「琉球 美の宝庫」 サントリー美術館

サントリー美術館
「琉球 美の宝庫」 
7/18~9/2



サントリー美術館で開催中の「琉球 美の宝庫」を見てきました。

15世紀に統一王朝が誕生し、長らく海洋王国として繁栄した琉球には、独自の美術や工芸の文化が花開きました。

その琉球に関した文化財をまとめて紹介するのが、「琉球 美の宝庫」で、中でも琉球を治めてきた尚家に伝わり、2006年に一括して国宝に指定された、「琉球国王尚家関係資料」の一部も展示されていました。

冒頭は染織でした。そもそも染織は、王国を「象徴する美」(解説より)であり、王族や貴族は、型紙を用いて模様を染める紅型を着用していました。ともかく目を引くのは、朱やオレンジなどの色彩で、大陸に由来した鳳凰や龍、それに日本的な桜や梅などを鮮やかに表現していました。また一部には、幾何学的なパターンもあり、花鳥風月云々だけではない、幅広い意匠を見ることも出来ました。琉球には、中国や東南アジアから伝わった織物も少なくありませんでした。

同地で制作された絵画、つまり琉球絵画も、1つの目玉と言えるかもしれません。王府には、中国や日本の絵画も集められていて、お抱え絵師らは、それら参照しながら、多様な作品を描いていました。中でも、王府から中国の福州に派遣された、福州画壇と言われる作品に、独特な味わいが感じられました。


「花鳥図」山口宗季(呉師虔)筆 1715年 大和文華館 *展示期間:8/8~9/2

山口宗季(呉師虔)の「花鳥図」に魅せられました。紅白の花が爛爛と咲き誇る中、小さな鳥が群れる光景を描いていて、鮮やかな色彩だけでなく、花弁や葉の繊細な筆触も目を引きました。琉球を代表する絵師であった山口は、薩摩や京都にも名を轟かせ、制作の依頼を受けました。


孫億の「花鳥図巻」も美しい作品でした。20種類の蝶と50種の植物を描いた画巻で、琉球では「永遠の手本、国用の宝物」と称されました。孫億は福建省で活動していて、琉球の画家らも学んだことから、中国画の受容を位置付けた人物としても知られています。なお、琉球絵画の多くは、沖縄戦で甚大な被害を受け、必ずしも全容は明らかではありません。

北斎の「琉球八景」も興味深いのではないでしょうか。おそらくは、中国の冊封使、周煌のまとめた「琉球国志略」を元にして描いた連作で、南国風の植物とともに、北斎なりのアレンジなのか、富士山らしき山の姿も見ることが出来ました。当時の江戸の人々は、使節団の往来もあり、琉球に対する関心が強く、それを反映した描いた作品ではないかとも言われています。



ハイライトは「琉球国王尚家関係資料」に関する一連の文化財でした。金杯や銀碗などから成る「美御前御揃」は、儀式や祝宴に用いた食器のセットで、いずれも漆に金箔を押した沈金を施した台の上に載せられていました。

なお、一連の資料は、琉球処分の際、一部が東京に移されたもので、結果的に沖縄戦の被害を受けることはありませんでした。とは言え、沖縄戦では、先の琉球絵画をはじめ、首里城しかり、数多くの文化財が失われました。今、我々が目に出来る沖縄の美術工芸品が、実は一端に過ぎないことを考えると、あまりにも残念でなりませんでした。

ラストは琉球の漆芸でした。そもそも同地における漆芸品は、重要な輸出品であり、日本や中国にも送られました。やはり鮮やかなのは、貝を貼った螺鈿の品々で、龍などの吉祥主題を七色で表現していました。

最後に展示替えの情報です。会期は5つに分かれていて、8月22日より最終の期間に入りました。

「琉球 美の宝庫」出展リスト(PDF)

チラシ表紙の国宝「王冠(付簪)」が公開されるのも、8月22日から展示末日までです。そのタイミングを狙って出かけるのも良いかもしれません。

これほどまとまって琉球の美術品を見ること自体がはじめてでした。9月2日まで開催されています。おすすめします。

「琉球 美の宝庫」 サントリー美術館@sun_SMA
会期:7月18日(水)~9月2日(日)
休館:火曜日。
時間:10:00~18:00
 *8月14日は18時まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1300円、大学・高校生1000円、中学生以下無料。
 *アクセスクーポン、及び携帯割(携帯/スマホサイトの割引券提示)あり。
場所:港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウンガレリア3階
交通:都営地下鉄大江戸線六本木駅出口8より直結。東京メトロ日比谷線六本木駅より地下通路にて直結。東京メトロ千代田線乃木坂駅出口3より徒歩3分
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