都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「束芋 透明な歪み」 ポーラミュージアムアネックス
ポーラミュージアムアネックス
「束芋 透明な歪み」
2019/4/26~6/2
ポーラミュージアムアネックスで開催中の「束芋 透明な歪み」を見てきました。
1975年に生まれ、「にっぽんの台所」などの映像アニメーションで知られる束芋は、今回の個展に際し、自身初となる油絵を発表しました。
まるで古い邸宅に迷い込んだかのような錯覚に陥るかもしれません。初めの展示室でに置かれていたのは、古びた木製の椅子や机、それに棚などで、中央には大きなラグが敷かれ、その上を電球が仄かな明かりを灯していました。そして家具の上の壁や椅子に腰掛けるようにあったのが、新作となる油彩で、いずれも人をモチーフとしながらも、もぎ取られた片腕に口づけする頭部であったり、裂けた椅子から足が突き出しているなど、不気味な光景が描かれていました。
その奥には、「ふたり」と名付けられた映像のインスタレーションがあり、開閉を繰り返す箪笥を中心に、狭い室内、あるいは手足や脳、そして鳥などが登場する物語が展開していました。さらにもう1点、暗い通路の先にも「ループドロップ」と呼ばれる映像があり、そこでは白いタイルに囲まれた閉塞感のある空間で、裸の女性がショッキングな結末を迎える様子が映されていました。
束芋は近年、小説の挿絵や作品の写しなど、原作からインスピレーションを受けて描く作品には、原作に対する誤解等から、オリジナルとの間に「歪み」があるとしています。しかしそれこそがオリジナルと自らの作品をつなぐ「道」として、半ば肯定的に捉えてきました。
それを今回の個展では、全ての作品にオリジナルがあるにも関わらず、一度、関係を断ち切るため、可視化されていません。つまり元の原作の名が公開されていないわけです。
私自身、これまで束芋作品を見る際、殆ど原作を意識しませんでしたが、今回オリジナルを示さないことで、より奇異で、深い心の襞に溜まった何かを抉り取るような、どことない狂気的なものが表れているような気がしてなりませんでした。そして怖いもの見たさにしばらく作品を鑑賞していると、いつしか時間を忘れて何度も見入っていた自分に気がつきました。
新作の油絵をはじめ、オリジナルを公表しない展示方法など、また新たな束芋の展開が示された展示と言えるかもしれません。
入口のパネルのみ撮影が可能です。場内は一切出来ません。
なおpenオンラインアートニュースでも展覧会について簡単に紹介しました。ポーラミュージアムアネックスの会場写真が掲載されているため、展示の雰囲気が伝わるかもしれません。
6月2日まで開催されています。
「束芋 透明な歪み」 ポーラミュージアムアネックス(@POLA_ANNEX)
会期:2019年4月26日(金)~6月2日(日)
休館:会期中無休
料金:無料
時間:11:00~20:00 *入場は閉館の30分前まで
住所:中央区銀座1-7-7 ポーラ銀座ビル3階
交通:東京メトロ有楽町線銀座1丁目駅7番出口よりすぐ。JR有楽町駅京橋口より徒歩5分。
「束芋 透明な歪み」
2019/4/26~6/2
ポーラミュージアムアネックスで開催中の「束芋 透明な歪み」を見てきました。
1975年に生まれ、「にっぽんの台所」などの映像アニメーションで知られる束芋は、今回の個展に際し、自身初となる油絵を発表しました。
まるで古い邸宅に迷い込んだかのような錯覚に陥るかもしれません。初めの展示室でに置かれていたのは、古びた木製の椅子や机、それに棚などで、中央には大きなラグが敷かれ、その上を電球が仄かな明かりを灯していました。そして家具の上の壁や椅子に腰掛けるようにあったのが、新作となる油彩で、いずれも人をモチーフとしながらも、もぎ取られた片腕に口づけする頭部であったり、裂けた椅子から足が突き出しているなど、不気味な光景が描かれていました。
その奥には、「ふたり」と名付けられた映像のインスタレーションがあり、開閉を繰り返す箪笥を中心に、狭い室内、あるいは手足や脳、そして鳥などが登場する物語が展開していました。さらにもう1点、暗い通路の先にも「ループドロップ」と呼ばれる映像があり、そこでは白いタイルに囲まれた閉塞感のある空間で、裸の女性がショッキングな結末を迎える様子が映されていました。
束芋は近年、小説の挿絵や作品の写しなど、原作からインスピレーションを受けて描く作品には、原作に対する誤解等から、オリジナルとの間に「歪み」があるとしています。しかしそれこそがオリジナルと自らの作品をつなぐ「道」として、半ば肯定的に捉えてきました。
それを今回の個展では、全ての作品にオリジナルがあるにも関わらず、一度、関係を断ち切るため、可視化されていません。つまり元の原作の名が公開されていないわけです。
私自身、これまで束芋作品を見る際、殆ど原作を意識しませんでしたが、今回オリジナルを示さないことで、より奇異で、深い心の襞に溜まった何かを抉り取るような、どことない狂気的なものが表れているような気がしてなりませんでした。そして怖いもの見たさにしばらく作品を鑑賞していると、いつしか時間を忘れて何度も見入っていた自分に気がつきました。
新作の油絵をはじめ、オリジナルを公表しない展示方法など、また新たな束芋の展開が示された展示と言えるかもしれません。
入口のパネルのみ撮影が可能です。場内は一切出来ません。
現代アーティスト、束芋の新作展『透明な歪み』。注目は初の発表となる油彩。展覧会のタイトルは、なにを意味するのでしょうか? https://t.co/37mCiqFmf4 pic.twitter.com/YeuZTaiCFC
— Pen Magazine (@Pen_magazine) 2019年5月17日
なおpenオンラインアートニュースでも展覧会について簡単に紹介しました。ポーラミュージアムアネックスの会場写真が掲載されているため、展示の雰囲気が伝わるかもしれません。
6月2日まで開催されています。
「束芋 透明な歪み」 ポーラミュージアムアネックス(@POLA_ANNEX)
会期:2019年4月26日(金)~6月2日(日)
休館:会期中無休
料金:無料
時間:11:00~20:00 *入場は閉館の30分前まで
住所:中央区銀座1-7-7 ポーラ銀座ビル3階
交通:東京メトロ有楽町線銀座1丁目駅7番出口よりすぐ。JR有楽町駅京橋口より徒歩5分。
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