都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「越後妻有 大地の芸術祭の里」を旅する Vol.3「光の館」
Vol.2「まつだい 農舞台」・「里山食堂」に続きます。「越後妻有 大地の芸術祭の里」へ行ってきました。
「越後妻有 大地の芸術祭の里」を旅する Vol.2「まつだい 農舞台」・「里山食堂」
道の駅「クロステン」のある十日町中心部から、「光の館」へは、車で15分ほどでした。市街地を抜け、信濃川を渡り、小高い丘へと向かいます。さらに国道252号線から一本、細い道へ入り、坂を上がると、姿を現しました。それが、ジェームス・タレルの設計し、世界でただ1つ、泊まることの出来る作品、「光の館」でした。
「光の館」の見学は15時までで、以降は宿泊者のための時間となります。チェックインは16時で、その後、係の方の施設の説明、および誓約書への署名があるために、基本的に遅刻は許されません。無事、16時前に到着すると、間もなく「光の館」を予約して下さった、@zaikabouさんの7名のグループもやって来ました。ここで合流し、総勢12名で「光の館」へと入場しました。
「光の館」が完成したのは、最初に芸術祭がはじまった2000年でした。タレルは、十日町を一望出来る丘の上に、「瞑想のためのゲストハウス」として、近隣の豪農の伝統的な日本家屋をモデルに、「光の館」を建てました。2階建で、玄関も階段を上った2階部分に位置します。よって遠目からでは、高床式の倉庫か、神社建築のようにも見えました。
内部も純然たる日本家屋の佇まいです。2階には12.5畳、6畳の和室、ないしキッチンがあり、1階部に8畳の和室、そして浴室、そして2つのトイレと洗面所があります。また2階にはぐるりと一周、外側を取り囲むテラス(回廊)がありました。
「光の館」で最大の間が「アウトサイド(Outside In)」の部屋でした。天井の屋根が可動式で、スイッチを押すと、電気仕掛けで屋根が横へスライドし、部屋の真上に空が現れます。この日は雲ひとつない快晴でした。早速、開け放つと、青い空が目に飛び込んできました。
キッチンには、冷蔵庫、電気厨房機器、炊飯器、食洗機のほか、基本的な調理器具が揃っていて、自炊することが出来ます。食器も潤沢に用意されています。仕出しを頼むことも可能ですが、実際にこの日もたくさんの方が食材を持ち寄り、朝晩ともに自炊となりました。
有志の方が食事を作って下さり、アウトサイドの部屋に並べられると、自然に宴会が始まりました。ご馳走とともに、お酒をいただいていると、いつの間にか部屋の照明が変化していることに気づきました。タレルによるライトプログラムでした。
率直なところ、想像以上の美しさでした。部屋のLEDの光が変化するに伴い、空の色も大きく変容し、いつしか、通常は体験しえない、光と色の世界に包まれます。
ライトプログラムは日没後の約1時間にも及びますが、ひたすらに空を眺めていても全く飽きません。また屋根の厚みが殆ど感じられないからか、まるで空を薄くスライスして、フレームの中へはめ込んでいるかのようでした。空自体が一枚の絵画のように見えるかもしれません。
これほど長い時間、空を見上げたこと自体が初めての体験でした。空を見上げ、時折、写真を撮りつつ、さらに見上げ、また変化する光に驚きながら、ひたすらに美しい空の色に見惚れました。
ライトプログラムが終了すると再び宴会です。初めて会う方もおられましたが、いつしか打ち解け、酒はどんどん進み、笑い声の絶えない宴が賑やかに続きました。
浴室にもタレルの光の演出がありました。その名も「Light Bath」です。日没後、真っ暗闇となった風呂には、光ファイバーによる照明が施され、水面の光が揺らぎ、水中の体は発光するという、独特の幻想的な世界が生み出されます。(写真は昼間撮影)
*光の魔術師・タレルの「光の館」に泊まってみた(gooいまトピ)より拝借しました。
湯舟は一度に5~6名ほど入れますが、洗い場が2つのため、基本的に2人ずつ入浴しました。実際のところ、私も少々、酔っていて、「Light Bath」の記憶がやや曖昧ですが、確かに湯舟に浸かると、体だけが白い光に包まれるように浮かび上がります。ほかではまず体験出来ません。しばし闇と光の風呂を楽しみました。
その後、男女で部屋割りをしたのち、自然と就寝となりました。しかし朝寝坊は出来ません。何せライトプログラムは、日の出の際にも再び行われるからです。
私もほぼ酔いつぶれて寝ていると、いつしか屋根の動く「ゴゴゴ」という音が聞こえて目が覚めました。また部屋の照明が変化します。日の出のライトプログラムの始まりでした。
やや寝ぼけていたため、記憶は曖昧ですが、おそらく午前4時半頃にライトプラグラムが始まったと思います。日の出前にも関わらず、12名が集合し、空を眺める時間がやって来ました。
徐々に空が明るくなっていきます。この日も晴天です。なお雨天時は当然ながら屋根を開けることが出来ません。天気に恵まれて何よりでした。
早朝には十日町に広がる雲海も望めました。ともかく抜群のロケーションです。
朝になると布団を上げ、朝食の準備が始まりました。良いお天気だったため、朝陽の差し込むテラスでいただくことにしました。
夕食と同じく、準備して下さったご馳走が並びます。野菜の甘みが凝縮した味噌汁や、柔らかい豚肉の炒め物など、どれも美味しく、ご飯もお代わりしては、お腹いっぱいに食べました。ごちそうさまでした。
屋根をずっと開け放っておくと、いつしか日の光そのものが室内へ差し込んできました。時折、鳥の飛ぶ姿も見えました。
チェックアウトは10時です。チェックイン時同様、係の方がやって来て、備品や建具に破損がないかを点検します。その後、諸々の清算を終えて、解散となりました。
実のところ、私自身、ほぼ何もせず、ただ空を見上げ、そして飲み食いに興じていたに過ぎませんでしたが、とても楽しく「光の館」に滞在することが出来ました。これも全ては参加された皆さんのおかげです。この場を借りて「光の館」ツアーに参加された方、そして予約して下さった@zaikabouさんに深く感謝申し上げます。本当にありがとうございました。
Vol.4「越後妻有里山現代美術館 キナーレ」へ続きます。
*「越後妻有 大地の芸術祭の里」を旅する
Vol.1「森の学校キョロロ」・「夢の家」
Vol.2「まつだい 農舞台」・「里山食堂」
Vol.3「光の館」
Vol.4「越後妻有里山現代美術館 キナーレ」
Vol.5「絵本と木の実の美術館」
Vol.6「たくさんの失われた窓のために」・「ポチョムキン」
「光の館」 「越後妻有 大地の芸術祭の里」(@echigo_tsumari)
休館:不定期。
時間:11:30~15:00(見学時間)
*宿泊時のチェックインは16時から。チェックアウトは10時まで。
料金:中学生以上500円、小学生250円。(見学料)
*宿泊料金は別途必要。
住所:新潟県十日町市上野甲2891
交通:JR線・北越急行ほくほく線十日町駅より車で15分。JR線越後湯沢駅より車で70分。
「越後妻有 大地の芸術祭の里」を旅する Vol.2「まつだい 農舞台」・「里山食堂」
道の駅「クロステン」のある十日町中心部から、「光の館」へは、車で15分ほどでした。市街地を抜け、信濃川を渡り、小高い丘へと向かいます。さらに国道252号線から一本、細い道へ入り、坂を上がると、姿を現しました。それが、ジェームス・タレルの設計し、世界でただ1つ、泊まることの出来る作品、「光の館」でした。
「光の館」の見学は15時までで、以降は宿泊者のための時間となります。チェックインは16時で、その後、係の方の施設の説明、および誓約書への署名があるために、基本的に遅刻は許されません。無事、16時前に到着すると、間もなく「光の館」を予約して下さった、@zaikabouさんの7名のグループもやって来ました。ここで合流し、総勢12名で「光の館」へと入場しました。
「光の館」が完成したのは、最初に芸術祭がはじまった2000年でした。タレルは、十日町を一望出来る丘の上に、「瞑想のためのゲストハウス」として、近隣の豪農の伝統的な日本家屋をモデルに、「光の館」を建てました。2階建で、玄関も階段を上った2階部分に位置します。よって遠目からでは、高床式の倉庫か、神社建築のようにも見えました。
内部も純然たる日本家屋の佇まいです。2階には12.5畳、6畳の和室、ないしキッチンがあり、1階部に8畳の和室、そして浴室、そして2つのトイレと洗面所があります。また2階にはぐるりと一周、外側を取り囲むテラス(回廊)がありました。
「光の館」で最大の間が「アウトサイド(Outside In)」の部屋でした。天井の屋根が可動式で、スイッチを押すと、電気仕掛けで屋根が横へスライドし、部屋の真上に空が現れます。この日は雲ひとつない快晴でした。早速、開け放つと、青い空が目に飛び込んできました。
キッチンには、冷蔵庫、電気厨房機器、炊飯器、食洗機のほか、基本的な調理器具が揃っていて、自炊することが出来ます。食器も潤沢に用意されています。仕出しを頼むことも可能ですが、実際にこの日もたくさんの方が食材を持ち寄り、朝晩ともに自炊となりました。
有志の方が食事を作って下さり、アウトサイドの部屋に並べられると、自然に宴会が始まりました。ご馳走とともに、お酒をいただいていると、いつの間にか部屋の照明が変化していることに気づきました。タレルによるライトプログラムでした。
率直なところ、想像以上の美しさでした。部屋のLEDの光が変化するに伴い、空の色も大きく変容し、いつしか、通常は体験しえない、光と色の世界に包まれます。
ライトプログラムは日没後の約1時間にも及びますが、ひたすらに空を眺めていても全く飽きません。また屋根の厚みが殆ど感じられないからか、まるで空を薄くスライスして、フレームの中へはめ込んでいるかのようでした。空自体が一枚の絵画のように見えるかもしれません。
これほど長い時間、空を見上げたこと自体が初めての体験でした。空を見上げ、時折、写真を撮りつつ、さらに見上げ、また変化する光に驚きながら、ひたすらに美しい空の色に見惚れました。
光の館で飲んだ日本酒、八海山の濁りスパークリングはすいすい飲める危険なの、松乃井の特別純米も日本酒らしい美味しいの、そして、高千代の純米大吟醸秋あがり一本〆、これが抜群の旨味。そして、締めは有難くも、いただきものの、純米大吟醸、亀の翁。みんな新潟は中越の酒、美味しかった… pic.twitter.com/9Y0alj9Etz
— 在華坊 (@zaikabou) 2017年9月11日
ライトプログラムが終了すると再び宴会です。初めて会う方もおられましたが、いつしか打ち解け、酒はどんどん進み、笑い声の絶えない宴が賑やかに続きました。
浴室にもタレルの光の演出がありました。その名も「Light Bath」です。日没後、真っ暗闇となった風呂には、光ファイバーによる照明が施され、水面の光が揺らぎ、水中の体は発光するという、独特の幻想的な世界が生み出されます。(写真は昼間撮影)
*光の魔術師・タレルの「光の館」に泊まってみた(gooいまトピ)より拝借しました。
湯舟は一度に5~6名ほど入れますが、洗い場が2つのため、基本的に2人ずつ入浴しました。実際のところ、私も少々、酔っていて、「Light Bath」の記憶がやや曖昧ですが、確かに湯舟に浸かると、体だけが白い光に包まれるように浮かび上がります。ほかではまず体験出来ません。しばし闇と光の風呂を楽しみました。
その後、男女で部屋割りをしたのち、自然と就寝となりました。しかし朝寝坊は出来ません。何せライトプログラムは、日の出の際にも再び行われるからです。
私もほぼ酔いつぶれて寝ていると、いつしか屋根の動く「ゴゴゴ」という音が聞こえて目が覚めました。また部屋の照明が変化します。日の出のライトプログラムの始まりでした。
やや寝ぼけていたため、記憶は曖昧ですが、おそらく午前4時半頃にライトプラグラムが始まったと思います。日の出前にも関わらず、12名が集合し、空を眺める時間がやって来ました。
徐々に空が明るくなっていきます。この日も晴天です。なお雨天時は当然ながら屋根を開けることが出来ません。天気に恵まれて何よりでした。
早朝には十日町に広がる雲海も望めました。ともかく抜群のロケーションです。
朝になると布団を上げ、朝食の準備が始まりました。良いお天気だったため、朝陽の差し込むテラスでいただくことにしました。
夕食と同じく、準備して下さったご馳走が並びます。野菜の甘みが凝縮した味噌汁や、柔らかい豚肉の炒め物など、どれも美味しく、ご飯もお代わりしては、お腹いっぱいに食べました。ごちそうさまでした。
屋根をずっと開け放っておくと、いつしか日の光そのものが室内へ差し込んできました。時折、鳥の飛ぶ姿も見えました。
チェックアウトは10時です。チェックイン時同様、係の方がやって来て、備品や建具に破損がないかを点検します。その後、諸々の清算を終えて、解散となりました。
空の色は何色?光の魔術師・タレルの「光の館」に泊まってみた - いまトピ https://t.co/MEo3AAnK3U 酔っ払っていて、風呂の写真を撮り損ねたのだけが心残りでした…早朝に館から望む十日町の雲海も美しかったです。
— はろるど (@harold_1234) 2017年9月13日
実のところ、私自身、ほぼ何もせず、ただ空を見上げ、そして飲み食いに興じていたに過ぎませんでしたが、とても楽しく「光の館」に滞在することが出来ました。これも全ては参加された皆さんのおかげです。この場を借りて「光の館」ツアーに参加された方、そして予約して下さった@zaikabouさんに深く感謝申し上げます。本当にありがとうございました。
Vol.4「越後妻有里山現代美術館 キナーレ」へ続きます。
*「越後妻有 大地の芸術祭の里」を旅する
Vol.1「森の学校キョロロ」・「夢の家」
Vol.2「まつだい 農舞台」・「里山食堂」
Vol.3「光の館」
Vol.4「越後妻有里山現代美術館 キナーレ」
Vol.5「絵本と木の実の美術館」
Vol.6「たくさんの失われた窓のために」・「ポチョムキン」
「光の館」 「越後妻有 大地の芸術祭の里」(@echigo_tsumari)
休館:不定期。
時間:11:30~15:00(見学時間)
*宿泊時のチェックインは16時から。チェックアウトは10時まで。
料金:中学生以上500円、小学生250円。(見学料)
*宿泊料金は別途必要。
住所:新潟県十日町市上野甲2891
交通:JR線・北越急行ほくほく線十日町駅より車で15分。JR線越後湯沢駅より車で70分。
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