「坂茂:プロジェクツ・イン・プログレス」 TOTOギャラリー・間

TOTOギャラリー・間
「坂茂:プロジェクツ・イン・プログレス」 
4/19~7/16



世界的建築家、坂茂の最新のプロジェクトを紹介する展覧会が、TOTOギャラリー・間にて行われています。

まず目に飛び込んでくるのが座席です。素材は坂が建築構造材としても使用する紙管でした。


ラ・セーヌ・ミュジカル「紙管椅子」 2017年、フランス、パリ近郊 Scale:1/1

この紙管の椅子こそ、今年の4月にオープンした「ラ・セーヌ・ミュジカル」の音楽ホール用の座席です。座面と背もたれが紙管です。赤い部分がクッションでした。やや堅めです。実際に座ってることも可能でした。


「ラ・セーヌ・ミュジカル」 2017年、フランス、パリ近郊 Scale:1/150

「ラ・セーヌ・ミュジカル」が建てられたのはパリ近郊。セーヌ川に浮かぶセガン島です。4000席の多目的ホールと1150席のクラシック音楽ホールのほか、小ホール、コーラス学校などが配置されています。つまり音楽の複合施設です。


「ラ・セーヌ・ミュジカル」 2017年、フランス、パリ近郊 Scale:1/150

島には長らくルノーの工場がありました。それが1992年に閉鎖。土地をピノー財団が取得します。まずは安藤忠雄の設計で美術館が計画されました。しかしながら中止となります。のちに全体のマスタープランをジャン・ヌーベルが担当し、財団によって音楽施設部分のコンペが行われました。そして坂の事務所が当選しました。意外にも同氏初の音楽ホールです。コンペから完成まで約6年かかりました。


「ラ・セーヌ・ミュジカル」 2017年、フランス、パリ近郊 Scale:1/150

特徴的なのが玉子型のクラシック音楽ホールです。ファサードに木造グリッドを採用。さらに太陽の向きに合わせて移動するソーラーパネルが設置されています。ホールの表面はモザイクタイルです。光の当たり方によって緑から赤へと玉虫色に変化します。


「ラ・セール・ミュジカル ソーラーパネル」 2017年、フランス、パリ近郊 Scale:1/1

モザイクタイルとソーラパネルも展示。いずれも実寸大です。内装パネルシステムもあわせて紹介されていました。


「ラ・セーヌ・ミュジカル」 2017年、フランス、パリ近郊 Scale:1/150

ホールの吸音装置にも紙管のパネルを採用しています。さらに壁面パネルでも音の反響を調整することが可能です。波板の組み方を変えることで音が変化します。


「ラ・セール・ミュジカル 定点撮影映像」 2017年、フランス、パリ近郊

「ラ・セール・ミュジカル」の建築プロセスを映像で捉えています。先の座席に座って鑑賞することも出来ました。この「ラ・セーヌ・ミュジカル」のプロジェクトが一つの主役です。断面模型や映像を通して、建物の構造を分かりやすい形で知ることが出来ました。

一つ上の階へと進みましょう。ここでは坂が現在、進めているプロジェクトを紹介。主に建築模型が展示されています。


「台南市美術館」 2018年、台湾、台南 Scale:1/200

まずは「台南市美術館」です。既存の地下駐車場の構造を補強し、その上に美術館を建設するそうです。2018年に竣工が予定されています。


「台南市美術館 フラクタル屋根 モックアップ」 2018年、台湾、台南 Scale:1/10

建築と公園の機能を一体化させたようなプランを提示しているのも特徴です。また台南は日射が強い。よって日陰を作るために、大きなフラクタルの屋根を作り上げました。


「富士山世界遺産センター」 2017年、静岡県富士宮市

「富士山世界遺産センター」も面白いのではないでしょうか。建物の構造が「逆さ富士」の形をしています。さらに周辺には水盤を設置し、逆さ富士を水面に映す仕掛けを行っています。また背後の木格子のモックアップは実寸大です。そのスケールが伝わってきました。


「由布市ツーリストインフォメーションセンター」 2018年、大分県由布市 Scale:1/50

湯布院の観光情報発信施設として計画されているのが「由布市ツーリストインフォメーションセンター」です。建物は地上2階建て。由布院駅の隣に位置します。観光案内所のみならず、カフェを併設した図書スペース、展望デッキなども整備されます。


「由布市ツーリストインフォメーションセンター 柱 モックアップ」 2018年、大分県由布市 Scale:1/3

その3分の1スケールの柱のモックアップも目立っていました。全体的に模型とモックアップ中心の展示です。図面などはありません。


「スイス時計会社本社」 2018年、スイス、ビール/ビエンヌ Scale:1/300

「スイス時計会社本社」では新本社と生産施設、そしてミュージアムなど3棟を設計。いずれも木造です。特にミュージアム棟はプロティから上の階が完全に木造です。

現地のビール/ビエンヌ市にはスイスを代表する木構造専門の大学があり、木加工技術で「世界をリード」(解説より)しているそうです。よって大規模プロジェクトにおいても木が採用されました。


「熊本木造仮設住宅 構造フレームモックアップ」 2016年、熊本県御船町 Scale:1/1

中庭では坂が精力的に取り組む災害復興支援プロジェクトについても言及があります。熊本地震の木造仮設住宅の構造フレームや、ネパール地震の復興住宅の壁ユニットなどが展示されていました。


ちなみに熊本の仮設住宅では、隣室の間に作り付けの収納を設置したそうです。そうすることで住居間の遮音性が幾分高まります。仮設は通常、音が筒抜けです。避難生活とはいえども、住民の生活やプライバシーに配慮した坂の意図も伺えるのではないでしょうか。



7月16日まで開催されています。

「坂茂:プロジェクツ・イン・プログレス」 TOTOギャラリー・間
会期:4月19日(水)~7月16日(日)
休館:月曜日。5月2日(火)~5日(金・祝)。但し4月29日(土・祝)は開館。
時間:11:00~18:00
料金:無料。
住所:港区南青山1-24-3 TOTO乃木坂ビル3F
交通:東京メトロ千代田線乃木坂駅3番出口徒歩1分。都営大江戸線・東京メトロ日比谷線六本木駅7番出口徒歩6分。
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