今日、観客席はいっぱいだった。コロナが流行し始めてから、こんなにたくさん客が入っていることはなかった。観劇後のあいさつで、音無美紀子さんが、コロナ流行のあと、こんなにいっぱいのお客さんがいるところで上演できて感激だ、というようなことを言っていた。そうだろうと思う。コロナ前の状況になることを万人が願っている。
さて劇は、約2時間幕あいなしの一挙上演。過去にどんなことがあったのかを説明しないと上演している現在のドラマが理解できないので、現在を演じながら、電子音を合図に過去の場面を演じる、というまさに「芸当」で話は進んでいった。
演じるのは五人、四人家族と長男の嫁だけ。それだけで家族のドラマを明示する。
父は、みずからできなかったことを長男に託すためにいろいろ細かいことを指示しながら息子を育ててきた。父の期待にこたえようと努力する息子、しかし期待に応えられずに引きこもりになってしまった。
この家のトラブルの原因は父親であると、素直に思った。父親としての威厳を振りかざしてる男はあんがいたくさんいるのだろう。こういう男が家庭や社会をダメにするのだ。
この劇、喜劇かと思ったらそうでもなく、最後は人情劇になった。私の後方の座席にいた男性の泣き声が聞こえた。
劇の背景には東日本大震災があるのだが、それはほぼ最初だけだった。話としては一般的なものであった。
私は新劇らしい新劇が好きだが、こういうふつうの劇もたまにはよいと思った。
演劇は、みずからの想像力をきたえるし、いろいろ考えさせる。昔のように、もっと多くの人が見るようになればよいと思う。