『世界』を読んでいる。そのなかからいくつか感想を書いておく。
まず金承福さんの「本とチェック」。本を読むことの意味を書いている。そのなかによい文章があった。
孤立していないーこのことばこそ文学の効用を表す重要なポイントではないだろうか。多くの人が小説や詩を読んで慰めを得るのは、自分は一人ではないということを全身で感じることができるからだと思う。だからこそ本を読み続けるし、「この本のことを伝えたい、あの人にも読んでほしい」と突き動かされるのだと思う。
文学作品を読むということは、私の場合はみずからの生き方を考えるためであった。文学作品の中に、いろいろな悩みを持ちながらもそれに堪え、考えながら生きていく人間像をみつめていた。確かに作品の中に、友人や先生や先達を発見していたのだろう。まさに「孤立していない」ということだ。
この金さんの文では、チョン・ヒョンジョンの「訪問客」という詩が翻訳されている。
人が来るということは 実はとてつもないことだ
彼は、 彼の過去と 現在と そして 彼の未来とともにやって来るからだ 一人の一生が来るからだ
壊れやすい ゆえに壊れたりもした 心がやって来るのだ
他者と交わるということは、他者と語り合うということは、他者の過去現在未来を知ることでもある。そのなかで、自分自身を変えていく、考え方を練り直していく、新しい知識を得る・・・・・他者と交わらないということは自分自身の成長を止めることだ。
だから他者との交流を妨げる新型コロナウイルスの蔓延は、人間の成長を押しとどめる役割を果たす。ウィルスを撲滅しなければならない理由である。