都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
モーツァルト「ドン・ジョヴァンニ」 新国立劇場 2018/2019シーズン
新国立劇場 2018/2019シーズン
モーツァルト「ドン・ジョヴァンニ」
2019/5/19
新国立劇場でモーツアルトの「ドン・ジョヴァンニ」を聞いてきました。
今シーズンの「ドン・ジョヴァンニ」は、2008年にグリシャ・アサガロフによって演出されたプロダクションで、4度目の上演を迎えました。原作はスペインのセヴィリアに設定されているものの、アサガロフはドン・ジョヴァンニの存在を、18世紀に生きたカサノヴァに置き換えたため、イタリアのヴェネツィアが舞台とされていました。
演出は基本的にオーソドックスなスタイルで、歌手が特に忙しなく動くこともなく、歌をじっくり聴かせるものでしたが、ラストのシーンで印象に残ったのが、エルヴィーラの振る舞いでした。とするのも、例の地獄落ちの場面のあとの6重唱において、エルヴィーラが、ステージ上に残されていたドン・ジョヴァンニの遺品を身につけて去ったからでした。ここにエルヴィーラのドン・ジョヴァンニへの複雑な感情が示されていたのかもしれません。
歌手陣は総じて充実していました。中でもドン・オッターヴィオのフアン・フランシスコ・ガテルは、後半のアンナを慰めるアリアを、ニュアンスのある美しい歌声で見事に歌いきっていました。そして既にイタリアの各歌劇場で人気を博し、新国立劇場初登場で話題となったエルヴィーラの脇園も、尻上がりに調子を上げていました。特に2幕の「あの恩知らずは私を裏切り」では、エルヴィーラの変化する心境を、声量豊かな声と演技の両面で巧みを表現していて、役になりきった様子が客席までひしひしと伝わってきました。また常に安定した歌を披露したドンナ・アンナのマリゴーナ・ケルケジと、演技を含め芸達者だったマゼットの久保和範とツェルリーナの九嶋香奈枝のコンビも印象に残りました。
劇を支える音楽も充実していました。とりわけオーケストラを引っ張った、カーステン・ヤヌシュケの緩急のついた指揮が良かったのではないでしょうか。聴かせどころのアリアなどではテンポを落とし、腰を据えて歌手に寄り添う一方、重唱や劇が動くシーンでは、ギアを上げて、歯切れ良く、なおかつドラマティックな音楽を作り上げていました。また美しい音色を響かせていた木管を中心とする東フィルも、ヤヌシュケのタクトに良く反応して、モーツァルトの優美な音色を小気味良く奏でていました。若々しく、また瑞々しいモーツアルトの音楽だったと言えるかもしれません。
カーテンコールではエルヴィーラの脇園をはじめ、ドン・オッターヴィオのフランシスコ・ガテルを中心に、総じてどのキャストにも惜しみない拍手が送られていました。また脇園がプロンプターボックスの中へも手を差し伸べていたのも心にとまりました。
ルイジ・ペーレゴの美しい舞台装置も忘れられません。歌手、オーケストラ、そして舞台演出が良くまとまった好演でした。
新国立劇場(@nntt_opera) 2018/2019シーズン 「ドン・ジョヴァンニ」
作曲:ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
台本:ロレンツォ・ダ・ポンテ
指揮:カーステン・ヤヌシュケ
演出:グリシャ・アサガロフ
美術・衣裳:ルイジ・ペーレゴ
照明:マーティン・ゲプハルト
再演演出:三浦安浩
舞台監督:斉藤美穂
キャスト
ドン・ジョヴァンニ:ニコラ・ウリヴィエーリ、騎士長:妻屋秀和、レポレッロ:ジョヴァンニ・フルラネット、ドンナ・アンナ:マリゴーナ・ケルケジ、ドン・オッターヴィオ:フアン・フランシスコ・ガテル、ドンナ・エルヴィーラ:脇園彩、マゼット:久保和範、ツェルリーナ:九嶋香奈枝
合唱指揮:三澤洋史
合唱:新国立劇場合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
芸術監督:大野和士
2019年5月19日(日)14時 新国立劇場オペラ劇場
モーツァルト「ドン・ジョヴァンニ」
2019/5/19
新国立劇場でモーツアルトの「ドン・ジョヴァンニ」を聞いてきました。
今シーズンの「ドン・ジョヴァンニ」は、2008年にグリシャ・アサガロフによって演出されたプロダクションで、4度目の上演を迎えました。原作はスペインのセヴィリアに設定されているものの、アサガロフはドン・ジョヴァンニの存在を、18世紀に生きたカサノヴァに置き換えたため、イタリアのヴェネツィアが舞台とされていました。
演出は基本的にオーソドックスなスタイルで、歌手が特に忙しなく動くこともなく、歌をじっくり聴かせるものでしたが、ラストのシーンで印象に残ったのが、エルヴィーラの振る舞いでした。とするのも、例の地獄落ちの場面のあとの6重唱において、エルヴィーラが、ステージ上に残されていたドン・ジョヴァンニの遺品を身につけて去ったからでした。ここにエルヴィーラのドン・ジョヴァンニへの複雑な感情が示されていたのかもしれません。
歌手陣は総じて充実していました。中でもドン・オッターヴィオのフアン・フランシスコ・ガテルは、後半のアンナを慰めるアリアを、ニュアンスのある美しい歌声で見事に歌いきっていました。そして既にイタリアの各歌劇場で人気を博し、新国立劇場初登場で話題となったエルヴィーラの脇園も、尻上がりに調子を上げていました。特に2幕の「あの恩知らずは私を裏切り」では、エルヴィーラの変化する心境を、声量豊かな声と演技の両面で巧みを表現していて、役になりきった様子が客席までひしひしと伝わってきました。また常に安定した歌を披露したドンナ・アンナのマリゴーナ・ケルケジと、演技を含め芸達者だったマゼットの久保和範とツェルリーナの九嶋香奈枝のコンビも印象に残りました。
劇を支える音楽も充実していました。とりわけオーケストラを引っ張った、カーステン・ヤヌシュケの緩急のついた指揮が良かったのではないでしょうか。聴かせどころのアリアなどではテンポを落とし、腰を据えて歌手に寄り添う一方、重唱や劇が動くシーンでは、ギアを上げて、歯切れ良く、なおかつドラマティックな音楽を作り上げていました。また美しい音色を響かせていた木管を中心とする東フィルも、ヤヌシュケのタクトに良く反応して、モーツァルトの優美な音色を小気味良く奏でていました。若々しく、また瑞々しいモーツアルトの音楽だったと言えるかもしれません。
さきほど大喝采に包まれ、モーツァルトの代表作『#ドン・ジョヴァンニ』初日の幕があきました。公演はあと3回(5/19,22,25,26)ございます。※5/26は貸切公演のため、Z席を含めチケット販売はございません。皆様のご来場を心よりお待ちしております!#新国立劇場オペラ #nnttopera pic.twitter.com/VT378fzNhu
— 新国立劇場<オペラ> (@nntt_opera) 2019年5月17日
カーテンコールではエルヴィーラの脇園をはじめ、ドン・オッターヴィオのフランシスコ・ガテルを中心に、総じてどのキャストにも惜しみない拍手が送られていました。また脇園がプロンプターボックスの中へも手を差し伸べていたのも心にとまりました。
ルイジ・ペーレゴの美しい舞台装置も忘れられません。歌手、オーケストラ、そして舞台演出が良くまとまった好演でした。
新国立劇場(@nntt_opera) 2018/2019シーズン 「ドン・ジョヴァンニ」
作曲:ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
台本:ロレンツォ・ダ・ポンテ
指揮:カーステン・ヤヌシュケ
演出:グリシャ・アサガロフ
美術・衣裳:ルイジ・ペーレゴ
照明:マーティン・ゲプハルト
再演演出:三浦安浩
舞台監督:斉藤美穂
キャスト
ドン・ジョヴァンニ:ニコラ・ウリヴィエーリ、騎士長:妻屋秀和、レポレッロ:ジョヴァンニ・フルラネット、ドンナ・アンナ:マリゴーナ・ケルケジ、ドン・オッターヴィオ:フアン・フランシスコ・ガテル、ドンナ・エルヴィーラ:脇園彩、マゼット:久保和範、ツェルリーナ:九嶋香奈枝
合唱指揮:三澤洋史
合唱:新国立劇場合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
芸術監督:大野和士
2019年5月19日(日)14時 新国立劇場オペラ劇場
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )