浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

【映画】オレンジと太陽

2012-08-01 21:03:28 | 日記
 午後一時からの「オレンジと太陽」を見に、シネマイーラに行った。今日はなぜか人が多かったので、係員に「今日は多いですね」と尋ねたら、「今日は映画の日で、料金が安いのです」といわれた。そうだったのか。

 さて、この映画は、イギリスの有名なケン・ローチ監督の息子、ジム・ローチが監督したもの。ケン・ローチの作品はすべて社会性と批判的精神に富むものだが、息子のも批判精神にあふれたものであった。

 約13万人の子どもたちを、イギリスからオーストラリアに秘密裡に移民させた事実を、ひとりの女性ソーシャルワーカーが、それを隠したままにしておこうという権力者たちの妨害をはねのけて明らかにしていく、というものだ。

 その原動力は、幼いときに親と引き離され、親も知らないままにオーストラリアへ連行され、迫害を受け虐待された子どもたちの、「私は誰なんだ?」という問いに誠実に応えようという女性とその家族のヒューマニズムだ。

 これは「強制連行」でもある。国家というものは、あるいはそれを支える教会などの権力組織は、こういう無法を平気でやるのだ。どの国家も変わらない。

 106分の間、少しも飽きさせずにぐいぐいと引っ張っていくジム・ローチ監督の手腕はなかなかのもの。今後も、こういうような作品をどしどし提供して欲しい。

 8月10日まで上映中。

http://www.oranges-movie.com/column.html
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苦難は知と行動によって・・

2012-08-01 10:45:58 | 日記
 友人が今、三日間ベッドの上で少しも動いてはいけないという手術に挑んでいる。寝返りも打ってはいけないという苦難に、友人は耐えなければならない。しかし、その受苦は、その効果を知ったが故にある。

 釈迦が言うように、生きていくことは、苦難である。しかしその苦難を乗り越えさせるのは、知と行動である。

 昨日から湿度がさがり、気温は高くてもそんなに不快感は感じられない。こういう日々は、読書が進む。昨日は『「東京電力」研究 排除の系譜』(斉藤貴男、講談社)を読み終えた。なかなか焦点が定まらない内容ではあったが、記述の中には参考になるものもあった。

 今日は、大江健三郎の『定義集』(岩波書店)を読んでいる。図書館から借りたものだ。世界的な作家である大江の書く短い文章には、古今東西の知が詰まっている。作品を生み出す背景には、古今東西の知がある。

 私もなんらかの論文を書く場合は、膨大な文献を渉猟し読み込み、みずからの脳の中で熟成させ、そして文としてアウトプットしていく。それなしに創造的なものは生産できない。

 この『定義集』の各所で、立ち止まってしまった。

 金井利博氏のことばを引用してではあるが、「世界は原爆を威力として記憶しているか、人間のこうむった悲惨として記憶しているか?」に深く感じ入った。

 残念ながら、日本の為政者の脳裏には、前者しかなく、それが原発維持政策につながっている。

 また「あいまいな言葉によって権力が(外交関係で言えば強い国が)積み上げる既成事実に対しては、明文化しうる言葉によって民主主義的に抵抗する声をひたすら持続するしかほかにありません」(207頁)に、大江の現実問題に切り込む姿をみた。

 この本を読みながら、私はみずからの思惟の背後にある知の欠如に気づき、また行動においてもその少なさに恥じた。

 今静岡文芸大の2年生になっているIさんが友人たちとフクシマに行き、その現実をまざまざと認識したその姿を、テレビでみた。Iさんは私の補習を一番前で聴いていたひとり。3日にその報告会が行われるという。参加したいと思ったが、私は東京に行く。首相官邸周辺の抗議活動に参加するつもりだ。

 知と行動こそが、現実を変革する力となる。Iさんに負けてはいられない。


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