都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
豊田市美術館へ行ってきました
1995年に開館した、豊田市美術館を設計したのは、建築家の谷口吉生です。

豊田市美術館
http://www.museum.toyota.aichi.jp
谷口の美術館建築として有名なのは、東京国立博物館の法隆寺宝物館や、京都国立博物館の平成知新館などです。私は特に法隆寺宝物館が好きで、同館を見て以来、いつか同じ谷口の建てた豊田市美術館を見たいと思っていました。
ちょうど奈良美智展が開催中です。しかも同展は巡回がありません。これはチャンスとばかりに、豊田市美術館へ行くことにしました。

最寄り駅は豊田市の中心に位置する名鉄豊田市駅、ないし愛知環状鉄道新豊田駅でした。駅から南へ歩き、飯田街道を超え、急な坂をあがると入口が見えてきます。途中、殆ど歩いている人を見かけなかったので、もしや空いているのかと思いましたが、多くの方はマイカーで来られているようでした。

駅側の入口は建物の裏手に当たります。まずは正面入口方向へまわることにしました。すると想像以上に広大な庭が開けていました。
美術館の庭をデザインしたのは、アメリカ人のピーター・ウォーカーです。谷口とは丸亀駅前広場にて協働し、ニューヨークの911メモリアルを手がけるなど、世界各地でランドスケープデザイナーとして活動しています。

庭は2段式で、「円と四角、幾何学と不定形の対立する要素」(解説より)によって構成されています。2段式とは2層構造です。正面入口前が1段目、そして美術館の2階に面したスペースが2段目に当たります。(写真の位置は1段目)実のところ初めは2段構成とは分かりませんでした。

その1段目で特徴的なのが芝生と砂利の市松模様です。その脇を長い石畳が伸びています。さらにソル・ルウィットやリチャード・セラの彫刻が配置されていました。建物同様、一見、シンプルな造りに思えるかもしれませんが、見る方向、立ち位置によって、景色はかなり変化します。

1段目の庭を歩いたあとは、一度、館内に戻りました。人気の奈良さんの個展だけあり、特にファミリーで賑わっていました。

1階にはエントランスホール、ギャラリー、ミュージアムショップのほか、3つの展示室とギャラリーがあります。2階には2つの展示室と、漆芸家の高橋節郎の作品を展示する高橋節郎館があり、3階には3つの展示室が続くという構成でした。

館内は清潔感のある白でほぼ統一されています。外光を取り込んだ吹き抜けには開放感がありました。大小に様々な展示室が連続している上、明暗にも変化があるからか、進むたびに常に異なる景色が開けてきます。また展示室通路から豊田の街並みも見渡せました。これほど感覚を随所で刺激する谷口建築を体験したのは初めてでした。

2階入口外に広がるのが彫刻テラスでした。ここで展開するのが、ダニエル・ビュランの「色の浮遊/3つの破裂した小屋」です。美術館の建築的特徴を強調すべく構想されたそうですが、鏡、ないし黄色や青色を配したオブジェは、確かに建物や空間を際立たせていました。

ビュレンの色に変化した空間を抜けると、一転して物静かな空間が現れました。高橋節郎館です。漆芸家の高橋は、昭和59年に豊田で開かれた展覧会を切っ掛けに、同市へ多くの作品を寄贈しました。それを公開するための施設として建てられました。なお同館内は常設に相当するため、作品と展示室の撮影も可能でした。

館内は2層構造で、3つの展示室が続いています。漆芸品のみかと思いきや、高橋の描いた墨彩画や漆版画も展示されていました。

グランドピアノやハープなどの楽器も目を引きます。これも高橋が装飾をなした作品だそうです。艶やかでした。

休憩スペースのガラス越しには金子潤のオブジェも見えます。ともかく目に入る光景がいちいち美しい。私の拙い写真では伝わりませんが、ため息がもれるほどでした。
彫刻テラス、及び高橋館の前に開けるのが、庭の2段部分でした。うちかなりのスペースを占めるのが人工池でした。

1段目の市松模様の庭と同様、池は不定形で、直線と曲線が連続する構造になっています。水面には建物が緩やかに映り込み、垂直線を強調したファサードを引き立てていました。この池越しの光景が外観上、最も美しく見えるかもしれません。

池を抜けると木立の中を和風の建物が現れました。茶室の「童子苑」です。木造の数寄屋造りで、谷口が設計しました。その名はかつて一帯が童子山と呼ばれていたことに由来するそうです。

「童子苑」の前の庭にまた趣があります。植栽で遮られているため、美術館の姿は伺えません。独立した和風の庭園で、美術館側とは一変した景色が広がっていました。

苑内では立札席茶会として、テーブルと椅子でお茶をいただくことも出来ます。呈茶料金は一服350円で、お茶に和菓子が付いていました。美術館の建物からは少し離れているからか、茶室は空いていて、静かな環境でお茶を味わえました。

もともと美術館の敷地は豊田を治めていた挙母藩の居城があったそうです。小高い丘は一体を支配するのに都合が良かったのでしょうか。現在も当時の石垣が残り、隅櫓も復元されています。また別の城にあった書院の「又日亭(ゆうじつてい)」も移築されました。

建物が良いと噂には聞いていましたが、率直なところ、これほど素晴らしいとは思いませんでした。暑い夏の1日でしたが、建物内外を何度か行き来しては楽しみました。
「豊田市美術館」(@toyotashibi)
休館:月曜日。
*但し祝日にあたる場合は開館。ほか臨時休館日あり。
時間:10:00~17:30
*入館は閉館の30分前まで。
料金:一般300(250)円、高校・大学生200(150)円、中学生以下無料。
*常設展示観覧料。高橋節郎館も観覧可。企画展は別途必要。
*( )内は20名以上の団体料金。
住所:愛知県豊田市小坂本町8-5-1
交通:名鉄線豊田市駅、愛知環状鉄道新豊田駅より徒歩15分。

豊田市美術館
http://www.museum.toyota.aichi.jp
谷口の美術館建築として有名なのは、東京国立博物館の法隆寺宝物館や、京都国立博物館の平成知新館などです。私は特に法隆寺宝物館が好きで、同館を見て以来、いつか同じ谷口の建てた豊田市美術館を見たいと思っていました。
ちょうど奈良美智展が開催中です。しかも同展は巡回がありません。これはチャンスとばかりに、豊田市美術館へ行くことにしました。

最寄り駅は豊田市の中心に位置する名鉄豊田市駅、ないし愛知環状鉄道新豊田駅でした。駅から南へ歩き、飯田街道を超え、急な坂をあがると入口が見えてきます。途中、殆ど歩いている人を見かけなかったので、もしや空いているのかと思いましたが、多くの方はマイカーで来られているようでした。

駅側の入口は建物の裏手に当たります。まずは正面入口方向へまわることにしました。すると想像以上に広大な庭が開けていました。
美術館の庭をデザインしたのは、アメリカ人のピーター・ウォーカーです。谷口とは丸亀駅前広場にて協働し、ニューヨークの911メモリアルを手がけるなど、世界各地でランドスケープデザイナーとして活動しています。

庭は2段式で、「円と四角、幾何学と不定形の対立する要素」(解説より)によって構成されています。2段式とは2層構造です。正面入口前が1段目、そして美術館の2階に面したスペースが2段目に当たります。(写真の位置は1段目)実のところ初めは2段構成とは分かりませんでした。

その1段目で特徴的なのが芝生と砂利の市松模様です。その脇を長い石畳が伸びています。さらにソル・ルウィットやリチャード・セラの彫刻が配置されていました。建物同様、一見、シンプルな造りに思えるかもしれませんが、見る方向、立ち位置によって、景色はかなり変化します。

1段目の庭を歩いたあとは、一度、館内に戻りました。人気の奈良さんの個展だけあり、特にファミリーで賑わっていました。

1階にはエントランスホール、ギャラリー、ミュージアムショップのほか、3つの展示室とギャラリーがあります。2階には2つの展示室と、漆芸家の高橋節郎の作品を展示する高橋節郎館があり、3階には3つの展示室が続くという構成でした。

館内は清潔感のある白でほぼ統一されています。外光を取り込んだ吹き抜けには開放感がありました。大小に様々な展示室が連続している上、明暗にも変化があるからか、進むたびに常に異なる景色が開けてきます。また展示室通路から豊田の街並みも見渡せました。これほど感覚を随所で刺激する谷口建築を体験したのは初めてでした。

2階入口外に広がるのが彫刻テラスでした。ここで展開するのが、ダニエル・ビュランの「色の浮遊/3つの破裂した小屋」です。美術館の建築的特徴を強調すべく構想されたそうですが、鏡、ないし黄色や青色を配したオブジェは、確かに建物や空間を際立たせていました。

ビュレンの色に変化した空間を抜けると、一転して物静かな空間が現れました。高橋節郎館です。漆芸家の高橋は、昭和59年に豊田で開かれた展覧会を切っ掛けに、同市へ多くの作品を寄贈しました。それを公開するための施設として建てられました。なお同館内は常設に相当するため、作品と展示室の撮影も可能でした。

館内は2層構造で、3つの展示室が続いています。漆芸品のみかと思いきや、高橋の描いた墨彩画や漆版画も展示されていました。

グランドピアノやハープなどの楽器も目を引きます。これも高橋が装飾をなした作品だそうです。艶やかでした。

休憩スペースのガラス越しには金子潤のオブジェも見えます。ともかく目に入る光景がいちいち美しい。私の拙い写真では伝わりませんが、ため息がもれるほどでした。
彫刻テラス、及び高橋館の前に開けるのが、庭の2段部分でした。うちかなりのスペースを占めるのが人工池でした。

1段目の市松模様の庭と同様、池は不定形で、直線と曲線が連続する構造になっています。水面には建物が緩やかに映り込み、垂直線を強調したファサードを引き立てていました。この池越しの光景が外観上、最も美しく見えるかもしれません。

池を抜けると木立の中を和風の建物が現れました。茶室の「童子苑」です。木造の数寄屋造りで、谷口が設計しました。その名はかつて一帯が童子山と呼ばれていたことに由来するそうです。

「童子苑」の前の庭にまた趣があります。植栽で遮られているため、美術館の姿は伺えません。独立した和風の庭園で、美術館側とは一変した景色が広がっていました。

苑内では立札席茶会として、テーブルと椅子でお茶をいただくことも出来ます。呈茶料金は一服350円で、お茶に和菓子が付いていました。美術館の建物からは少し離れているからか、茶室は空いていて、静かな環境でお茶を味わえました。

もともと美術館の敷地は豊田を治めていた挙母藩の居城があったそうです。小高い丘は一体を支配するのに都合が良かったのでしょうか。現在も当時の石垣が残り、隅櫓も復元されています。また別の城にあった書院の「又日亭(ゆうじつてい)」も移築されました。

建物が良いと噂には聞いていましたが、率直なところ、これほど素晴らしいとは思いませんでした。暑い夏の1日でしたが、建物内外を何度か行き来しては楽しみました。
「豊田市美術館」(@toyotashibi)
休館:月曜日。
*但し祝日にあたる場合は開館。ほか臨時休館日あり。
時間:10:00~17:30
*入館は閉館の30分前まで。
料金:一般300(250)円、高校・大学生200(150)円、中学生以下無料。
*常設展示観覧料。高橋節郎館も観覧可。企画展は別途必要。
*( )内は20名以上の団体料金。
住所:愛知県豊田市小坂本町8-5-1
交通:名鉄線豊田市駅、愛知環状鉄道新豊田駅より徒歩15分。
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