都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「BENTO おべんとう展―食べる・集う・つながるデザイン」 東京都美術館
東京都美術館
「BENTO おべんとう展―食べる・集う・つながるデザイン」
7/21~10/8
東京都美術館で開催中の「BENTO おべんとう展―食べる・集う・つながるデザイン」を見てきました。
誰しもが食し、日常の生活に根ざしたお弁当。自他の調理を問わず、人気の駅弁しかり、好みの弁当を挙げるとすれば、1つや2つで収まらないかもしれません。
その弁当を入れるための容器、すなわち弁当箱から展示がはじまりました。江戸時代の花火弁当から、明治・大正時代の白陶や楼閣型の弁当箱、また輪島塗りやブリキの手提げ弁当箱、さらにはブータンやポルトガルなど、アジア、ヨーロッパ、アフリカの弁当箱などがずらりと揃っていました。
江戸由来の変わり種として、舟型や碁盤型、宝袋型の弁当箱も面白いのではないでしょうか。国内の弁当箱に関しては、お辧當箱博物館、北区飛鳥山博物館、新宿区立新宿歴史博物館、ないし個人の所蔵で、海外の弁当箱は、国立民族学博物館のコレクションでした。
一部の弁当箱については、触れることも可能でした。見て、触って、意匠に多様な弁当箱を体感的に知ることが出来ました。
さて、後半は、弁当箱から一転し、現代美術家らが登場しました。そもそも弁当は、常に一人で食すわけではなく、宴などの共食の場でも用いられました。また、一人用の弁当箱であっても、作り手と食べる人を繋ぐ、言わばコミュニケーションのツールでもありました。
そのコミュニケーションこそが、展覧会の最大のテーマと言えるかもしれません。おべんとうを切っ掛けに、コミュニケーションの諸問題について取り組んだ、日本と海外の8名の作家が、主に参加型を志向したインスタレーションを出展していました。
小倉ヒラク「おべんとうDAYS」 2018年
「発酵デザイナー」として、発酵菌の働きをデザインとして可視化しようとする、小倉ヒラクは、アニメーションの「おべんとうDAYS」を制作しました。「歌って踊るお弁当」がコンセプトで、ポップなメロディーを聞いていると、不思議と見ている側も踊りたくなるような作品でした。弁当の楽しみは万国共通として、弁当の作る文化の多様性についても踏み込んでいました。
出張料理「あゆみ食堂」として、イベントや展示会などでケータリングを行う大塩あゆ美は、「23人の手紙からうまれたレシピ」を出展していました。これは「お弁当を贈りたいのは誰ですか?」として、全国から寄せられたレシピを元に考案した弁当を写したプロジェクトで、実際に弁当箱ともに投稿者へ送り届けられました。
小山田徹「お父ちゃん弁当」 2017年
美術家、小山田徹の「お父ちゃん弁当」は、小学生の姉が、幼稚園の弟のためのお弁当の指示書を書き、父が弁当に仕立てる記録で、「火山」や「どぶうさぎ」、「みちの下」といった、風代わりな指示を、何とか弁当として作った様子が写されていました。
小山田徹「お父ちゃん弁当」 2017年
そのお題を記入できるスペースもありました。どのようなお題を考えるのかも楽しいのではないでしょうか。
マライエ・フォーゲルサング「intangible bento」 2018年
オランダのイーティング・デザイナーのパイオニアであるマライエ・フォーゲルサングは、「intangible bento」において、お弁当の精霊を頼りに、弁当の中に入りこむインスタレーションを作り上げました。
マライエ・フォーゲルサング「intangible bento」 2018年
「精霊フォン」なる音声ガイドを頼りに、恐らくは弁当の世界観をイメージしたリボンの森の中を歩く体験は、どこか摩訶不思議でもあり、時折、現れる「お弁当の精霊」の囁きから、弁当を巡るコミュニケーションや、社会の環境問題などについて喚起させられました。
マライエ・フォーゲルサング「intangible bento」 2018年
リボンの森は迷路で、ルートも決まっていないため、自由に歩くことが出来ました。弁当を探検する発想からして、新奇と言えるかもしれません。
北澤潤「FRAGMENTS PASSAGE - おすそわけ横丁」 2018年
美術家の北澤潤は、会場内にマーケットを作り上げました。その名は「FRAGMENTS PASSAGE - おすそわけ横丁」で、東南アジアなどの屋台を思わせるブースに、玩具、日用品、装身具、衣服、文房具のほか、古びた扇風機やカセットテープ、さらには一見するとガラクタとしか言えないようなものが所狭しと並んでいました。
北澤潤「FRAGMENTS PASSAGE - おすそわけ横丁」 2018年
実はこれらは、様々な人々からおすそ分けによって集まった品々で、会場でも「おすそわけリスト」に記入し、実際に持ち込むことも出来ました。もちろん持ち帰ることも可能です。
北澤潤「FRAGMENTS PASSAGE - おすそわけ横丁」 2018年
おすそ分け用の箱まで用意されていましたが、中には車でなければ持ち帰れないほどに大きいものもありました。
北澤潤「FRAGMENTS PASSAGE - おすそわけ横丁」 2018年
北澤は弁当について考えていた時、インドネシアの島に滞在していて、日本の弁当とは、中身や所作のかけ離れたものの間にある、「おなじ」を探したかったと語っています。
北澤潤「FRAGMENTS PASSAGE - おすそわけ横丁」 2018年
まさに「おすそわけ」こそ、モノを繋いでの、人同士のミュニケーションではないでしょうか。何か持ち込むものを持って出かけるのも良いかもしれません。
「BENTO おべんとう展」会場風景
最初に「おべんとう展」なる展覧会が開催されると聞いた際、率直なところ、内容について全く想像も出来ませんでした。しかしながら、現代アーティストらの切り口には創意があり、意外な発見も少なくありません。思いの外に楽しめました。
同時開催の「没後50年 藤田嗣治展」のチケットを提示すると、当日料金から一般300円引きとなります。
一部の作品のみ撮影が出来ます。10月8日まで開催されています。
「BENTO おべんとう展―食べる・集う・つながるデザイン」(@bento_tobi) 東京都美術館(@tobikan_jp)
会期:7月21日(土)~10月8日(月・祝)
時間:9:30~17:30
*毎週金曜日は20時まで開館。
*11月1日(水)、2日(木)、4日(土)は20時まで開館。
*入館は閉館の30分前まで。
休館:月曜日。9月18日(火)、25日(火)。但し8月13日(月)、9月17日(月・祝)、24日(月・休)、10月1日(月)、8日(月・祝)は開館。
料金:一般800(600)円、大学生・専門学校生400円、65歳以上500円。高校生以下無料。
*( )は20名以上の団体料金。
*毎月第3水曜日はシルバーデーのため65歳以上は無料。
*毎月第3土曜、翌日曜日は家族ふれあいの日のため、18歳未満の子を同伴する保護者(都内在住)は一般料金の半額。(要証明書)
*10月1日(月)は「都民の日」により無料。
住所:台東区上野公園8-36
交通:JR線上野駅公園口より徒歩7分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅7番出口より徒歩10分。京成線上野駅より徒歩10分。
「BENTO おべんとう展―食べる・集う・つながるデザイン」
7/21~10/8
東京都美術館で開催中の「BENTO おべんとう展―食べる・集う・つながるデザイン」を見てきました。
誰しもが食し、日常の生活に根ざしたお弁当。自他の調理を問わず、人気の駅弁しかり、好みの弁当を挙げるとすれば、1つや2つで収まらないかもしれません。
その弁当を入れるための容器、すなわち弁当箱から展示がはじまりました。江戸時代の花火弁当から、明治・大正時代の白陶や楼閣型の弁当箱、また輪島塗りやブリキの手提げ弁当箱、さらにはブータンやポルトガルなど、アジア、ヨーロッパ、アフリカの弁当箱などがずらりと揃っていました。
江戸由来の変わり種として、舟型や碁盤型、宝袋型の弁当箱も面白いのではないでしょうか。国内の弁当箱に関しては、お辧當箱博物館、北区飛鳥山博物館、新宿区立新宿歴史博物館、ないし個人の所蔵で、海外の弁当箱は、国立民族学博物館のコレクションでした。
一部の弁当箱については、触れることも可能でした。見て、触って、意匠に多様な弁当箱を体感的に知ることが出来ました。
さて、後半は、弁当箱から一転し、現代美術家らが登場しました。そもそも弁当は、常に一人で食すわけではなく、宴などの共食の場でも用いられました。また、一人用の弁当箱であっても、作り手と食べる人を繋ぐ、言わばコミュニケーションのツールでもありました。
そのコミュニケーションこそが、展覧会の最大のテーマと言えるかもしれません。おべんとうを切っ掛けに、コミュニケーションの諸問題について取り組んだ、日本と海外の8名の作家が、主に参加型を志向したインスタレーションを出展していました。
小倉ヒラク「おべんとうDAYS」 2018年
「発酵デザイナー」として、発酵菌の働きをデザインとして可視化しようとする、小倉ヒラクは、アニメーションの「おべんとうDAYS」を制作しました。「歌って踊るお弁当」がコンセプトで、ポップなメロディーを聞いていると、不思議と見ている側も踊りたくなるような作品でした。弁当の楽しみは万国共通として、弁当の作る文化の多様性についても踏み込んでいました。
出張料理「あゆみ食堂」として、イベントや展示会などでケータリングを行う大塩あゆ美は、「23人の手紙からうまれたレシピ」を出展していました。これは「お弁当を贈りたいのは誰ですか?」として、全国から寄せられたレシピを元に考案した弁当を写したプロジェクトで、実際に弁当箱ともに投稿者へ送り届けられました。
小山田徹「お父ちゃん弁当」 2017年
美術家、小山田徹の「お父ちゃん弁当」は、小学生の姉が、幼稚園の弟のためのお弁当の指示書を書き、父が弁当に仕立てる記録で、「火山」や「どぶうさぎ」、「みちの下」といった、風代わりな指示を、何とか弁当として作った様子が写されていました。
小山田徹「お父ちゃん弁当」 2017年
そのお題を記入できるスペースもありました。どのようなお題を考えるのかも楽しいのではないでしょうか。
マライエ・フォーゲルサング「intangible bento」 2018年
オランダのイーティング・デザイナーのパイオニアであるマライエ・フォーゲルサングは、「intangible bento」において、お弁当の精霊を頼りに、弁当の中に入りこむインスタレーションを作り上げました。
マライエ・フォーゲルサング「intangible bento」 2018年
「精霊フォン」なる音声ガイドを頼りに、恐らくは弁当の世界観をイメージしたリボンの森の中を歩く体験は、どこか摩訶不思議でもあり、時折、現れる「お弁当の精霊」の囁きから、弁当を巡るコミュニケーションや、社会の環境問題などについて喚起させられました。
マライエ・フォーゲルサング「intangible bento」 2018年
リボンの森は迷路で、ルートも決まっていないため、自由に歩くことが出来ました。弁当を探検する発想からして、新奇と言えるかもしれません。
北澤潤「FRAGMENTS PASSAGE - おすそわけ横丁」 2018年
美術家の北澤潤は、会場内にマーケットを作り上げました。その名は「FRAGMENTS PASSAGE - おすそわけ横丁」で、東南アジアなどの屋台を思わせるブースに、玩具、日用品、装身具、衣服、文房具のほか、古びた扇風機やカセットテープ、さらには一見するとガラクタとしか言えないようなものが所狭しと並んでいました。
北澤潤「FRAGMENTS PASSAGE - おすそわけ横丁」 2018年
実はこれらは、様々な人々からおすそ分けによって集まった品々で、会場でも「おすそわけリスト」に記入し、実際に持ち込むことも出来ました。もちろん持ち帰ることも可能です。
北澤潤「FRAGMENTS PASSAGE - おすそわけ横丁」 2018年
おすそ分け用の箱まで用意されていましたが、中には車でなければ持ち帰れないほどに大きいものもありました。
北澤潤「FRAGMENTS PASSAGE - おすそわけ横丁」 2018年
北澤は弁当について考えていた時、インドネシアの島に滞在していて、日本の弁当とは、中身や所作のかけ離れたものの間にある、「おなじ」を探したかったと語っています。
北澤潤「FRAGMENTS PASSAGE - おすそわけ横丁」 2018年
まさに「おすそわけ」こそ、モノを繋いでの、人同士のミュニケーションではないでしょうか。何か持ち込むものを持って出かけるのも良いかもしれません。
「BENTO おべんとう展」会場風景
最初に「おべんとう展」なる展覧会が開催されると聞いた際、率直なところ、内容について全く想像も出来ませんでした。しかしながら、現代アーティストらの切り口には創意があり、意外な発見も少なくありません。思いの外に楽しめました。
同時開催の「没後50年 藤田嗣治展」のチケットを提示すると、当日料金から一般300円引きとなります。
【#おべんとう展 #図録】おべんとう展図録発売中!写真家 #平野太呂 さん撮りおろしの美しい写真、出品作家のインタビュー等、盛り沢山の内容。更に、展覧会終了後(12月末頃)に「ごちそうさま編」として会場風景などを収めたもう一冊も送付!2冊組/税込1800円。詳細→https://t.co/VXHBd62K5u (YK) pic.twitter.com/f5J0EdRXDH
— BENTO おべんとう展official (@bento_tobi) 2018年8月2日
一部の作品のみ撮影が出来ます。10月8日まで開催されています。
「BENTO おべんとう展―食べる・集う・つながるデザイン」(@bento_tobi) 東京都美術館(@tobikan_jp)
会期:7月21日(土)~10月8日(月・祝)
時間:9:30~17:30
*毎週金曜日は20時まで開館。
*11月1日(水)、2日(木)、4日(土)は20時まで開館。
*入館は閉館の30分前まで。
休館:月曜日。9月18日(火)、25日(火)。但し8月13日(月)、9月17日(月・祝)、24日(月・休)、10月1日(月)、8日(月・祝)は開館。
料金:一般800(600)円、大学生・専門学校生400円、65歳以上500円。高校生以下無料。
*( )は20名以上の団体料金。
*毎月第3水曜日はシルバーデーのため65歳以上は無料。
*毎月第3土曜、翌日曜日は家族ふれあいの日のため、18歳未満の子を同伴する保護者(都内在住)は一般料金の半額。(要証明書)
*10月1日(月)は「都民の日」により無料。
住所:台東区上野公園8-36
交通:JR線上野駅公園口より徒歩7分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅7番出口より徒歩10分。京成線上野駅より徒歩10分。
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