都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「特別展 美を紡ぐ 日本美術の名品」 東京国立博物館・本館
東京国立博物館・本館特別5室・特別4室・特別2室・特別1室
「特別展 美を紡ぐ 日本美術の名品 ―雪舟、永徳から光琳、北斎まで」
2019/5/3~6/2
新たな時代を迎えたことを祝して、東京国立博物館、文化庁、宮内庁三の丸尚蔵館の所蔵品より選ばれた、日本美術の「精華」(解説より)と言うべき作品が、東京国立博物館にて公開されています。
ひょっとすると東博に展示されたのは、2009年の「皇室の名宝展」以来のことかもしれません。冒頭、まさに観客を見下ろさんとばかりに立っていたのが、狩野永徳と常信による「唐獅子図屏風」でした。右隻、左隻ともに縦2.2メートル、横4.5メートルを超える巨大な画面に、右に二頭、左に一頭の唐獅子が描かれていて、特に右の二頭はまさに威風堂々たる姿で闊歩していました。
右が永徳の作とされ、伝承では秀吉の中国攻めの際、毛利輝元と和睦するために贈ったとも言われています。陣屋屏風であったとすれば、さぞかし主君の威容を引き立てていたのではないでしょうか。
国宝「檜図屛風」 狩野永徳筆 安土桃山時代・天正18年(1590) 東京国立博物館
永徳ではもう1点、「檜図屏風」も見逃せませんでした。金地を背景に、2本の檜が、それこそ枝葉を振り乱し、空間を引き裂くかのように伸びていて、枝の先はもはや触手のように伸びていました。これほど生き物に魂を宿したような迫力のある屏風も、ほかになかなかありません。
屏風では、室町時代に遡る「浜松図屏風」にも目が留まりました。同時代として遺品の少ないやまと絵の屏風で、砂浜に松が群生する海辺の四季の移ろいが素朴な表現されていました。また干し網や舟など人の生活を示す事物があるにも関わらず、一切無人であるのも印象的で、どことなく物悲しい気配も感じさせてなりません。
「花鳥遊魚図巻」 長沢芦雪筆 江戸時代・18世紀 文化庁
長沢芦雪の「花鳥遊魚図巻」にも魅せられました。一巻の絵巻に愛らしい雀や仔犬、それに鯉や亀、さらには薔薇や桜などの花を、滲みやぼかしなどを用いて描いていて、全体としては軽妙な筆致ながらも、細部の精緻な表現など、芦雪の高い画力を見ることが出来ました。広島の旧家に伝来し、芦雪が同地を旅した際に描いたとされています。
葛飾北斎の「西瓜図」も優品ではないでしょうか。画面の下には真っ赤な果実を見せる西瓜の半身があり、紙と包丁が置かれていて、その上には紐でぶら下がる西瓜の皮がくねりながら垂れていました。透明感のある皮をはじめ、果汁の染み込んだ紙の質感表現が見事で、謎めいた構図しかり、何度目にしても心を捉えてなりません。
書にも目を引く作品が少なくありませんでした。中でも私が強く惹かれたのは、継色紙「よしのかは」でした。小野道風の筆とされ、古今和歌集からの歌を写した断簡の1つでしたが、軽やかで典雅な書体はもとより、藍と薄藍の二枚の色紙の組み合わせ、ないし余白などが、実に美しい景色を見せていました。さもコンポジションを前にしたかのような錯覚を覚えるほどでした。
これらの一連の通常出展作品以外にも、久隅守景の「納涼図屏風」や池大雅の「前後赤壁図屏風」、さらに黒田清輝の「舞妓」や仁清の「色絵牡丹図水指」などが特別出品として21点ほど展示されていました。よって出展数は、カタログに掲載された通常出品20点と、21点の特別出品を合わせた41点でした。また、当初のチラシ(本エントリ最上段」)に掲載された展示替えの予定もなくなり、原則、全ての作品が会期を通して公開されています。
タイミング良く平日の夕方に観覧出来たため、場内には余裕がありました。現在、同館では、平成館で開催中の「特別展 東寺」の混雑に拍車がかかり、平日でも待ち時間が発生していますが、本展に関しては今のところ特に規制はかかっていないようです。
なお特別展とありますが、会場は平成館ではありません。本館1階の特別5室・特別4室、そして2階の特別2室・特別1室の4室に続いて展示が行われています。また本館内ゆえか、平常展のチケットで入場しようとする方がちらほら見受けられました。観覧に際しては本展専用のチケットが必要です。東寺展チケット、総合文化展チケットでは入場出来ません。
会期も残すところ約1週間となりました。6月2日まで開催されています。
「特別展 美を紡ぐ 日本美術の名品 ―雪舟、永徳から光琳、北斎まで」 東京国立博物館・本館特別5室・特別4室・特別2室・特別1室(@TNM_PR)
会期:2019年5月3日(金)~6月2日(日)
時間:9:30~17:00。
*毎週金・土曜は21時まで開館。
*入館は閉館の30分前まで。
休館:月曜日。但し5月6日(月・休)は開館。5月7日(火)は開館。
料金:一般1100(1000)円、大学生700(600)円、高校生400(300)円。中学生以下無料
*( )は20名以上の団体料金。
*本展観覧券で、会期中観覧日当日1回に限り、総合文化展(平常展)も観覧可。
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄上野駅より徒歩15分。
「特別展 美を紡ぐ 日本美術の名品 ―雪舟、永徳から光琳、北斎まで」
2019/5/3~6/2
新たな時代を迎えたことを祝して、東京国立博物館、文化庁、宮内庁三の丸尚蔵館の所蔵品より選ばれた、日本美術の「精華」(解説より)と言うべき作品が、東京国立博物館にて公開されています。
ひょっとすると東博に展示されたのは、2009年の「皇室の名宝展」以来のことかもしれません。冒頭、まさに観客を見下ろさんとばかりに立っていたのが、狩野永徳と常信による「唐獅子図屏風」でした。右隻、左隻ともに縦2.2メートル、横4.5メートルを超える巨大な画面に、右に二頭、左に一頭の唐獅子が描かれていて、特に右の二頭はまさに威風堂々たる姿で闊歩していました。
右が永徳の作とされ、伝承では秀吉の中国攻めの際、毛利輝元と和睦するために贈ったとも言われています。陣屋屏風であったとすれば、さぞかし主君の威容を引き立てていたのではないでしょうか。
国宝「檜図屛風」 狩野永徳筆 安土桃山時代・天正18年(1590) 東京国立博物館
永徳ではもう1点、「檜図屏風」も見逃せませんでした。金地を背景に、2本の檜が、それこそ枝葉を振り乱し、空間を引き裂くかのように伸びていて、枝の先はもはや触手のように伸びていました。これほど生き物に魂を宿したような迫力のある屏風も、ほかになかなかありません。
屏風では、室町時代に遡る「浜松図屏風」にも目が留まりました。同時代として遺品の少ないやまと絵の屏風で、砂浜に松が群生する海辺の四季の移ろいが素朴な表現されていました。また干し網や舟など人の生活を示す事物があるにも関わらず、一切無人であるのも印象的で、どことなく物悲しい気配も感じさせてなりません。
「花鳥遊魚図巻」 長沢芦雪筆 江戸時代・18世紀 文化庁
長沢芦雪の「花鳥遊魚図巻」にも魅せられました。一巻の絵巻に愛らしい雀や仔犬、それに鯉や亀、さらには薔薇や桜などの花を、滲みやぼかしなどを用いて描いていて、全体としては軽妙な筆致ながらも、細部の精緻な表現など、芦雪の高い画力を見ることが出来ました。広島の旧家に伝来し、芦雪が同地を旅した際に描いたとされています。
葛飾北斎の「西瓜図」も優品ではないでしょうか。画面の下には真っ赤な果実を見せる西瓜の半身があり、紙と包丁が置かれていて、その上には紐でぶら下がる西瓜の皮がくねりながら垂れていました。透明感のある皮をはじめ、果汁の染み込んだ紙の質感表現が見事で、謎めいた構図しかり、何度目にしても心を捉えてなりません。
書にも目を引く作品が少なくありませんでした。中でも私が強く惹かれたのは、継色紙「よしのかは」でした。小野道風の筆とされ、古今和歌集からの歌を写した断簡の1つでしたが、軽やかで典雅な書体はもとより、藍と薄藍の二枚の色紙の組み合わせ、ないし余白などが、実に美しい景色を見せていました。さもコンポジションを前にしたかのような錯覚を覚えるほどでした。
これらの一連の通常出展作品以外にも、久隅守景の「納涼図屏風」や池大雅の「前後赤壁図屏風」、さらに黒田清輝の「舞妓」や仁清の「色絵牡丹図水指」などが特別出品として21点ほど展示されていました。よって出展数は、カタログに掲載された通常出品20点と、21点の特別出品を合わせた41点でした。また、当初のチラシ(本エントリ最上段」)に掲載された展示替えの予定もなくなり、原則、全ての作品が会期を通して公開されています。
開催中の特別展「美を紡ぐ 日本美術の名品 ―雪舟、永徳から光琳、北斎まで―」 。教科書でおなじみの作品もあり、日本美術の流れを一望できる本展。ぜひお越しください。6/2まで。https://t.co/dOHxR9A75Z pic.twitter.com/Jipq3kcqjh
— トーハク広報室 (@TNM_PR) 2019年5月20日
タイミング良く平日の夕方に観覧出来たため、場内には余裕がありました。現在、同館では、平成館で開催中の「特別展 東寺」の混雑に拍車がかかり、平日でも待ち時間が発生していますが、本展に関しては今のところ特に規制はかかっていないようです。
なお特別展とありますが、会場は平成館ではありません。本館1階の特別5室・特別4室、そして2階の特別2室・特別1室の4室に続いて展示が行われています。また本館内ゆえか、平常展のチケットで入場しようとする方がちらほら見受けられました。観覧に際しては本展専用のチケットが必要です。東寺展チケット、総合文化展チケットでは入場出来ません。
会期も残すところ約1週間となりました。6月2日まで開催されています。
「特別展 美を紡ぐ 日本美術の名品 ―雪舟、永徳から光琳、北斎まで」 東京国立博物館・本館特別5室・特別4室・特別2室・特別1室(@TNM_PR)
会期:2019年5月3日(金)~6月2日(日)
時間:9:30~17:00。
*毎週金・土曜は21時まで開館。
*入館は閉館の30分前まで。
休館:月曜日。但し5月6日(月・休)は開館。5月7日(火)は開館。
料金:一般1100(1000)円、大学生700(600)円、高校生400(300)円。中学生以下無料
*( )は20名以上の団体料金。
*本展観覧券で、会期中観覧日当日1回に限り、総合文化展(平常展)も観覧可。
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄上野駅より徒歩15分。
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