都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「宮廷のみやび」 東京国立博物館
東京国立博物館・平成館(台東区上野公園13-9)
「陽明文庫創立70周年記念特別展 宮廷のみやび - 近衛家1000の名宝 - 」
1/2-2/24

一度、三が日に初もうで展と合わせて拝見しましたが、先日、また改めて楽しんできました。古くは道長、頼通へと繋がる、かつての五摂家の筆頭、近衛氏所蔵の名品を俯瞰する展覧会です。
今回出品されている文物を一言で表すことは出来ません。現在、陽明文庫におさめられている品々は何と全20万点にも及ぶそうですが、ここ上野の平成館でも、選りすぐりの品、約200点あまりが一堂に公開されています。「御堂関白記」や歴代天皇の書、そして近世に登場した近衛家の二人の文化人、信尹(のぶただ。1565-1614)と家熙(いえひろ。1667-1736)らの書や絵画、それに伝世の刀や人形などの工芸品、さらには抱一の「四季花鳥図屏風」などと、たんに宮廷の生活を伝えるというにはあまりにも幅広い品が出ていました。その歴史を鑑みれば、かの大徳川展も超えるスケールかもしれません。

惹かれた作品を並べていくとキリがないので、ここでは上にも挙げた、信尹と家熙の二氏についてだけ触れたいと思います。「寛永の三筆」とも呼ばれた信尹の品では、何と言っても「和歌六義屏風」が圧倒的です。剛胆な書を六曲一双の画面に這わしたとも言える、全くをもってスケール感の壮大な作品ですが、そのうねる墨線の動きはもはや一種のコンテンポラリーのような趣きさえたたえています。また彼の屏風ではもう一点、琳派の絵師に金銀泥の下絵を描かせたともいう「源氏物語和歌色紙貼交屏風」も印象に残りました。眩しいほどに輝く白菊が土坡へ沿ってリズミカルに並び、そこへ快活かつ流麗な信尹の書の色紙が浮き上がるようにして配されています。迷いのない、見ていて清々しくなるほど風流に貫かれた作品です。

当時の宮廷文化の第一人者とも呼ばれている家熙では、まず彼の愛した表具類に見応えがありました。大きな蝶をあしらった「紅練緯地蝶模様縫箔」など、どこかエキゾチックで、また華々しい品が多いのも興味深いところです。そしてここでの白眉は、自身が詞書を、また絵を渡辺始興に描かせたという「春日権現霊験記絵巻」ではないでしょうか。藤原の氏神、春日明神の由来や霊験が隙のない描写で示されています。自身のルーツ、またはその自負を感じるような作品でした。

一昨年の、アートコレクション展(ホテルオークラ)でも見た、抱一の「四季花鳥図屏風」も出品されています。全体的に抱一一流の詩心よりも、どちらかと言えばいわゆる琳派の図像的な面白さが前に出ているのかもしれません。まるで置物のような鷺や、単色で平面的な燕子花の色彩、さらには霞に隠れているのか、下半分がまるで土に埋もれてしまっているような紫陽花、または窮屈に横へ伸びる水流など、どこか全体に自然でない、言ってしまえば画風にどこか硬さも見られる作品です。ただ少なくとも、みやびの生活を彩るにしてはこの上ない作であるのは間違いないでしょう。抱一では一番、きらびやかな装いを感じます。
通常は公開されていない陽明文庫の品々を見る、またとないチャンスです。今月24日まで開催されています。
「陽明文庫創立70周年記念特別展 宮廷のみやび - 近衛家1000の名宝 - 」
1/2-2/24

一度、三が日に初もうで展と合わせて拝見しましたが、先日、また改めて楽しんできました。古くは道長、頼通へと繋がる、かつての五摂家の筆頭、近衛氏所蔵の名品を俯瞰する展覧会です。
今回出品されている文物を一言で表すことは出来ません。現在、陽明文庫におさめられている品々は何と全20万点にも及ぶそうですが、ここ上野の平成館でも、選りすぐりの品、約200点あまりが一堂に公開されています。「御堂関白記」や歴代天皇の書、そして近世に登場した近衛家の二人の文化人、信尹(のぶただ。1565-1614)と家熙(いえひろ。1667-1736)らの書や絵画、それに伝世の刀や人形などの工芸品、さらには抱一の「四季花鳥図屏風」などと、たんに宮廷の生活を伝えるというにはあまりにも幅広い品が出ていました。その歴史を鑑みれば、かの大徳川展も超えるスケールかもしれません。

惹かれた作品を並べていくとキリがないので、ここでは上にも挙げた、信尹と家熙の二氏についてだけ触れたいと思います。「寛永の三筆」とも呼ばれた信尹の品では、何と言っても「和歌六義屏風」が圧倒的です。剛胆な書を六曲一双の画面に這わしたとも言える、全くをもってスケール感の壮大な作品ですが、そのうねる墨線の動きはもはや一種のコンテンポラリーのような趣きさえたたえています。また彼の屏風ではもう一点、琳派の絵師に金銀泥の下絵を描かせたともいう「源氏物語和歌色紙貼交屏風」も印象に残りました。眩しいほどに輝く白菊が土坡へ沿ってリズミカルに並び、そこへ快活かつ流麗な信尹の書の色紙が浮き上がるようにして配されています。迷いのない、見ていて清々しくなるほど風流に貫かれた作品です。

当時の宮廷文化の第一人者とも呼ばれている家熙では、まず彼の愛した表具類に見応えがありました。大きな蝶をあしらった「紅練緯地蝶模様縫箔」など、どこかエキゾチックで、また華々しい品が多いのも興味深いところです。そしてここでの白眉は、自身が詞書を、また絵を渡辺始興に描かせたという「春日権現霊験記絵巻」ではないでしょうか。藤原の氏神、春日明神の由来や霊験が隙のない描写で示されています。自身のルーツ、またはその自負を感じるような作品でした。

一昨年の、アートコレクション展(ホテルオークラ)でも見た、抱一の「四季花鳥図屏風」も出品されています。全体的に抱一一流の詩心よりも、どちらかと言えばいわゆる琳派の図像的な面白さが前に出ているのかもしれません。まるで置物のような鷺や、単色で平面的な燕子花の色彩、さらには霞に隠れているのか、下半分がまるで土に埋もれてしまっているような紫陽花、または窮屈に横へ伸びる水流など、どこか全体に自然でない、言ってしまえば画風にどこか硬さも見られる作品です。ただ少なくとも、みやびの生活を彩るにしてはこの上ない作であるのは間違いないでしょう。抱一では一番、きらびやかな装いを感じます。
通常は公開されていない陽明文庫の品々を見る、またとないチャンスです。今月24日まで開催されています。
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