都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「カールステン・ニコライ:パララックス」 市原湖畔美術館
市原湖畔美術館
「カールステン・ニコライ:Parallax パララックス」
3/18〜5/14

「アルヴァ・ノト」の名義で電子音楽も制作する現代アーティスト、カールステン・ニコライの個展が、市原湖畔美術館で開催されています。
タイトルの「パララックス」の語源は、古代ギリシャ語の「変更・変換」です。訳せば「視差」。「2つの異なる点から見ることで対象が異なって見える視覚効果」(解説より)を意味しています。
どのような視覚効果が待ち構えているのでしょうか。まず1つ目の作品は「ユニディスプレイ」と題された映像のインスタレーションでした。

カールステン・ニコライ「ユニディスプレイ」 2012/2017年
場内は暗室です。モノクロームの映像が映し出されています。イメージは常に素早く変化。一定ではありません。スクリーンは曲面です。カーブを描いています。プロジェクションの両脇にガラスが設置されていました。その効果によって映像は前後へ大きく広がっています。まるで無限の空間を前にしているかのようでした。

カールステン・ニコライ「ユニディスプレイ」 2012/2017年
パターンの伸び縮みは自在です。時に直線なのか、曲線なのかも判然としません。線が伸び、円が楕円となり、球へと変わります。振幅は大きい。空間自体が伸縮しているかのようでした。

カールステン・ニコライ「ユニディスプレイ」 2012/2017年
結論からすると映像は全部で24種類あります。一度、全てがサムネイル的に表示され、そこから瞬時に個別のパターンが拡大。プロジェクション全体へと広がります。その繰り返しです。ただしパターンは思いの外に複雑です。全ての投影されるまでには約40分ほどかかりました。

カールステン・ニコライ「ユニディスプレイ」 2012/2017年
揺らぎ、錯覚、点滅に残像効果など、視覚を大きく揺さぶるのも特徴です。目まぐるしく変化し、歪み、時に回転する映像を前にすると、足元がすくむ感覚さえ陥りました。中には酔ってしまう方もおられるかもしれません。
映像には音楽が付いています。椅子に腰掛けると音の振動が伝わりました。作品は視覚、聴覚はおろか、体の中にも入り込んできます。全身で受け止めなくてはなりません。
なお驚くことに「ユニディスプレイ」は日本庭園にインスピレーションを得ているそうです。ニコライは横長のスクリーンが寺の内部から庭園を見る形に近いと述べています。さも寺の縁側から日本庭園を眺めるかのように鑑賞するのも面白いかもしれません。

カールステン・ニコライ「フューチャー パスト パーフェクト(積雲)」 2013年
次いでは映像と写真です。雲に因むのが「フューチャー パスト パーフェクト(積雲)」と「ヴォルケン(雲)」でした。前者は7分のショートフィルム。雲の変容を映像に加工しています。飛行機上から雲を撮影。綿雲とも呼ばれる積雲のみを捉えています。雲海はまるで綿飴のように広がっていました。

カールステン・ニコライ「ヴォルケン(雲)」 2013年
一方の「ヴォルケン」は写真です。やはり上空より雲を撮影。俯瞰した構図で写しています。雲はさざ波のように波打っていました。幾分、メタリックな質感に見えるのも面白いところです。遠目では雲と分からないかもしれません。

カールステン・ニコライ「パーティクル・ノイズ」 2013/2017年
なにやらノイズが聞こえて来ました。「パーティクル・ノイズ」です。白いカーテンの中に複数のスピーカーが設置されています。ジーと音が響いたと思いきや、突如、何かが破裂したような強い音が鳴り出しました。そのタイミングはランダムです。音の高低や場所も変化します。一体、どのような仕組みで音を出しているのでしょうか。

カールステン・ニコライ「パーティクル・ノイズ」 2013/2017年
答えは計測機にありました。ガイガーカウンターです。言わずと知れた放射線の計測器です。2台設置。展示室内の放射線量を計測しています。

カールステン・ニコライ「パーティクル・ノイズ」 2013/2017年
その検出した信号を音に変化させているわけです。通常、目に見えない自然放射線を音に転換して、いわば可視化ならぬ、可聴化する試みをしています。

カールステン・ニコライ「フェーズ」 2006/2017年
ほかは光の変調をテーマとした「フェーズ」の映像作品も展示。出展数自体は7点と多くはありません。しかしカールステン・ニコライの作品は、人間の空間に対する知覚、ないし認識を変化させる力を持っています。新鮮な視覚、聴覚体験をすることが出来ました。
この日は「いちはらアート×ミックス2017」にあわせて鑑賞してきました。アート×ミックスのパスポートを購入すると500円で観覧出来ます。(通常は1000円)
5月14日まで開催されています。
「カールステン・ニコライ:Parallax パララックス」 市原湖畔美術館(@LSM_ICHIHARA)
会期:3月18日(土)〜5月14日(日)
休館:3/21(火)、3/27(月)、4/3(月)。
時間:10:00~17:00
*入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1000(800)円、大学・高校生800(600)円、中学生以下無料。
*「いちはらアート×ミックス2017」のパスポートを提示すると500円で入館可。
住所:千葉県市原市不入75-1
交通:JR線五井駅乗り換え小湊鉄道高滝駅より徒歩20分。またはバスで4分。圏央道「市原鶴舞 IC 」より約5分。無料駐車場あり。
「カールステン・ニコライ:Parallax パララックス」
3/18〜5/14

「アルヴァ・ノト」の名義で電子音楽も制作する現代アーティスト、カールステン・ニコライの個展が、市原湖畔美術館で開催されています。
タイトルの「パララックス」の語源は、古代ギリシャ語の「変更・変換」です。訳せば「視差」。「2つの異なる点から見ることで対象が異なって見える視覚効果」(解説より)を意味しています。
どのような視覚効果が待ち構えているのでしょうか。まず1つ目の作品は「ユニディスプレイ」と題された映像のインスタレーションでした。

カールステン・ニコライ「ユニディスプレイ」 2012/2017年
場内は暗室です。モノクロームの映像が映し出されています。イメージは常に素早く変化。一定ではありません。スクリーンは曲面です。カーブを描いています。プロジェクションの両脇にガラスが設置されていました。その効果によって映像は前後へ大きく広がっています。まるで無限の空間を前にしているかのようでした。

カールステン・ニコライ「ユニディスプレイ」 2012/2017年
パターンの伸び縮みは自在です。時に直線なのか、曲線なのかも判然としません。線が伸び、円が楕円となり、球へと変わります。振幅は大きい。空間自体が伸縮しているかのようでした。

カールステン・ニコライ「ユニディスプレイ」 2012/2017年
結論からすると映像は全部で24種類あります。一度、全てがサムネイル的に表示され、そこから瞬時に個別のパターンが拡大。プロジェクション全体へと広がります。その繰り返しです。ただしパターンは思いの外に複雑です。全ての投影されるまでには約40分ほどかかりました。

カールステン・ニコライ「ユニディスプレイ」 2012/2017年
揺らぎ、錯覚、点滅に残像効果など、視覚を大きく揺さぶるのも特徴です。目まぐるしく変化し、歪み、時に回転する映像を前にすると、足元がすくむ感覚さえ陥りました。中には酔ってしまう方もおられるかもしれません。
映像には音楽が付いています。椅子に腰掛けると音の振動が伝わりました。作品は視覚、聴覚はおろか、体の中にも入り込んできます。全身で受け止めなくてはなりません。
なお驚くことに「ユニディスプレイ」は日本庭園にインスピレーションを得ているそうです。ニコライは横長のスクリーンが寺の内部から庭園を見る形に近いと述べています。さも寺の縁側から日本庭園を眺めるかのように鑑賞するのも面白いかもしれません。

カールステン・ニコライ「フューチャー パスト パーフェクト(積雲)」 2013年
次いでは映像と写真です。雲に因むのが「フューチャー パスト パーフェクト(積雲)」と「ヴォルケン(雲)」でした。前者は7分のショートフィルム。雲の変容を映像に加工しています。飛行機上から雲を撮影。綿雲とも呼ばれる積雲のみを捉えています。雲海はまるで綿飴のように広がっていました。

カールステン・ニコライ「ヴォルケン(雲)」 2013年
一方の「ヴォルケン」は写真です。やはり上空より雲を撮影。俯瞰した構図で写しています。雲はさざ波のように波打っていました。幾分、メタリックな質感に見えるのも面白いところです。遠目では雲と分からないかもしれません。

カールステン・ニコライ「パーティクル・ノイズ」 2013/2017年
なにやらノイズが聞こえて来ました。「パーティクル・ノイズ」です。白いカーテンの中に複数のスピーカーが設置されています。ジーと音が響いたと思いきや、突如、何かが破裂したような強い音が鳴り出しました。そのタイミングはランダムです。音の高低や場所も変化します。一体、どのような仕組みで音を出しているのでしょうか。

カールステン・ニコライ「パーティクル・ノイズ」 2013/2017年
答えは計測機にありました。ガイガーカウンターです。言わずと知れた放射線の計測器です。2台設置。展示室内の放射線量を計測しています。

カールステン・ニコライ「パーティクル・ノイズ」 2013/2017年
その検出した信号を音に変化させているわけです。通常、目に見えない自然放射線を音に転換して、いわば可視化ならぬ、可聴化する試みをしています。

カールステン・ニコライ「フェーズ」 2006/2017年
ほかは光の変調をテーマとした「フェーズ」の映像作品も展示。出展数自体は7点と多くはありません。しかしカールステン・ニコライの作品は、人間の空間に対する知覚、ないし認識を変化させる力を持っています。新鮮な視覚、聴覚体験をすることが出来ました。
3月18日から市原湖畔美術館でカールステン・ニコライの個展『パララックス』。新作《ユニディスプレイ》は24種類の映像が展示室いっぱいに広がります。錯覚や残像などがテーマ。見応えあります!#carstennicolaihttps://t.co/PVhFLKIC42 pic.twitter.com/26QDFGQ9Vd
— Casa BRUTUS (@CasaBRUTUS) 2017年3月17日
この日は「いちはらアート×ミックス2017」にあわせて鑑賞してきました。アート×ミックスのパスポートを購入すると500円で観覧出来ます。(通常は1000円)
5月14日まで開催されています。
「カールステン・ニコライ:Parallax パララックス」 市原湖畔美術館(@LSM_ICHIHARA)
会期:3月18日(土)〜5月14日(日)
休館:3/21(火)、3/27(月)、4/3(月)。
時間:10:00~17:00
*入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1000(800)円、大学・高校生800(600)円、中学生以下無料。
*「いちはらアート×ミックス2017」のパスポートを提示すると500円で入館可。
住所:千葉県市原市不入75-1
交通:JR線五井駅乗り換え小湊鉄道高滝駅より徒歩20分。またはバスで4分。圏央道「市原鶴舞 IC 」より約5分。無料駐車場あり。
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