浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

立松和平『毒 風聞田中正造』(東京書籍)

2011-10-07 20:58:45 | 日記
 東北・関東地方を中心に毒がふりまかれている。毒をまいたのは、東電という大企業である。当然にも、被害については汚染者負担の原則により、東電がすべて補償すべきである。

 しかし、日本政府は密かに東電に手をさしのべ、東電を、そしてそれにつながって利益を得てきた銀行資本や株主を、人々にみつからないように救おうというのだ。

 そのカラクリを、中日新聞論説委員・長谷川幸洋氏が暴いている。


 http://gendai.ismedia.jp/articles/-/22120


 いつの時代も、被害者が泣かされ、加害者が保護される。加害者は権力を持った人間たちと親密な関係を持っているからだ。

 田中正造が命をかけて闘った足尾銅山鉱毒事件も同様であった。加害企業である古河鉱業の操業停止をせず、加害企業を保護し、逆に被害をうけた人々、とりわけ谷中村の住人たちの生活(そしてその歴史)を徹底的に破壊し、追い出した。


 毒をまき散らした古河鉱業、毒をまき散らしている東電。100年の歴史がどこかに飛んで行ってしまったように、同じ光景がある。


 この毒を、今は亡き立松和平が小説としている。

 あの話し方で、ボクは足尾銅山によりはげ山になった山に植林活動をしているんです、それは今は点でしかないんだけで、それを面にして、緑で覆いたいと思っているんです・・・・と言っていた立松和平。

 今生きていたら、今まき散らされている毒に、彼は激しく闘いを挑んだだろう、と思う。

 彼の正義感は、この小説に描かれている。ただたんに人間からの視点ではなく、「虫瞰図」として、虫が大地を這いながら、住民たちと田中正造の闘いを描いている。

 「山を荒らさず、川を荒らさず、村を荒らさず、人を殺さないのが、本当の文明ではないか」という立松の叫びがみなぎる小説だ。

 足尾鉱毒事件とその闘いを、今振り返る必要がある。


 

コメント
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