2022年5月12日、オンラインによる第54回燮会が行われました。燮会は日本交渉協会が主催する交渉アナリスト1級会員のための勉強会です。
さて、今回は「交渉の男女差研究から見える、交渉力アップのポイント」について。10月に第2回が行われる予定ですので、今回は理論編。ここ25年程の研究から、交渉行動や結果にどのような男女差が分かっているのかについてお話ししました。
初めにアイスブレイクを兼ね、「交渉系資格はなぜ女性が少ないのか?」について、みなさんにブレイクアウトセッションで話し合っていただきました。これについてハッキリとした答えはありませんが、僕が以前から抱いていた疑問の一つでもあります。
続いて今回の中心テーマである、交渉の男女差研究について。初めにお断りしておきますと、交渉というものを総じて捉えた時、交渉結果の男女差は有意ではあるものの、差は小さいという結論が出ています。しかし、ある特定の状況によっては交渉行動や結果に男女差がみられる場合があり、それがどういう状況なのか8つ特定したのが今回のお話です。また、これらの研究はアメリカを中心とする西洋文化圏で行われたものがほとんどであり、例えば日本のような他の文化圏でそのまま当てはまるかの検証はなされていません(一部はなされているものもあります)。また、当然ですがここで「男女」という場合、それは全ての男女に当てはまるものではなく、過度な一般化は禁物であるという点に注意が必要です。
特定の状況とは、おおよそ以下のようなものです。
1.交渉の捉え方
2.人間関係における位置づけ
3.統制の所在
4.力の使途
5.コミュニケーションの仕方
6.交渉中の扱われ方
7.交渉戦術が及ぼす影響
8.ステレオタイプ
これらの状況で発生する男女差(この場合、男性の方が良い結果であるという結論が多い)から、差を埋めるための幾つかのポイントが見えてきました。広範囲に及ぶ交渉学の中で、これらのポイントを抑えることにより、効果的に女性の交渉力をアップさせることができるのではないかと思います。具体的なアプローチについては、第2回でお話ししたいと思います。
第二部は、今年3月に日本交渉協会で実施したアンケート結果について。結果からは、第一部でお話しした西洋文化圏での研究結果とは異なる、日本人の交渉に対する捉え方、意識のようなものが見えてきました。結論だけお話しすると、第一部から見えてきた「交渉力アップのポイント」は、わが国の男性にとっても大いに有用なのではないかという仮説です。
最後に、メディエーターのロバート・ベンジャミンが「人は何故交渉を避けるのか」について、その要因を幾つか自身のHPで紹介しています。これが興味深かったので、ご紹介させていただきました。
繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした