2017年9月に見たい展覧会

8月の東京の日照時間は、約40年ぶりに史上最短の記録を更新しました。確かに何かと雨の日が続き、時に夏とは思えないような肌寒いこともありました。そのため野外のイベントは苦戦したそうですが、屋内の科学館などは、例年よりも集客した施設も多かったそうです。一概に括れませんが、美術館はどうだったのでしょうか。

先月で印象的だったのは、一にも二にも谷口建築が素晴らしかった豊田市美術館でした。もちろん開催中の「奈良美智展」も充実していました。さらに旧給食センターという独特の空間を巧みに利用した「引込線」や、5年ぶりに行われたサントリー美術館の「おもしろびじゅつワンダーランド」の取り組みにも感心させられました。一方で、神奈川県立近代美術館葉山館の「萬鉄五郎展」に行く機会を逸してしまったのは心残りでした。(萬鉄五郎展は9月3日まで開催。)

9月は多くの展覧会が始動します。今月中に見たい展覧会をリストアップしてみました。

展覧会

・「柳宗悦と『手仕事の日本』を旅する」 日本橋高島屋(~9/11)
・「荒木経惟 センチメンタルな旅 1971ー2017ー」 東京都写真美術館(~9/24)
・「畠中光享コレクション インドに咲く染と織の華」 渋谷区立松濤美術館(~9/24)
・「引込線2017」 旧所沢市立第2学校給食センター(~9/24)
・「月岡芳年 月百姿」 太田記念美術館(9/1~9/24)
・「館蔵品展 江戸の花鳥画」 板橋区立美術館(9/2~10/9)
・「駒井哲郎展」 埼玉県立近代美術館(9/12~10/9)
・「池田学The Penー凝縮の宇宙」 日本橋高島屋(9/27~10/9)
・「浅井忠の京都遺産ー京都工芸繊維大学美術工芸コレクション」 泉屋博古館分館(9/9~10/13)
・「国宝 鶴岡八幡宮古神宝」 鎌倉国宝館(9/1~10/15)
・「上村松園ー美人画の精華」 山種美術館(8/29~10/22)
・「ほとけを支えるー蓮華・霊獣・天部・邪鬼」 根津美術館(9/14~10/22)
・「ボストン美術館浮世絵名品展 鈴木春信」 千葉市美術館(9/6~10/23)
・「馬の美術150選ー山口晃『厩圖2016』完成披露」 馬の博物館(9/9~10/29)
・「黄金町バザール2017」 黄金町エリアマネジメントセンター(~11/5)
・「マックス・クリンガー版画展」 神奈川県立近代美術館葉山館(9/16~11/5)
・「天下を治めた絵師 狩野元信」 サントリー美術館(9/16~11/5)
・「江戸の琳派芸術」 出光美術館(9/16~11/5)
・「生誕120年 東郷青児展 抒情と美のひみつ」 東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館(9/16~11/12)
・「丸木スマ展ーおばあちゃん画家の夢」 丸木美術館(9/9~11/18)
・「フランス人間国宝展」 東京国立博物館(9/12~11/26)
・「運慶展」 東京国立博物館(9/26〜11/26)
・「フェリーチェ・ベアトの写真 人物・風景と日本の洋画」 DIC川村記念美術館(9/9~12/3)
・「驚異の超絶技巧!ー明治工芸から現代アートへ」 三井記念美術館(9/16~12/3)
・「シャガール 三次元の世界」 東京ステーションギャラリー(9/16~12/3)
・「安藤忠雄展ー挑戦」 国立新美術館(9/27~12/18)
・「田原桂一『光合成』with 田中泯」 原美術館(9/9~12/24)

ギャラリー

・「川俣正ー工事中 再開」 アートフロントギャラリー(~9/24)
・「田中武展 NAN-PUK」 日本橋高島屋美術画廊X(9/6~9/25)
・「春木麻衣子「vision | noisiv」 TARONASU(~9/30)
・「板東優 ポートレイトから始まる線の果て」 ポーラ・ミュージアム・アネックス(~10/1)
・「レイモン・ドゥパルドン写真展」 シャネル・ネクサス・ホール(~10/1)
・「千年の甍ー古代瓦を葺く」 ギャラリーA4(~10/6)
・「野口里佳 海底」 タカ・イシイギャラリー東京(9/9~10/7)
・「窓学展ー窓から見える世界」 スパイラルガーデン(9/28~10/9)
・「鏡と穴ー彫刻と写真の界面 vol.4 小松浩子」 ギャラリーαM(9/9~10/14)
・「高田唯展 遊泳グラフィック」 クリエイションギャラリーG8(9/19~10/19)
・「青山悟展 News From Nowhere」 ミヅマアートギャラリー(9/20~10/21)
・「かみ展 コズミックワンダーと工藝ぱんくす舎」 資生堂ギャラリー(~10/22)
・「中西夏之展」 SCAI THE BATHHOUSE(9/15~10/28)
・「組版造形 白井敬尚」 ギンザ・グラフィック・ギャラリー(~11/7)
・「超絶記録!西山夘三のすまい採集帖」 リクシルギャラリー(9/7~11/25)

いずれも注目したいのは日本美術です。まずは千葉市美術館にて「鈴木春信展」がはじまります。



「ボストン美術館浮世絵名品展 鈴木春信」@千葉市美術館(9/6~10/23)

江戸時代中期、錦絵誕生の頃に人気を博した浮世絵師、鈴木春信。作品を見る機会こそ少なくありませんが、網羅的な展覧会は多く開かれていません。


千葉市美術館でも約15年ぶりとなる春信展です。世界第1級とも称されるボストン美術館のコレクションが約150点ほど出展されます。早々に出かけるつもりです。

この秋、東京で最も人気を集める展覧会になるかもしれません。東京国立博物館で「運慶展」が開催されます。



「運慶展」@東京国立博物館(9/26~11/26)

現存する運慶作31体のうち、22体も揃う一大展覧会です。史上最大とうたうのもあながち誇張ではありません。公式Twitter(@unkei2017)などのWEB上のプロモーション活動も積極的ですが、公式サイト内の「運慶学園」のコンテンツが思いの外に充実していました。そちらで予め運慶について学んでおくのも良いかもしれません。


春には同じく慶派の仏師、快慶の回顧展もありました。私も見てきました。春の快慶、秋の運慶とあわせて楽しみたいところです。

本格的に元信を取り上げる初めての展覧会だそうです。サントリー美術館にて「天下を治めた絵師 狩野元信」がはじまります。



「天下を治めた絵師 狩野元信」@サントリー美術館(9/16~11/5)

狩野派の始祖、正信の子に生まれた元信は、狩野派を工房組織としても整備し、日本最大の画派へと至る礎を築き上げました。


今回は元信作だけでなく、先人の作品や中国絵画を参照し、幅広い観点から業績を振り返ります。確かに単独での元信展は記憶にありません。日本美術ファン注目の展覧会になりそうです。

それでは今月もどうぞ宜しくお願いします。
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