アメリカの日本近現代史研究者、ジョン・ダワーのアメリカについての著書である。副題に「第2次大戦以降の戦争とテロ」と記されている。
本書の訳者「あとがき」を引用すれば、本書は「戦後これまでの70年以上にわたる「パックス・アメリカーナ」の追求が、実は、「平和の破壊」をもたらす連続であったということである。すなわち、「暴力的支配」が産み出す「平和の破壊」を、「支配による平和」に変えようとさらなる「暴力」で対処することによって、皮肉にも、「暴力」の強化と拡大を「戦争文化国家」であるアメリカが、世界中で、繰り返し、悪循環的に産み続けてきたという事実である。現在のひじょうに不安定な世界状況が、いかなる過程を経て発生し、発展してきているのかが簡潔明瞭に理解できる分析となっている」というものである。
実際アメリカはベトナム戦争、イスラム国を産み出したイラク戦争などを引き起こし、アメリカの軍事力が不法不当な戦争を展開することによって多大な被害をつくりだし、多くの人の人命を奪い、また多くの難民を生んできた。
そうした戦争だけではなく、アメリカは、中南米を中心とした地域で内政に干渉し、クーデターを起こし、民主主義的な勢力を右派や軍隊の力によってなぎ倒し、混乱をつくりだしてきた。アメリカの特殊部隊やCIAなどが暗躍し、世界の不安定をつくってきたのである。
本書は、明らかとなった史資料を使って、そんなに詳細ではないが、アメリカの侵略戦争やテロ行為を明らかにし、その犯罪を問うものになっている。注を見ると、アメリカでは軍 やCIAの蛮行を示した資料がかなり公表されていることがわかる。
そうした歴史について、しかしアメリカはその責任をとったことはない。
第2次世界大戦以降オバマ大統領のときまで、アメリカのそうした行動はなくなることはなかった。トランプの時代がどうだったのかは未だ不明であるが、しかしトランプの時代はアメリカ軍が新たな戦争を引き起こすことはなかったのではないかと思う。
さて日本時間の今日、アメリカではバイデン大統領が就任した。『週刊金曜日』の1月15日号によれば、バイデンはタカ派だそうだ。民主党左派の「閣僚拒否リスト」に挙げられた者が要職に就くようだ。選挙中、バイデンには、アメリカ軍需産業が多額の寄付をし、副大統領のカマラ・ハリスはイスラエル・ロビーの集会に参加し、イスラエルのためには何でもする、というようなことを話したそうだ。
アメリカの力が減退するなかでも、アメリカは今まで通りに、戦争をし、テロを行う歴史を刻み続けるに違いない。そのアメリカに日本は積極的に「自発的隷属」し、アメリカのために貢献し続けることだろう。
世界情勢は好転する兆しは、残念ながらみられない。21世紀も、また暴力と環境破壊とが深化するはずだ。人類は終末に向けて動いている、と私は思っている。