「美の祝典3ー江戸絵画の華やぎ」 出光美術館

出光美術館
「開館50周年記念 美の祝典3ー江戸絵画の華やぎ」
6/17〜7/18



出光美術館で開催中の「美の祝典3ー江戸絵画の華やぎ」へ行ってきました。

開館50周年を記念したコレクション展こと「美の祝典」。全3回シリーズです。

既に会期は第1期のやまと絵、第2期の水墨を終え、最終の第3期目に突入。「江戸絵画の華やぎ」と題し、館蔵の江戸絵画が一堂に公開されています。


喜多川歌麿「更衣美人図」 江戸時代 重要文化財 出光美術館

冒頭は歌麿に北斎の肉筆です。歌麿の「更衣美人図」が美しい。女性が着物を脱ぐ姿を描いています。おそらくは真夏でしょう。帯を解き、やや袖を開けては、如何にも暑そうに扇子で風を送っています。緊張も緩んだのかもしれません。ため息をついているようにも見えます。藍ともグレーとも言える着物の表現も見事でした。筆に緩みはありません。

その後は桃山から江戸期の屏風でした。4点の揃い踏み。まず横に並ぶのは「祇園祭礼図屏風」と「洛中洛外図屏風」です。ともに京都市中の景観や賑わいを表しています。

うち「洛中洛外図屏風」が面白い。右に東山、左中央に二条城を配置したパノラマですが、右隻の右上に伏見城が描かれているのが特徴です。二条城に負けじと天守閣が堂々とそびえています。町家の屋根に目が留まりました。上に重石でしょうか。石が載っています。市中では喧嘩も多かったのかもしれません。男たちが刀を抜いて向き合う姿も見て取れます。一人、外国人でしょうか。傘を従えて歩く大きな男の姿が目にとまりました。

「南蛮屏風」の舞台は港です。もちろん来航するのは南蛮船です。ちょうど小舟を出して荷物を陸揚げする様子を描いています。外国人は皆、背が高い。その大きさに江戸時代の人々はさぞかし驚いたのではないでしょうか。右に見えるお堂は教会です。何名かの宣教師がいます。保存状態も良好です。細部の着色も鮮やかでした。

「江戸名所図屏風」に驚きました。と言うのも、どこも過剰なまでに人で溢れ返っているからです。押し合いへし合いと人がうごめいています。一体、何名いるのでしょうか。右隻は寛永寺から日本橋、左隻は江戸城から芝浦の景色が広がっています。時は寛永6年です。何でも解説によれば寛永寺の池にペリカンが現れた記録があり、実際にそれが描かれているから分かったそうです。確かに池のほとりで一羽の鳥が羽を休めていました。

英一蝶の「四季日待図巻」に魅せられました。元は神事であった日待。元禄の頃には夜通しで宴会や芝居に講じるお祭りとして浸透していたそうです。さすがは一蝶、筆が流麗です。祭りを楽しむ人々を生き生きと表しています。飲めや歌えのどんちゃん騒ぎは今も江戸時代もさほど変わらないのかもしれません。囲碁に博打をしている人もいます。ちなみに本作は一蝶が流刑先の三宅島で制作しました。とするもお祭りの様子も彼の記憶に過ぎません。何を思って描いたのでしょうか。

琳派の優品も目立ちます。光琳の「禊図屏風」はどうでしょうか。面白いのは構図です。川辺にいる一人の男。モデルは業平です。ほぼ背中を向けて座っています。川は大きく弧を描いて縦に流れています。小山も丸みを帯びています。図像として川の弧と呼応しているように見えなくもありません。

抱一の大作屏風は3点です。うちより魅惑的なのが「紅白梅図屏風」でした。得意の銀地に紅白の梅を表した屏風絵です。枝振りも力強い紅梅に対して白梅は可憐。対比的な姿をしています。一面の銀世界は月夜を示しているのでしょう。ふと雪の降る光景を連想しました。淡く白い光とひんやりした空気感。銀の名手こと抱一ならではの抒情的な作品でもあります。


酒井抱一「風神雷神図屏風」 江戸時代 出光美術館

ちなみに抱一はほかに「風神雷神図屏風」と「八ツ橋図屏風」も出ています。久々に3屏風を揃って見たような気がしました。

ラストは今秋にサントリー美術館での回顧展の控えた其一です。作品は2点。「四季花木図屏風」と「秋草図」でした。

より小さな「秋草図」が殊更に魅力的でした。元は戸襖絵です。幅は25センチもありません。まだ若い30代の頃の作品ゆえか、流麗な秋草の描写は師の抱一を連想させる面もあります。


「伴大納言絵巻(下巻部分)」 平安時代 国宝 出光美術館

3期間に分けて展示中の「伴大納言絵巻」は下巻の部分が開いていました。私も結局3期、全ての展示を追いかけましたが、やはり人気の江戸絵画ゆえか、1、2期の時よりは心なしか混雑しているように思えました。とは言え、「伴大納言絵巻」も行列なく、スムーズに観覧可能です。じっくり見られました。

「美の祝典2ー水墨の壮美」 出光美術館(5/13〜6/12)
「美の祝典1ーやまと絵の四季」 出光美術館(4/9〜5/8)

またリストにはないものの、蒔絵など、工芸にも佳い作品が少なくありません。3期揃って出光の誇る日本美術コレクションを存分に堪能することが出来ました。

「江戸絵画入門ー驚くべき奇才たちの時代/別冊太陽/平凡社」

7月18日まで開催されています。

「開館50周年記念 美の祝典3ー江戸絵画の華やぎ」 出光美術館
会期:6月17日(金)~7月18日(月)
休館:月曜日。
時間:10:00~18:00
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1000(800)円、高・大生700(500)円、中学生以下無料(但し保護者の同伴が必要。)
 *( )内は20名以上の団体料金。
住所:千代田区丸の内3-1-1 帝劇ビル9階
交通:東京メトロ有楽町線有楽町駅、都営三田線日比谷駅B3出口より徒歩3分。東京メトロ日比谷線・千代田線日比谷駅から地下連絡通路を経由しB3出口より徒歩3分。JR線有楽町駅国際フォーラム口より徒歩5分。
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