窪田恭史のリサイクルライフ

古着を扱う横浜の襤褸(ぼろ)屋さんのブログ。日記、繊維リサイクルの歴史、ウエスものがたり、リサイクル軍手、趣味の話など。

ウエスものがたり【第四回】ウエスの種類

2008年06月26日 | ウエスものがたり
さて、前回まではウエスという産業がどのようにして興ってきたのかについてお話してきました。これからはウエスというものが実際どのようなものなのか、どのようにして作られるのかなど珍しいウエスの製造過程についてお話していきたいと思います。ウエスを日々お仕事で使っていらっしゃる方でも、そのウエスがどのようにして作られるのかご存知の方はなかなかいらっしゃらないと思います。ただ初めにお断りしておきますと、ウエスの種類や名称、製造工程などは生産される地方や業者によってまちまちであり、これから申し上げることがウエス全般について必ずしも汎用的に当てはまるものではありません。その点をあらかじめご了承ください。



 一口にウエスといってもその種類は用途、素材、色、厚み、大きさなどによって実に様々であり、ナカノ株式会社で扱っているウエスだけでもざっと50種類にのぼります。これでもかなり統合・整理した方であり、かつてはさらに多くの種類がありました。したがって非常に大雑把な分類になるのですが、おおよそウエスは以下のような要件が仕様用途に応じて複合的に組み合わさって分類されます。

・素材…織物、メリヤス、タオル地など
・色…白、薄色、濃色など
・厚さ…薄手、厚手など
・大きさ…大きいもの、中位のもの、小さいもの、定型のもの

使用用途はそれこそ何かを拭く作業、磨く作業であればあらゆる所で使われますし、ちょっと変わったところでは漏水防止の詰め物として使われたりもします。一般的なところでいうと例えば色落ちの恐れのある溶剤作業や塗装作業では白色無地、柔らかいメリヤスのウエスが好まれますし、機械油をざっと拭い去るような作業では少々厚みがあり吸収性に優れたウエスが使われます。

  繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした

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繊維リサイクルの歴史 【010】「ちり紙交換」の登場と故繊維業界

2008年06月26日 | 繊維リサイクルの歴史
高度経済成長により日本人の暮らしは豊かになりました。所得が上がる一方、生産方式の合理化、技術革新、また海外から原料が安価に入手できるようになったことにより、もはや再生資源の値段が上がることはなく、業者としては価格の低下分を数量で補填するしかありませんでした。

 経済発展にともなって印刷会社や製缶工場の裁断屑、縫製工場の裁断屑、鉄工所の金属屑などが大量に発生するようになりました。また流通業ではそれまでの木箱がダンボールに変わり、その屑がスーパーなどから大量に発生するようになりました。買出人や収集人が減り、屑物の集まらなくなった建場(業者がその日に集めた廃品を買取る問屋のことです)にとって、唯一の生き残りの道がこうした資源の回収を担う坪上業者になることでした。しかし高度成長で人件費が上がり、従来のような集めた種々の廃品を選分するというような手間のかかる作業はもはやできなくなりました。こうして現在のように、古紙だけ、鉄屑だけ、というような回収の専門化が進んでいったのです。

 鉄やガラスなどは工場発生の屑が大量にあり、またバージン原料も安くなったために、家庭から出る空き缶や割れた瓶など誰も回収しようとはしなくなりました。逆に古紙業界は家庭から大量の新聞・雑誌が発生することに目をつけ、昭和39年に「ちり紙交換」を始めます。この「ちり紙交換」は昭和40年には全国に広がり、今でも一部の地域では実施されています。

 こうした伝統的回収システム崩壊の流れの中で最も打撃を受けたのは、他でもない、ぼろを扱う故繊維業界でした。というのは、故繊維の主力をなすウエスは洗いざらしの布でなければ良質のウエスにならなかったため、他の再生資源のように縫製工場の裁断屑が大量に回収というわけにはいかなかったからです。しかも家庭から発生するぼろは古紙に比べればきわめて少量であるため、独自に回収車を出しては回収コストが合いませんでした。そんな中登場した「ちり紙交換」は、故繊維業界にとって「渡りに舟」だったのです。

注:メーカーのように均質で数量のまとまった廃品がでるところを「坪」といい、この坪から回収を行なう業者を坪上(つぼあげ)といいました。

  繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした

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