窪田恭史のリサイクルライフ

古着を扱う横浜の襤褸(ぼろ)屋さんのブログ。日記、繊維リサイクルの歴史、ウエスものがたり、リサイクル軍手、趣味の話など。

経験価値として煎茶をとらえてみる

2007年11月24日 | その他
 現在受講中の研修、「マーケティングスクール・アドバンス」は『新訳・経験経済』の訳者岡本慶一先生を講師としてコモディティ、製品、サービスと発展してきた経済価値の次の段階にくる経験という価値について学んでいるわけですが、この手の本を読まなくなってから久しい僕としては実に珍しく『新訳・経験経済』に目を通し、前述のように経験価値の事例として滋賀の「たねや」さんにも足を運んできました。そんな中で自分の商売についての経験価値化についてはまだあまり具体的なイメージが湧いてこないのですが、ふと身近なところで考えてみたときに先日開催した煎茶のお茶会などはまさに経験価値の一つなのではないかと思いました。

 経済価値としての「経験」とは企業が製品をベースとして提供するある瞬間顧客の心の中に感情的、身体的、知的、精神的なレベルで働きかける「コト」を意味し、娯楽・教育・脱日常・美的という4つの要素が組み合わさって一つの「経験」が作り出されるのだそうです。文人趣味として始まった煎茶はこれら4つの要素を含んだ、文人によって100年以上も前に生み出された経験価値ということができます。

 【娯楽】:一部精神修養的な色合いが強く出て「煎茶道」などという言われ方もしますが、元来煎茶は文人によって生み出された娯楽です。先日開催したお茶会(詳しくはブックマークの「明月庵 煎茶徒然草」をご覧ください)でもお茶席での会話は自由ですし、作法もお抹茶に比べるとはるかに簡易なので全く経験のない人でも敷居の高さを感じることなく楽しむことができます。

 【教育】:これも言うまでもないことなのですが、元々漢詩や唐物の道具に対する教養の高い文人によって始められたものなので、煎茶はお茶そのものも含め漢詩や漢文学を背景とした「知的遊戯」としての性質がむしろ主であるといえます。先日僕が担当した茶席の主題は李白の『早発白帝城』という詩でしたが、お茶席はこの詩に詠われる世界を心の中で共有しながら眼前では主題に沿った茶道具、軸、盛り物などに趣向をこらし、現代風に言えばヴァーチャルな詩の世界を体験します。また、お茶葉についてや茶道具、お手前についても知的な楽しみがあります。

 【脱日常】:お茶席そのものが脱日常の世界です。特にお抹茶はこの脱日常が強調された世界と言えるかもしれません。煎茶においても文人たちそのものが脱日常的存在ですし、現代の我々にとっても日頃目にすることのない茶器でお茶を飲んだり、茶会の会場であった北鎌倉の自然や静寂も脱日常の経験と言えるでしょう。

 【美的】:煎茶は娯楽の世界であると同時に美術の世界でもあります。いくら立派な骨董を使って上の三要素を満たしたとしても、その茶道具がその場にふさわしくない、あるいは茶道具同士がアンバランスな物であったならば美的な要素は台無しになってしまいます。珍しい茶道具を使うことに意味があるのではなく、まさに「経験」を構築する4つの要素を引き立たせる「道具」として茶道具は存在していると言えます。

 今回のお茶会について言えば僕はお客さんに「経験」を提供した側になるのですが、お茶をやること自体は僕自身にとっても経験です。お茶席に来たお客さんはどのような経験を得てお帰りになったのか。それは個々に違うと思いますが、個々に違うけれども多数の人が同じ場を求めるのが経験価値なのではないかと思います。
 
 日々の仕事の中でも行為としては製品差別化もしサービスも提供しているが、結果としてコモディティ化の憂き目を見ている実態は偽らざるところ存在します。僕にとって身近なお茶を仕事共にもっと深く掘り下げてみることで新たな価値を創造していきたいと思います。

[新訳]経験経済
B・J・パインII,J・H・ギルモア,岡本 慶一,小高 尚子
ダイヤモンド社

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中小企業金融公庫研修

2007年11月24日 | その他
 11月20日、中小企業金融公庫主催のセミナーに行ってきました。講義の中で取り上げられていた『すごい会議』という本、当社が現状抱えている課題ともマッチしていたので早速注文して読みました。1日で読める手軽な本ですが、最後の頁から黄色い部分だけを遡って読めば十分であろうと思われます。理屈は分かったので早速実践したいと思っていますが、例えば教育でも大人相手と子供相手とでは適用する手法が異なるのと同様、当社の実情にあわせどうアレンジしていこうかと(本書では最初はアレンジせず手順どおり進めるよう説いていますが)思案しているところです。

すごい会議-短期間で会社が劇的に変わる!
大橋 禅太郎
大和書房

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白石康次郎さん(横浜商工会議所展示会で)

2007年11月24日 | 講演メモ
 11月19日、貿易センタービルで横浜商工会議所主催の環境をテーマにした展示会があり、当社もCO2発生抑制効果に大変優れている故繊維を原料としたウエス、軍手、油吸着マットの展示を行い地元企業の皆様にご好評いただきました。

 しかしこの日最大の収穫は何と言っても海洋冒険家白石康次郎さんの講演を拝聴できたことです。本当に心に残るお話がいくつもありメモを失くしてしまったことが何とももったいないのですが、それでも特に強く心に残ったことが2つあります。

 一つは偉大な成功はまさに小さな一歩を積み重ねた結果であるということ。例えば白石さんの恩師である故多田雄幸氏との出会いにしてもそうです。本で知っているだけの会ったこともない人に電話帳を調べて訪ねて行き弟子入りを志願する、こんな型破りなことを実際にできる(そもそもそうしようと思う)人がどれだけいるでしょうか。それだけではなく白石さんがお金も人脈も知名度も経験もない(海外では言葉も通じない)ところから最年少単独世界一周を成し遂げるまでに至る行動はそのような破天荒だが驚くべき行動の連続なのです。「金がない、経験がない、人脈もない」と躊躇するのが凡人、「ないからどうする」と行動をおこせる人が偉大な人物、凡人と偉人を分けるものはまさにその点においてと言えるのではないかと感じました。人間「夢」が大切なのではない、「夢」のために「地道で誰でもできそうだが誰もが躊躇するか見過ごす」行動を起こし、積み重ねることが大切なのではないでしょうか。

 二つ目は「迷ったら頭で考えてはいけない、欲が全ての判断を誤らせる」ということです。欲といっても色々ありますし、聖人でない我々は全ての欲を取り去ることなど到底できないことだと思いますが、唯一信じるに足る「欲」とは「どれだけ時間が経過しても変わることなく心の底から湧きあがってくる欲」、白石さんで言えば「船で(自分の力で)世界を見てみたい」という「欲」ではないでしょうか。僕も思うだけで長続きしない「欲」はたくさんあります。しかしそんな中でも変わることなく「何の役に立つとも思えないけれども、冷めることのない欲求」というのはあります。それに素直に耳を傾けることが自ずとその人にとって最良の人生を切り開くのではないかと感じました。本物の欲は状況がいかに変わろうとも失われることがない欲ということができます。そうでない欲が何故判断を誤らせるかと言えば、「失われる恐怖を生み、執着するから」ではないかと思います。例えば物欲、金銭欲などがそういうものと言えるでしょう。

 これら白石さんのお話を通じて非常に勇気づけられました。僕の会社は小さな会社ではありますが、それでも大海原に浮かぶ60フィートのヨットに比べれば大きい船ということができますし、白石さんは船の中ではまさしく孤独ですが、いくら「経営者は孤独」とはいえ会社には何十人もの社員がいる訳で、はるかに心強いことです。さらにヨットレースは孤独のうちに命を失う危険がありますが、会社は仮に潰れて破産したって命までとられるわけではありません。胆を据え、心の底から湧きあがってくる欲を信じて行動を起こすこと。それ以外の欲に由来する不安や恐怖はかえってそれらを増大させる結果を生むのだと思いました。

人生で大切なことは海の上で学んだ
白石 康次郎
大和書房

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フィリピン出張

2007年11月24日 | リサイクル(しごと)の話
11月13日~16日、慌しい日程でフィリピンへ出張してきました。今回は某テレビ局のロケ同行がメインでしたが、撮影の合間を縫ってフィリピンで生産しているウエスの工程確認、更なる品質管理に向けた現地マネージャーとの検討を行ってきました。ウエスという一見単純そうに見える製品でもモノ作りに終わりはありません。マニラ郊外のケソン市に宿泊した初日、ホテル近くの下院ビルで爆弾テロがあり下院議員を含む4名が死亡するという騒ぎがありました。今更ですが海外に生産拠点を移すというのも楽ではありません。

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