あまりに寒い日なので農作業はしていない。しかし、連続して『地平』と『世界』が届くので、それらに一応目を通すのがなかなか時間がかかる。だから忙しい。
まず『世界』3月号。まず指摘しておかなければならないと思ったこと、を記しておく。それは、石原真衣の「〈サイレントアイヌ〉とはなにか」についてである。
近代日本国家が、蝦夷地の先住民であるアイヌを、アメリカ大陸で白人たちがインディアンに対しておこなったように、迫害したことは周知の事実である。石原は、『中学生から知りたいパレスチナのこと』(とてもよい本である。)を著した岡真理と藤原辰史が、その本で、「ガザを見たとき、日本は自国の植民地主義を想起できているか」と問うて、それに対応して中国、台湾、朝鮮に対する近代日本国家の侵略・植民地主義を挙げていること、しかし二人がアイヌや沖縄に言及していないことを批判する。「すべてが過去形で語られる「日本の植民地主義」に関する岡と藤原の思考と記述は、アイヌや沖縄といった現在形で進行する日本の植民地主義を不可視化する。」と。
いや、岡や藤原の著書を読んできた私としては、岡も藤原も、アイヌや沖縄のこともきちんと彼らの視野に入っているだろうと弁解してあげたくなる。なにごとかを説明するとき、それに関わるすべてのことを書くのではなく、いくつかのことを例示することにより読者の意識を喚起するという手法をとることは多い。だから、自分自身が切実に思っていることに言及しないことを材料にして、批判するのはどうかとも思う。
今月号の『世界』、韓国についての論稿がよかった。おって紹介する。