん変化してくタイプの桜」なのだそうです。溶岩台地にスクスク伸びる桜の姿を思い浮かべると、納得します。
そして風景のみでなく…
木の陰の枯れ草の上に、こんなものも見つけて教えてくれました。
芽生えて2年目の、若い葉。
大きな桜になる前の、小さな命です。
山だけではなく、砂浜も春の花が咲いています。
黄色の花をつけるハマニガナは、葉っぱも可愛い形をしています。
そしてここでも…
砂をほじくる人の指!
「何しているんでしょう?」と思ったら「地下茎は結構つながっているな」とのことでした!(笑)
そして、みなさんが観察するのは、植物だけではありません。
黒砂の海岸では…
何人も高倍率のルーペを持っているので、砂観察。
皆さんからは「溶岩だ~!」という言葉が聞かれました。
参加者の中には、大学で「マグマ学」を学んでいた人もいて、砂粒の中のキラキラ鉱物の説明もしてくれました。
皆さん観察しながら、次々に不思議を発見します。
不思議その1 樹海で。
「なんで、ここの木は他と比べて細いんだろう?」(今まで私は「ここはクネクネしているなぁ。」とは思ったけれど“他の場所に比べて幹が少し細い理由”を考えたことはありませんでした。)
「この辺は平地だから薪を切り出しやすかったから何回も切られ、最後に切られた年代が一番新しいのかもしれない」(石油燃料が出回る前の人の暮らしが、目に浮かぶような気がしました。)
不思議その2 神社の参道で。
「なんでここの杉は、こんなに元気に生きていられるんだろう?」
(これまた、私が今まで考えたこともないような疑問です。)
「杉は水分を必要とするのに、こんな水はけの良い島で生きられるのは、この場所の下に水があるんだろうか?」(確かにここは、島の中でも一番水が豊富とされている地域なんです!)
皆さん、風景の中に物語を見つけるのも得意です。
「針葉樹が曲がって伸びるって、珍しいよね。」
「横のスダジイに押されたんだね」
可愛い風景も、いっぱい見つけて写真を撮っていました。
皆さんが、カメラを向けていた“春の兆し”の数々です。
トベラの若葉
出方が面白いですよね。
ウラジロの若葉
クルクルしていて楽しいですね。
クロマツの雌花
ピンク色が、可愛いですよね。
「被写体選びの感性が私と似ているなぁ~」と思って、嬉しくなりました。
ところで、この2日間、様々な環境に生きる植物達を見ていただきたくて、あちこちを回りました。ゴツゴツ溶岩の上、細かい溶岩の粒が降り積もった場所、236年前の溶岩の上に再生した森2カ所、神社の背後の巨木の森、溶岩が流れた海岸、砂浜等々…。
普段は入らない薮に分け入り…
水と養分が植物にどれだけ影響を与えるかを、肌で感じました。
砂浜を歩いて、周りの風を遮る建物や地形が、植物の生育にどれだけ影響を与えるかも実感しました。
石井氏は「現場を見ないと、何も言えない」と語っていましたが、本当にそうですよね。
風景の中に身を置き、周囲の声に耳を傾けることが大事だと、心から思います。
FITの皆さんと一緒に大島の不思議を楽しむことができた、貴重な2日間でした。
そしてたくさんのことを教えていただきました。
皆さん、ありがとうございました!
(カナ)
今回の講師役はFIT会長で樹木医&環境カウンセラーでもある石井誠治氏。
http://www.env.go.jp/policy/counsel/kirakira/05-1.html
私はガイド役として参加しました。
昨日の三原山は霧だったので、火口はさっさと諦めて“噴火による植生の移り変わりが見える道”へ。
道中ヒサカキの花が満開でした。
「あれはオスの木ですか?メスの木ですか?」と石井氏の解説が始まりました。
「雄の方が一杯ついているので遠くからでもわかるんですよ。」
では、これはメスですね。
この後しばらく、皆さん熱心にヒサカキを観察していました。
(ヒサカキがこれほど注目されることって、滅多にないのではないでしょうか?笑)
ヒサカキに続いて、注目を集めていたのがこれ。
花のようにも見える、イタヤカエデの新しい葉です。
「こんな状態、初めて見る」という声をうけて「いや、普通のカエデはもっと背が高いし、こういう状態は数日で終わってしまうので、タイミング的に会っていないだけだと思いますよ。それに普通は森の中の下の方の葉は、光が当たらないとこんなふうに赤くならないので、雰囲気が違うんですよ。」と石井氏。なるほど~。
次に石井氏は、森の中で急に足を止め「じゃあここで、タイワンリスの気持ちになってみましょう。」と語りだしました!
「周辺のイヌツゲやヒサカキにはリスが歯を研いだ傷があるのに、桜に無いのはなぜか?」という問いかけです。
「歯がひっかかる」「やわらかい」「ヤニがでる」皆さんから色々な意見がでます。
どうやら、オオシマザクラはリスが食べた時にマズいと感じる物質(ヤニ)を出すようです。
「みなさんも噛んだとき甘く感じるのと、ニチャニチャで歯につくのとどっちがいいですか?」と石井氏。面白い表現に引き込まれます。
さらに…
「『もうヤニなっちゃた。』って感じですよね。」…石井氏は、落研だったらしいです。(笑)
と、まあ、このように始まった2日間のツアー。
このまま書くと、ものすご~~い長編になってしまうので、全行程を少し整理して報告します。
今回のツアー、かなり森林インストラクターらしいツアーでした(笑)
なにが「らしい」のか?
まず、皆さん何でもじっくり観察します。
しかも、自分たちで見つけて(名前もわかっている)観察をはじめます。
ガイドいらずです!(笑)
例えば、今が花盛りのオオシマザクラ。
背の低い木は、近づいて観察。
匂いも嗅ぎ比べています。
眼下の森一面に広がる桜の景色に、見とれながらも…
「色が少し違うのもある…オオシマザクラって本当に多様なんだね。」という発言。
普通なら「奇麗」で終わるところを、「多様」だと感じるところが素敵です。
石井さんの話では、オオシマザクラは「早く成長し、早く腐り、どんどん変化してくタイプの桜」なのだそうです。溶岩台地にスクスク伸びる桜の姿を思い浮かべると、納得します。
そして風景のみでなく…
木の陰の枯れ草の上に、こんなものも見つけて教えてくれました。
芽生えて2年目の、若い葉。
大きな桜になる前の、小さな命です。
山だけではなく、砂浜も春の花が咲いています。
黄色の花をつけるハマニガナは、葉っぱも可愛い形をしています。
そしてここでも…
砂をほじくる人の指!
「何しているんでしょう?」と思ったら「地下茎は結構つながっているな」とのことでした!(笑)
そして、みなさんが観察するのは、植物だけではありません。
黒砂の海岸では…
何人も高倍率のルーペを持っているので、砂観察。
皆さんからは「溶岩だ~!」という言葉が聞かれました。
参加者の中には、大学で「マグマ学」を学んでいた人もいて、砂粒の中のキラキラ鉱物の説明もしてくれました。
皆さん観察しながら、次々に不思議を発見します。
不思議その1 樹海で。
「なんで、ここの木は他と比べて細いんだろう?」(今まで私は「ここはクネクネしているなぁ。」とは思ったけれど“他の場所に比べて幹が少し細い理由”を考えたことはありませんでした。)
「この辺は平地だから薪を切り出しやすかったから何回も切られ、最後に切られた年代が一番新しいのかもしれない」(石油燃料が出回る前の人の暮らしが、目に浮かぶような気がしました。)
不思議その2 神社の参道で。
「なんでここの杉は、こんなに元気に生きていられるんだろう?」
(これまた、私が今まで考えたこともないような疑問です。)
「杉は水分を必要とするのに、こんな水はけの良い島で生きられるのは、この場所の下に水があるんだろうか?」(確かにここは、島の中でも一番水が豊富とされている地域なんです!)
皆さん、風景の中に物語を見つけるのも得意です。
「針葉樹が曲がって伸びるって、珍しいよね。」
「横のスダジイに押されたんだね」
可愛い風景も、いっぱい見つけて写真を撮っていました。
皆さんが、カメラを向けていた“春の兆し”の数々です。
トベラの若葉
出方が面白いですよね。
ウラジロの若葉
クルクルしていて楽しいですね。
クロマツの雌花
ピンク色が、可愛いですよね。
「被写体選びの感性が私と似ているなぁ~」と思って、嬉しくなりました。
ところで、この2日間、様々な環境に生きる植物達を見ていただきたくて、あちこちを回りました。ゴツゴツ溶岩の上、細かい溶岩の粒が降り積もった場所、236年前の溶岩の上に再生した森2カ所、神社の背後の巨木の森、溶岩が流れた海岸、砂浜等々…。
普段は入らない薮に分け入り…
水と養分が植物にどれだけ影響を与えるかを、肌で感じました。
砂浜を歩いて、周りの風を遮る建物や地形が、植物の生育にどれだけ影響を与えるかも実感しました。
石井氏は「現場を見ないと、何も言えない」と語っていましたが、本当にそうですよね。
風景の中に身を置き、周囲の声に耳を傾けることが大事だと、心から思います。
FITの皆さんと一緒に大島の不思議を楽しむことができた、貴重な2日間でした。
そしてたくさんのことを教えていただきました。
皆さん、ありがとうございました!
(カナ)