都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「日本の四季 -雪月花- 」 山種美術館 1/21
山種美術館(千代田区3番町2)
「日本の四季 -雪月花- 」
2005/12/3-2006/1/22(会期終了)
東京では久々の「大雪」となった先週の土曜日、山種美術館で開催されていた「日本の四季 雪月花展」を見て来ました。タイトルの通り「雪月花」を画題としたものと、冬、さらには正月の「吉祥」にちなんだ作品が展示されます。まさに日本の冬の美しさを、日本画にて味わうことの出来る展覧会です。
展示は全体的に些か地味にも感じましたが、惹かれた作品はいくつかありました。中でも私の一押しは、菱田春草の「月四題」(1909-10)です。春夏秋冬の四部作に分かれたこの作品は、以前「春」だけを見て感銘した記憶がありますが、こうして4点並んだ姿もやはり見応え満点です。菱田春草ならではとも言えるような、柔らかくて淡い曲線美によってまとめられた草木の味わい深さ。特に「冬」では、しっとりと湿り気を含んだ雪が枝に仄かに被さって、何時かは溶けてしまうであろう雪の儚さすら感じさせます。ややザラッともしたような、水分を多く含んだ雪の質感。それを美しく伝える作品でもありました。
酒井抱一の「飛雪白鷺図」(1823-28)も見事です。抱一は春草に比べると、もっとダイナミックな線にて、シャープな動きを見せながら草木を象っているかと思いますが、その味わいはこの作品でも十分に堪能することが出来ます。白鷺が上下対になって配される構図の妙と、水面から伸びる、水に流れされてるような草の表現。そして特に優れているのは、降りしきる雪の描写です。パラッパラッと、まるで片栗粉を吹きかけたような真っ白い粉雪。それがまるで鷺たちを祝福するかのように、上から静かに降り散らされます。そしてその雪を喜んでいるかのような、鷺の生き生きとした表情。これも魅力的です。
金を大胆に使いながらも、不思議と素朴な雰囲気がある高山辰雄の「中秋」(1986)も面白い作品です。画面中央にぽっかりと浮かぶ大きな満月。全体を覆う金色は、その月明かりを意味しているのでしょうか。小さな川に一本の高木、そして人気のない一軒家。それらが全て音を立てないで静かに佇んでいます。そしてタッチはまるで点描画のように精緻です。また、モノトーンの、どこか版画のような味わいがあるのも、この作品の魅力の一つかと思いました。
山種美術館からは、降りしきる雪を踏みしめながら千鳥が淵方向へ歩きました。雪が降ると音がかき消されていきます。いつもに増して静寂に包まれたお堀にて、雪に埋もれた一輪の赤い花を見つけました。後二ヶ月もすれば、この界隈も白から華々しいピンク色へと変化することでしょう。私の好きな冬の終わりがそろそろ近づいている。そう思うと少し寂しくも感じた展覧会でした。
「日本の四季 -雪月花- 」
2005/12/3-2006/1/22(会期終了)
東京では久々の「大雪」となった先週の土曜日、山種美術館で開催されていた「日本の四季 雪月花展」を見て来ました。タイトルの通り「雪月花」を画題としたものと、冬、さらには正月の「吉祥」にちなんだ作品が展示されます。まさに日本の冬の美しさを、日本画にて味わうことの出来る展覧会です。
展示は全体的に些か地味にも感じましたが、惹かれた作品はいくつかありました。中でも私の一押しは、菱田春草の「月四題」(1909-10)です。春夏秋冬の四部作に分かれたこの作品は、以前「春」だけを見て感銘した記憶がありますが、こうして4点並んだ姿もやはり見応え満点です。菱田春草ならではとも言えるような、柔らかくて淡い曲線美によってまとめられた草木の味わい深さ。特に「冬」では、しっとりと湿り気を含んだ雪が枝に仄かに被さって、何時かは溶けてしまうであろう雪の儚さすら感じさせます。ややザラッともしたような、水分を多く含んだ雪の質感。それを美しく伝える作品でもありました。
酒井抱一の「飛雪白鷺図」(1823-28)も見事です。抱一は春草に比べると、もっとダイナミックな線にて、シャープな動きを見せながら草木を象っているかと思いますが、その味わいはこの作品でも十分に堪能することが出来ます。白鷺が上下対になって配される構図の妙と、水面から伸びる、水に流れされてるような草の表現。そして特に優れているのは、降りしきる雪の描写です。パラッパラッと、まるで片栗粉を吹きかけたような真っ白い粉雪。それがまるで鷺たちを祝福するかのように、上から静かに降り散らされます。そしてその雪を喜んでいるかのような、鷺の生き生きとした表情。これも魅力的です。
金を大胆に使いながらも、不思議と素朴な雰囲気がある高山辰雄の「中秋」(1986)も面白い作品です。画面中央にぽっかりと浮かぶ大きな満月。全体を覆う金色は、その月明かりを意味しているのでしょうか。小さな川に一本の高木、そして人気のない一軒家。それらが全て音を立てないで静かに佇んでいます。そしてタッチはまるで点描画のように精緻です。また、モノトーンの、どこか版画のような味わいがあるのも、この作品の魅力の一つかと思いました。
山種美術館からは、降りしきる雪を踏みしめながら千鳥が淵方向へ歩きました。雪が降ると音がかき消されていきます。いつもに増して静寂に包まれたお堀にて、雪に埋もれた一輪の赤い花を見つけました。後二ヶ月もすれば、この界隈も白から華々しいピンク色へと変化することでしょう。私の好きな冬の終わりがそろそろ近づいている。そう思うと少し寂しくも感じた展覧会でした。
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