「建築倉庫ミュージアム」 寺田倉庫

寺田倉庫
「建築倉庫ミュージアム」
6/18~



寺田倉庫で開催中の「建築倉庫ミュージアム」を見てきました。

1950年創業の倉庫会社「寺田倉庫」。その本社ビル内に、今年6月、日本では唯一の建築模型専門のミュージアムが誕生しました。

名付けて建築倉庫です。コンセプトは「模型を展示しながら保存する」。何も模型はこのミュージアムのために作られたわけではありません。

模型はいずれも建築家や建築事務所がデザインする際に活用したものです。通常はコンペなどの後、スペースの都合から捨てられてしまうこともありますが、建築倉庫にて保存。それを広く一般に公開しようと整備された施設でもあります。

撮影が可能でした。


「建築倉庫」会場風景

建築倉庫の広さは約450平方メートル。坪に換算すると約150坪です。ビルの1階、1室のみ。天井高が5.2メートルとかなりありました。面白いのは建築模型がいずれも展示台に載っていないことです。収蔵庫らしく白い棚の上に収められています。中には模型を入れるための箱でしょうか。段ボールなども積まれていました。


坂茂「ハノーバー国際博覧会日本館」 2000年 完成模型 1/100

建築模型の活用を提案したのは坂茂です。ゆえに坂の模型が目立っています。「ハノーバー国際博覧会日本館」はどうでしょうか。アーチ状のシルエットが美しい。アーチは坂の得意とする紙管で作られています。


坂茂「コンテナ多層仮設住宅」 2011年 完成模型 1/300

かねてより世界各地の災害支援活動に取り組む坂。その関連の建築模型も出ています。例えば「コンテナ多層住宅」です。時は2011年。言うまでもなく東日本大震災の被災者のために建設されました。


坂茂「紙の教会」 1995年 完成模型 1/50

ほか阪神大震災によって焼失した教会の再建プロジェクトこと「紙の教会」も目を引きます。これも紙管製です。現在は同じく地震の被害を受けた台湾に移築され、コミュニティーセンターとして利用されているそうです。


山本理顕「横須賀美術館」 2006年 1/200

坂に続いて目に付いたのは山本理顕でした。身近なところでは「横須賀美術館」です。開館は2007年。ちょうど東京湾を望む海岸の上に建てられました。海を前景にして山を後景にした立地は傾いています。その傾斜の地形をそのまま活かしています。


隈研吾「中国美術学院民芸博物館」 2015年 竣工模型、他 1/100

隈研吾も多数模型を出展しています。大胆なのは「中国美術学院民芸博物館」です。敷地は勾配。そこに平行四辺形を単位とする幾何学的な分割システムを採用しました。ジグザグに交差するフォルムは独特です。瓦屋根の連続する村のイメージも志向しているそうです。


隈研吾「スターバックスコーヒー 太宰府天満宮表参道店」 2011年 プレゼン模型 1/50

木組みの内装が話題となった「スターバックスコーヒー 太宰府天満宮表参道店」も隈の設計です。木組みはX字状に連なって空間を埋め尽くします。角材は全部で2000本使用しています。太宰府という土地に対して、隈が新たな建築の在り方を示した作品でもあります。


隈研吾「浅草文化観光センター」 2012年 展示模型 1/100

浅草の新たなランドマークとなりつつある浅草文化観光センターの模型もありました。手前がスケルトン状の雷門。交差点を挟み、左上に位置するのが観光センターです。敷地面積は326平方メートルと広くありません。そこに案内所や展示室を組み込んでいます。屋根の形状が独特です。五重塔のようでもあり、そうでないようにも見えます。変化のある斜めのラインが特徴的でした。


山本理顕「ザ・サークル チューリッヒ国際空港」 2019年 1/1000

模型のスケールは大小に様々です。スタディから竣工模型の如何も問いません。飛行場などの模型は2メートル近くにも及んでいます。


「建築倉庫」会場風景

収蔵庫だけあって、棚の下部、足元の位置にまで模型が置かれています。屈んで模型を見る必要がありました。


小嶋一浩+赤松佳珠子「流山市立おおたかの森小・中学校、おおたかの森センター、こども図書館」 2015年 基本設計終了時 1/200

小嶋一浩と赤松佳珠子による「流山おおたかの森小・中学校、おおたかの森センター、子ども図書館」も大掛かりです。植栽に囲まれた複合施設、学校にはあわせて1800名もの生徒や児童が通います。建物の周囲は植栽でしょうか。緑が目立ちました。太陽の動きや風の向きなど、採光や通風に配慮した設計でもあるそうです。


「建築倉庫」会場風景

同一の建築物の小型模型が複数に並ぶ棚も目を引きました。建築家の設計のプロセスの一端も伺いしれるのではないでしょうか。


「建築倉庫」会場風景

照明が抑えられ、一部にはさも夜景を前にしたような演出もされています。なお通路は狭いため、手荷物が模型に当たらないように注意する必要があります。


「建築倉庫」会場風景

模型は基本的に建築家らが倉庫に預けるという形をとっているそうです。全部で100ある棚にはまだ空きがありました。ひょっとすると今後も多くの模型が収められるのかもしれません。


「UNIQLO New York Fifth Avenue」 2011年 1/30

最後に会場の情報です。最寄りはりんかい線の天王洲アイル駅です。山手通りを西に向かって歩いておおよそ5分ほどです。JR線の品川駅からも港南口を経由して歩けますが、15分から20分ほどかかります。

同じく港南口より出ている都営バスが意外と便利です。品98系統「大田市場」行きに乗ると、約5分ほどで、寺田倉庫のほぼ目の前にあるバス停「新東海橋」に到着します。


寺田倉庫本社ビル

入場料は1000円。模型を出展したのは国内外で活動する日本人建築家、および設計事務所の約25組です。思ったより狭いスペースでしたが、所狭しと並ぶ建築模型に時間を忘れて見入ってしまいました。



寺田倉庫の建築模型ミュージアムは6月18日にオープンしました。

「建築倉庫ミュージアム」 寺田倉庫
会期:5月31日(火)~6月26日(日)
休館:月曜日。但し月曜が祝日の場合は翌火曜休。
時間:11:00~21:00 *入館は閉館の1時間前まで。
料金:一般1000円、高校生以下500円。
住所:品川区東品川2-6-10 寺田倉庫本社ビル1F
交通:東京高速臨海鉄道りんかい線天王洲アイル駅B出口徒歩4分。東京モノレール天王洲アイル駅 徒歩5分。JR線品川駅港南口より都バス品98系統「大田市場」行きに乗車、「新東海橋」下車すぐ。
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