浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

企業のための政治

2012-07-05 20:58:48 | 日記
最近『浜松市政情報』Ⅰ、Ⅱを刊行した。今までも「地域協議会」など部分的に浜松市政について検討したことはあるが、今回はかなり広汎な問題を検討した。その結果、いわゆる「新自由主義」の政策が、市政にも貫徹されていることがよくわかった。

 「新自由主義」とは、「企業の自由が最大限に保証されるときにはじめて、一人一人の人間の能力が最大限に発揮され、さまざまな生産要素が効率的に利用できるという一種の信念に基づいて、そのためにすべての資源、生産要素を私有化し、すべてのものを市場を通じて取引するような制度をつくるという考え方」、「水や空気、教育とか医療、また公共的な交通機関といった分野については、新しく市場をつくって、自由市場と自由貿易を追求していく」、「儲けるために、法を犯さない限り、何をやってもいい。法律や制度を「改革」して、儲ける機会を拡げる。そして、パックス・アメリカ-ナを守るためには武力の行使も辞さない」(宇沢弘文・内橋克人『始まっている未来』岩波書店、17~8頁。下線は引用者)というものだ。

 浜松市は、ごみの収集を民間委託し、また公共の建物の管理運営を、指定管理者にまかせている。その最大の目的は、経費(人件費)の削減である。ということは、そこで働く人々の賃金は低く、非正規雇用に依存していることが容易に想像できる。こうした外部化した事業だけではなく、市役所内でも非正規職員を多く雇用して人件費の削減に努めている。公的機関も非正規雇用に邁進しているのである。今や労働者の三分の一が非正規雇用である。

 新自由主義は、働く人々の生活なんか顧慮しない。使い捨てでよいのである。その一方で、企業には儲けの機会を提供するだけでなく、様々な補助金を与えている。

 たとえば2012年度予算では、「企業立地促進助成事業」に10億円、「新産業創出事業補助金」として1億5千万円、「企業用地整備事業」に約1億円というぐあいである。

 また浜松城を中心としての「セントラルパーク構想」というものがある。浜松城公園を整備するだけではなく、新美術館や新文化センターの建設が予定されている。

 鈴木康友市政は、行革審の「命令」によって、市民生活や住民自治に関わる事業については「倹約」の方針を採用している。ところが、巨額の費用がかかる新美術館や市民センターの建設は実行する方向である。なぜか。

この二つの「ハコモノ(箱物)」は、浜松商工会議所の提案によるものだからである。行革審の会長は、同時に商工会議所の会頭である。つまり、浜松市政は、商工会議所の意図のままに動いているとも言えよう。

 現在最大の悪税である消費税の増税を、民主党内閣が自民党、公明党と共に企んでいる。「税と社会保障の一体改革」として、まず税だけ上げるのである。しかしこれとて、2008年の日本経団連「税・財政・社会保障制度の一体改革に対する提言」を基礎にしている。その内容は、増税し、同時に社会保障水準を切り下げ、企業の負担を軽減することを内容としている。

 このような企業(とくにグローバルに展開する企業)のための政治は、国政だけではなく、地方自治体でも行われているのである。
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