以前、“死んだ魚を見ないわけ”という本を読んだ事があります。
古い本なので、詳しい内容は忘れてしまいましたが、海の中では弱った魚はすぐに捕食者の餌食となり
死んだ魚もスキャベンジャー(腐肉を漁るモノ達)によって、すぐに片づけられてしまうから・・・
と言う様な事が書いてありました。
確かに、水中でこれらの魚に出会う事は稀かも知れません。
しかし、永く潜っていると、案外死の場面と遭遇することも多いのです。
今回は、そんな魚達の死にまつわる話について少し・・・。 暗い?
過去に見たもので一番大きなモノは、1,5m程のメジロザメの仲間です。

(これは別物です。)
それは、水深14メートルのゴロタ斜面に横たわっていました。
特に目立った傷は無かったので、
上の画像と同じ様に回収したエビ網にでも掛っていたのが捨てられたのでしょう。
発見当時はまだ体色も残り綺麗だったのですが、数日で白くなり
更に匂いを嗅ぎつけた大きなマツバガニ(甲長20cm程の2匹)や貝類に食い荒らされ
2週間程でボロボロになってしまいました。
次は、水深40m付近で見付けたクエの死体、体長120センチ程の大きな個体でした。
この時は、ビデオしか持っていなかったので画像は有りません。
高級魚のクエですから、活きが良ければかなりの値段が付いた事でしょう。勿体ないですね~。
そしてこれは、水深20m付近に沈んでいた、30cm程の“イシガキフグ”
数日後には、大きなホラ貝の仲間やレイシガイ・ヤドカリ等が群がっていました。
さて、魚達の死因は様々です。
ある日潜っていると、水深20m付近で横たわるカエルアンコウを見付けました。
まだ目はしっかりしていますが、明らかに死んでいます。
しかし、私が手に取ってみるとブルブルっと動いたのです。
何と!動いたのはお腹の中の魚でした。
きっと皮膚毒を持ったハコフグの仲間でも丸呑みしたのでしょう。
そして呑み込んだ本人は皮膚毒にやられ、中の捕食された魚がまだ生きていたのです。
又有る時は、口に白くて丸いモノを咥えて死んでいる“アカエソ”や“ウツボ”を見た事があります。
咥えられていたモノは、“キタマクラ”
“キタマクラ”はフグの仲間で、その不吉な名前の通り身には毒があります。
しかし、死んでいた“エソ”や“ウツボ”は、毒にやられたのではなく窒息死だったのです。
捕食された“キタマクラ”は、瞬間的に膨らんで捕食者の気道を塞いだのでしょう。
結局、食うか食われるかの戦いは、両者共倒れ。
パンパンに膨らんだ“キタマクラ”も息絶えていました。
数年前、冬に低水温(12℃位)が一月近く続いた事が有りました。
夏から秋にかけて流れついた南方系の幼魚達も、日増しに減っていきます。
特にこのシーズン数の多かったトラギスの仲間が、あちらこちらで
息絶え絶えになっていたのは痛々しかったです。
そして、これはその時の“ハワイトラギス”
ちょっと遊び心で、“イロカエルアンコウ”の近くに置いてみました。

《 ちなみにカエルアンコウの仲間は、生き餌しか食べません。》
「ワッ!死への冒瀆だぁ~」なんて言わないで下さいね。
最後のこれは“イタチウオ”、エキジット(海から上がる事)間際、水面から降ってきました。
普通は、夜行性の魚で昼間は岩陰や岩壁の亀裂に入って居ます。

お腹に痛々しい、モリで突かれ引き抜かれた痕が有ります。
ここ数年、夏になると“手モリ”を持った人達(子供も大人も)を沢山見掛けます。
そして、一部だとは思いますが、食べもしない魚を突くのです。
知っている方も多いと思いますが、某TV番組(「とったド~~!」と叫ぶヤツ) の
影響が大きいと思います。
こんなシーンに遭遇した時、何とも言われぬ怒りと悲しみを覚えます。
声を大にして言いたい!「突いたら食え」
私は何度か海で叫んでいますが、きっと“口煩いおじさん”としか思われていないでしょうね? 苦笑
文・画像共 海ガイドチーム KY