都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「そこまでやるか 壮大なプロジェクト展」 21_21 DESIGN SIGHT
21_21 DESIGN SIGHT
「そこまでやるか 壮大なプロジェクト展」
6/23~10/1

21_21 DESIGN SIGHTで開催中の「そこまでやるか 壮大なプロジェクト展」を見てきました。
やや謎めいたタイトルでもある「そこまでやるか」。実のところ私も内容の想像が付かず、ほぼ事前の情報も得ないまま、デザインサイトへと出かけて来ました。

冒頭はクリストとジャンヌ=クロードのアーカイブでした。言うまでもなく、クリストとジャンヌ=クロードは、景観を大きく変貌させるアーティストで、建造物を梱包するプロジェクトなどで知られています。日本では1991年、茨城県の水田地帯に、1340本の青色の傘を同時に配置して、話題を集めました。

面白いのが「フローティング・ピアーズ、イタリア・イセオ湖」です。イタリアの湖の上に、10万平方メートルもの黄色の布地を浮かべています。布は22万個のポリエチレン製の浮きに支えられていたため、観客は作品の上を歩いて体験することも出来ました。その遊歩道は3キロあまりの長さにも及んだそうです。まさしく「壮大なプロジェクト」と言えるのではないでしょうか。
つまり「そこまでやるか 壮大なプロジェクト展」とは、時に「そこまでやるか」と思うほどに驚きを引き起こす、芸術家らの「壮大なプロジェクト」を紹介する展覧会であったわけです。

淺井裕介の泥絵も圧巻でした。一方の壁面全体へ、まさに魑魅魍魎、多様で奇怪な動植物を描いています。タイトルは「土の旅」でした。

「そこまでやるか」と感じたのは、淺井が制作に際し、北は北海道、南は沖縄までの全国の土、全50種を用いていることです。中には開館記念展の「未来への狼火」に参加した群馬の太田や、ここ六本木のデザインサイトから採取された土もありました。

体験型のインスタレーションもあります。オーストリアとクロアチアを拠点に活動するアートユニット、ヌーメン/フォー・ユースによる「テープ・トウキョウ 02」でした。

かなり大掛かりな作品です。オブジェは前後左右、展示室内の四方へと広がっています。そして中央の下部に穴があり、2人ずつ中へと入ることが出来ました。素材がテープです。しかし量が半端なく、何と15キロメートル分も使用しています。元々、綿密な設計図を用いずに、現場にある構造物を利用して作り上げたそうです。まるで生き物の触手のようでもありました。

幾重にも巻き付けられたからか、構造物自体が半透明になっています。外から眺めると、中で行き来する人の姿がぼんやりと透けて見えました。

フランスのジョルジュ・ルースは、人の錯覚を利用した作品、「トウキョウ2017」を展示しています。真っ白な木材によって、一見すると幾何学的な構造物を作り上げていました。

実際の開口部は円ではなく、前後に複雑な形をしていますが、ある一点に立つと、完全な円のみが浮き上がって見えました。デザインサイトの空間にもよく映えているのではないでしょうか。
今年の3月に新設されたギャラリー3へも展示が続きます。西野達の「カプセルホテル 21」でした。

ご覧の通り説明は不要です。西野はデザインサイト内に、何とカプセルホテルを築き上げました。素材は発泡スチロールと金属の単管です。個々のカプセルが、ちょうど建物の1メートル幅の窓枠に収まるように設計されています。

西野に妥協はありません。いわゆる宿泊のために必要だと考えたのでしょうか。給湯室内に簡易的なシャワーブースも設置しました。実際にお湯も出るそうです。そのための配管も張り巡らされています。
会期中、夜間にカプセルホテルに滞在、ないし体験するイベントも行われています。(最終は9/15。全日程の予約終了。)

昼間は見学するのみですが、カプセルの中に入ることは出来ました。もちろんコンセントもあり、電気もつきます。長い夜を楽しむための工夫かもしれません。iPadまで設置されていました。

美術館内のカプセルホテルとは史上初の試みではないでしょうか。これまでにないアイデアと言えそうです。
さて「そこまでやるか展」では、さらに壮大なプロジェクトが、ミッドタウン内にて進められています。

それが「アーク・ノヴァ」です。高さ18メートル、長さは36メートルにも及ぶコンサートホールで、元々はスイスのルツェルン・フェスティバルが、東日本大震災の復興支援のために企画しました。ポリエステル製で、空気を送って膨らませて使用するため、折りたたんで移動することも出来ます。
デザインと基本構想を、彫刻家のアニッシュ・カプーアと、建築家の磯崎新が担当しました。既に2013年から2015年にかけ、松島、仙台、福島の3カ所で展示されてきたそうです。コンサートなどで延べ1万9千人を動員しました。
「東京ミッドタウン ルツェルン・フェスティバル アーク・ノヴァ 2017」特設サイト
http://www.tokyo-midtown.com/jp/event/ark-nova/
この「アーク・ノヴァ」が、期間限定にて、ミッドタウンのガーデン芝生広場に移設されます。期間は9月19日から10月4日の16日間です。ミッドタウン10周年を記念してのイベントでもあります。

私が見た際はちょうど設営中で、内部へ空気が送られたのか、外観はほぼ完成しているようにも見えました。
ホールの収容人員は494名で、移設期間中、内部が一般に公開されるほか、各種コンサートなども開催されます。
公開日は限られていますが、まさに東日本の各地を繋ぐ「壮大なプロジェクト」ではないでしょうか。これからお出かけの際は「アーク・ノヴァ」をあわせて見学するのも良いかもしれません。(アーク・ノヴァの入場料は500円。)
たまたま平日だったからか、会場内は空いていましたが、土日は混雑することがあるそうです。体験型の「テープ・トウキョウ02」は整理券方式です。土日は朝10時から全時間帯の券を配布し、なくなり次第、終了となります。ご注意下さい。

10月1日まで開催されています。
「そこまでやるか 壮大なプロジェクト展」 21_21 DESIGN SIGHT(@2121DESIGNSIGHT)
会期:6月23日(金)~10月1日(日)
休館:火曜日。
時間:11:00~19:00(入場は18:30まで)
*9月30日(土)は「六本木アートナイト」の開催のため、24時まで開館延長。
*入場は閉場の30分前まで。
料金:一般1100円、大学生800円、高校生500円、中学生以下無料。
*15名以上は各200円引。
住所:港区赤坂9-7-6 東京ミッドタウン・ガーデン内
交通:都営地下鉄大江戸線・東京メトロ日比谷線六本木駅、及び東京メトロ千代田線乃木坂駅より徒歩5分。
「そこまでやるか 壮大なプロジェクト展」
6/23~10/1

21_21 DESIGN SIGHTで開催中の「そこまでやるか 壮大なプロジェクト展」を見てきました。
やや謎めいたタイトルでもある「そこまでやるか」。実のところ私も内容の想像が付かず、ほぼ事前の情報も得ないまま、デザインサイトへと出かけて来ました。

冒頭はクリストとジャンヌ=クロードのアーカイブでした。言うまでもなく、クリストとジャンヌ=クロードは、景観を大きく変貌させるアーティストで、建造物を梱包するプロジェクトなどで知られています。日本では1991年、茨城県の水田地帯に、1340本の青色の傘を同時に配置して、話題を集めました。

面白いのが「フローティング・ピアーズ、イタリア・イセオ湖」です。イタリアの湖の上に、10万平方メートルもの黄色の布地を浮かべています。布は22万個のポリエチレン製の浮きに支えられていたため、観客は作品の上を歩いて体験することも出来ました。その遊歩道は3キロあまりの長さにも及んだそうです。まさしく「壮大なプロジェクト」と言えるのではないでしょうか。
つまり「そこまでやるか 壮大なプロジェクト展」とは、時に「そこまでやるか」と思うほどに驚きを引き起こす、芸術家らの「壮大なプロジェクト」を紹介する展覧会であったわけです。

淺井裕介の泥絵も圧巻でした。一方の壁面全体へ、まさに魑魅魍魎、多様で奇怪な動植物を描いています。タイトルは「土の旅」でした。

「そこまでやるか」と感じたのは、淺井が制作に際し、北は北海道、南は沖縄までの全国の土、全50種を用いていることです。中には開館記念展の「未来への狼火」に参加した群馬の太田や、ここ六本木のデザインサイトから採取された土もありました。

体験型のインスタレーションもあります。オーストリアとクロアチアを拠点に活動するアートユニット、ヌーメン/フォー・ユースによる「テープ・トウキョウ 02」でした。

かなり大掛かりな作品です。オブジェは前後左右、展示室内の四方へと広がっています。そして中央の下部に穴があり、2人ずつ中へと入ることが出来ました。素材がテープです。しかし量が半端なく、何と15キロメートル分も使用しています。元々、綿密な設計図を用いずに、現場にある構造物を利用して作り上げたそうです。まるで生き物の触手のようでもありました。

幾重にも巻き付けられたからか、構造物自体が半透明になっています。外から眺めると、中で行き来する人の姿がぼんやりと透けて見えました。

フランスのジョルジュ・ルースは、人の錯覚を利用した作品、「トウキョウ2017」を展示しています。真っ白な木材によって、一見すると幾何学的な構造物を作り上げていました。

実際の開口部は円ではなく、前後に複雑な形をしていますが、ある一点に立つと、完全な円のみが浮き上がって見えました。デザインサイトの空間にもよく映えているのではないでしょうか。
今年の3月に新設されたギャラリー3へも展示が続きます。西野達の「カプセルホテル 21」でした。

ご覧の通り説明は不要です。西野はデザインサイト内に、何とカプセルホテルを築き上げました。素材は発泡スチロールと金属の単管です。個々のカプセルが、ちょうど建物の1メートル幅の窓枠に収まるように設計されています。

西野に妥協はありません。いわゆる宿泊のために必要だと考えたのでしょうか。給湯室内に簡易的なシャワーブースも設置しました。実際にお湯も出るそうです。そのための配管も張り巡らされています。
会期中、夜間にカプセルホテルに滞在、ないし体験するイベントも行われています。(最終は9/15。全日程の予約終了。)

昼間は見学するのみですが、カプセルの中に入ることは出来ました。もちろんコンセントもあり、電気もつきます。長い夜を楽しむための工夫かもしれません。iPadまで設置されていました。

美術館内のカプセルホテルとは史上初の試みではないでしょうか。これまでにないアイデアと言えそうです。
さて「そこまでやるか展」では、さらに壮大なプロジェクトが、ミッドタウン内にて進められています。

それが「アーク・ノヴァ」です。高さ18メートル、長さは36メートルにも及ぶコンサートホールで、元々はスイスのルツェルン・フェスティバルが、東日本大震災の復興支援のために企画しました。ポリエステル製で、空気を送って膨らませて使用するため、折りたたんで移動することも出来ます。
デザインと基本構想を、彫刻家のアニッシュ・カプーアと、建築家の磯崎新が担当しました。既に2013年から2015年にかけ、松島、仙台、福島の3カ所で展示されてきたそうです。コンサートなどで延べ1万9千人を動員しました。
「東京ミッドタウン ルツェルン・フェスティバル アーク・ノヴァ 2017」特設サイト
http://www.tokyo-midtown.com/jp/event/ark-nova/
この「アーク・ノヴァ」が、期間限定にて、ミッドタウンのガーデン芝生広場に移設されます。期間は9月19日から10月4日の16日間です。ミッドタウン10周年を記念してのイベントでもあります。

私が見た際はちょうど設営中で、内部へ空気が送られたのか、外観はほぼ完成しているようにも見えました。
ホールの収容人員は494名で、移設期間中、内部が一般に公開されるほか、各種コンサートなども開催されます。
公開日は限られていますが、まさに東日本の各地を繋ぐ「壮大なプロジェクト」ではないでしょうか。これからお出かけの際は「アーク・ノヴァ」をあわせて見学するのも良いかもしれません。(アーク・ノヴァの入場料は500円。)
「そこまでやるか」壮大なプロジェクト展|Web連載 第7回|本展参加作家の西野 達が、「実現不可能性99%」からついに実現した新作インスタレーション「カプセルホテル21」の制作風景をレポートします。https://t.co/cAd3cEt30s#HowFarWillYouGo pic.twitter.com/YvD9Wdrf3w
— 21_21 DESIGN SIGHT (@2121DESIGNSIGHT) 2017年9月14日
たまたま平日だったからか、会場内は空いていましたが、土日は混雑することがあるそうです。体験型の「テープ・トウキョウ02」は整理券方式です。土日は朝10時から全時間帯の券を配布し、なくなり次第、終了となります。ご注意下さい。

10月1日まで開催されています。
「そこまでやるか 壮大なプロジェクト展」 21_21 DESIGN SIGHT(@2121DESIGNSIGHT)
会期:6月23日(金)~10月1日(日)
休館:火曜日。
時間:11:00~19:00(入場は18:30まで)
*9月30日(土)は「六本木アートナイト」の開催のため、24時まで開館延長。
*入場は閉場の30分前まで。
料金:一般1100円、大学生800円、高校生500円、中学生以下無料。
*15名以上は各200円引。
住所:港区赤坂9-7-6 東京ミッドタウン・ガーデン内
交通:都営地下鉄大江戸線・東京メトロ日比谷線六本木駅、及び東京メトロ千代田線乃木坂駅より徒歩5分。
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