都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
カジミール・マレーヴィッチ 「シュプレマティズム(消失する面)」 川村記念美術館から
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常設展示
「カジミール・マレーヴィッチ -シュプレマティズム(消失する面)- 」
マレーヴィッチ(1878-1935)のシュプレマティズム絵画では、日本唯一のコレクションという川村記念美術館所蔵の「シュプレマティズム(消失する面) 」(1916-17)です。新印象主義から未来派、さらには自身の提唱したシュプレマティスム(絶対主義)から具象絵画への回帰と、度々作風を変化させたマレーヴィッチの画業の中では、最も優れたとされる時期の作品です。
純粋で幾何学的な形態を求めたというシュプレマティズムですが、その一連の作品群でも特に有名なのは、白いキャンバス上に、いくつもの大小異なる赤や青などの四角形(あるいは円形)が描かれたものです。しかし、ここで紹介した作品はそれらと大分趣が異なります。やや黒みがかった白地に、たった一つだけ大きく描かれたフック形の面。面は、黒とも青ともとれるような色で象られ、そこがちょうどフォンタナの「空間概念」の鋭い切れ込みのように、キャンバスの内側やさらにその向こう側をもイメージさせます。そして、このフック型の面は、上部がまるでキャンバスに刺さっているかのように、白地をグルッと回り込んで描かれています。それがまた、このシンプル極まりない画面に躍動感をもたらすのでしょうか。まるでフックの面が、たった今キャンバスに突き刺さって留まっているようにも見え、またあるいはそれが、逆にキャンバスを飛び出して何処かへ行ってしまった面の痕(影)のようにも見えます。「消失する面」とはまさにこのフック型の面を示すのかもしれません。形の純粋さを通り越した、力強い動きを感じさせる作品です。
国内ではあまり見る機会がないというマレーヴィッチですが、川村記念美術館の常設展示では必見の作品と言えそうです。
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