「石内都展 Frida is」 資生堂ギャラリー

資生堂ギャラリー
「石内都展 Frida is」 
6/28-8/21



資生堂ギャラリーで開催中の「石内都展 Frida is」を見てきました。

2012年、メキシコのフリーダ・カーロ博物館の依頼を受け、亡き画家の遺品を撮影した写真家、石内都。中には衣服や装飾品だけでなく、薬品や化粧品なども含まれていたそうです。



いつものホワイトキューブが美しき色彩に包まれています。というのも、ギャラリーの壁面はそれぞれブルー、レッド、パープル、イエローの4色に塗り分けられ、そこに同じく色の鮮やかなフリーダの装身具なりドレスを捉えた写真が並んでいるからです。色と色とが互いに響き合います。素材の持つ色の力を効果的に引き出していました。

石内は現地で3週間ほど滞在。いずれも自然光の元、一つずつ35ミリフィルムにて撮影を行いました。結果的にフィルムは100本分にも達したそうです。



やはり印象に深いのはドレスでした。一つ一つの皺にはフリーダの体温や匂いなどがまだ残っているかのようです。あらゆるものよりも最も身体に近しい衣服こそ、フリーダの全てを記憶しているとも言えるのかもしれません。



ショールでしょうか。紫と黒のストライプの衣服にも目が留まりました。背景はひょっとすると青い空かもしれません。ひらりと弧を描いては靡いています。フリーダの魂が宙を舞っているかのようでした。



ヒビ割れたサングラスもフリーダの存在を滲ませています。表面には水色と青が写り込んでいます。これはひょうとすると博物館、すなわちフリーダがかつて住んだ家の青い壁なのかもしれません。

石内は「フリーダと対話」するように撮影をしたそうです。遺品への敬意とフリーダへの共感は写真からもひしひしと伝わるのではないでしょうか。


「フリーダ・カーロの遺品ー石内都、織るように」
http://legacy-frida.info

現地での撮影のプロセスは、映画「フリーダ・カーロの遺品ー石内都、織るように」にも収められました。そちらも一度、鑑賞出来ればと思いました。

「フリーダ 愛と痛み/石内都/岩波書店」

8月21日まで開催されています。

「石内都展 Frida is」 資生堂ギャラリー
会期:6月28日(火)~8月21日(日)
休廊:毎週月曜日
料金:無料
時間:11:00~19:00(平日)、11:00~18:00(日・祝)
住所:中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル地下1階
交通:東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅A2出口から徒歩4分。東京メトロ銀座線新橋駅3番出口から徒歩4分。
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「知の回廊」 東京大学総合研究博物館

東京大学総合研究博物館
「知の回廊」 
5/14〜



東京大学総合研究博物館で開催中の「知の回廊」を見てきました。

1996年に国内初の「教育研究型ミュージアム」(公式サイトより)として誕生した東京大学総合研究博物館。今年で開館20周年です。この5月に「知の回廊」としてリニューアルオープンしました。

一部の展示室を除き、撮影が可能でした。

まず目に飛び込んでくるのが巨大なガラスケースです。名は「知の回廊コレクションボックス」でした。



中には多種多様な標本がずらり。古墳時代の埴輪や古代イラクの壺が目立ちます。宙で弧を描くのがクジラの肋骨です。やはり大きい。ほかにも北アフリカないし中近東の木製農具などが吊り下がっています。



奥にはエチオピアのアウストラロピテクスの立体復元や、愛知から出土した縄文人の頭骨なども展示されていました。ジャンルでの区別はありません。いわば博物館全体を象徴する標本コレクションが収められています。



先に進みましょう。長くのびる廊下は「標本回廊」です。サブタイトルは「太陽系から人類、そして文明へ」。冒頭は「小惑星イトカワの模型」です。さらに鉱石、恐鳥モアの卵殻、ヌマワニの心臓、カワウソの骨格と続きます。貴重な標本も少なくありません。



第3室では「Qafqaz Neoliti (カフカズ ネオリティ)」なる展示が行われていました。舞台はアゼルバイジャンです。狩猟から農耕へと転換した最初の地域である西アジア、いわゆる三日月地帯を、東大チームが現地の科学アカデミーの協力を経て調査しました。



その成果の一部を報告しています。標本はアゼルバイジャンより付与されたものです。さらに調査プロセスについても映像などで紹介。単に標本を並べるだけではなく、研究の現場、ないしあり方にも踏み込んで見せています。



この研究の現場を展示するというのもコンセプトの一つです。その際たる例が「AMS公開ラボ」。AMSこと加速器質量分析装置が稼働する様子を見ることが出来ます。



大規模な装置です。高電圧を用いて放射性炭素を測定。そこから標本の年代を特定します。また実際のサンプルでしょうか。太い幹の断片も展示されていました。環境変動について知見を得られるそうです。



圧巻なのは「無限の遺体」のセクションでした。数多く並ぶ大型動物の剥製に骨標本。一体、何体あるのでしょうか。例えばシロサイ。かつて神戸市王子動物園で飼育されていたサイです。ナナコと呼ばれていました。2012年に寄贈を受けます。サイの骨格は貴重なため、研究や教育に活躍しているそうです。



ウシやアルパカの剥製も迫力があります。ウシはホルスタイン。最大級の個体です。家畜改良センターより提供されました。



それにしても知の回廊が扱う学問は幅広い。動物学、人類学、考古学、文化資源学などと、まさしく様々な知の分野を横断しながら展開しています。



沖ノ鳥島のサンゴの標本も目を引くのではないでしょうか。ほか関東地方の縄文土器も興味深い。縄文中期、後期、晩期と時代の異なる土器が並んでいました。



収蔵する標本は全400万点。うち一部が公開されているに過ぎませんが、それでも膨大です。中には標本が整理された棚そのものが展示物であったりします。リニューアルに際しては、収蔵と展示の機能を併せ持つ「収蔵型展示」(博物館ニュースより)を目指したそうです。「知の回廊」は博物館であると同時に研究室でもあります。

オープンを記念し、ほぼ毎週末、研究者による「記念連続講演会」(スケジュール)も行われています。こちらも参加無料です。あわせて出かけるのも良いかもしれません。



入場は無料です。東京大学総合研究博物館は2016年5月14日にリニューアルオープンしました。

「知の回廊」 東京大学総合研究博物館
会期:2016年5月14日(土)~
時間:10:00〜17:00。
 *入館は閉館の30分前まで。
休館:月曜日。但し月曜が祝日の場合は翌日、そのほか館が定める日。
料金:無料。
住所:文京区本郷7-3-1 東京大学本郷キャンパス内
交通:都営地下鉄大江戸線本郷三丁目駅より徒歩3分。東京メトロ丸ノ内線本郷三丁目駅より徒歩6分。東京メトロ南北線東大前駅より徒歩15分。
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7月の展覧会・ギャラリー

7月中に見たい展覧会をリストアップしてみました。

展覧会

・「西洋更紗 トワル・ド・ジュイ展」 Bunkamura ザ・ミュージアム(~7/31)
・「観音の里の祈りとくらし展2」 東京藝術大学大学美術館(7/5~8/7)
・「平面を超える絵画:インスタレーションと日本画的感性」 武蔵野美術大学美術館・図書館(~8/10)
・「第22回 秘蔵の名品 アートコレクション展 旅への憧れ、愛しの風景」 ホテルオークラ東京(7/27~8/18)
・「みんな、うちのコレクションです展」 原美術館(~8/21)
・「ミケランジェロ展 ルネサンス建築の至宝」 パナソニック汐留ミュージアム(~8/28)
・「生誕170周年 エミール・ガレ」 サントリー美術館(~8/28)
・「江戸絵画への視線ー岩佐又兵衛から江戸琳派へ」 山種美術館(7/2~8/21)
・「アルバレス・ブラボ写真展ーメキシコ、静かなる光と時」 世田谷美術館(7/2~8/28)
・「大妖怪展~土偶から妖怪ウォッチまで」 江戸東京博物館(7/5~8/28)
・「河井寬次郎と棟方志功  日本民藝館所蔵品を中心に」 千葉市美術館(7/6~8/28)
・「第5回 新鋭作家展 型にハマってるワタシたち」 川口市立アートギャラリー・アトリア(7/16~8/31)
・「12 Rooms 12 Artists UBSアート・コレクションより」 東京ステーションギャラリー(7/2~9/4)
・「しりあがり寿の現代美術 回・転・展」 練馬区立美術館(7/3~9/4)
・「竹岡雄二 台座から空間へ」 埼玉県立近代美術館(7/9~9/4)
・「よみがえれ!シーボルトの日本博物館」 国立歴史民俗博物館(7/12~9/4)
・「メアリー・カサット展」 横浜美術館(~9/11)
・「古代ギリシャー時空を超えた旅」 東京国立博物館(~9/19)
・「From Lifeー写真に生命を吹き込んだ女性 ジュリア・マーガレット・キャメロン展」 三菱一号館美術館(7/2~9/19)
・「聖なるもの、俗なるもの メッケネムとドイツ初期銅版画」 国立西洋美術館(7/9~9/19)
・「土木展」 21_21 DESIGN SIGHT(~9/25)
・「ルーヴルNo.9~漫画、9番目の芸術~」 森アーツセンターギャラリー(7/22~9/25)
・「海のハンター展ー恵み豊かな地球の未来」 国立科学博物館(7/8~10/2)
・「アカデミア美術館所蔵 ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たち」 国立新美術館(7/13~10/10)

ギャラリー

・「角文平 Proto-Planet」 アートフロントギャラリー(6/24~7/17)
・「Retrace our Steps-ある日人々が消えた街」 シャネル・ネクサス・ホール(~7/24)
・「日常のフィクション」 アキタマビ21(7/9~7/29)
・「草間彌生」 オオタファインアーツ(~7/30)
・「ライアン・ガンダー」 TARO NASU(7/1~7/30)
・「嵯峨篤 Perception」 SCAI THE BATHHOUSE(7/8~8/6)
・「風景の空間/LANDSCAPE SPACE」 児玉画廊(7/9~8/12)
・「会田誠展」 ミヅマアートギャラリー(7/6~8/20)
・「石内都展」 資生堂ギャラリー(~8/21)
・「文字の博覧会ー旅して集めたみんぱく 中西コレクション」 リクシルギャラリー(~8/27)
・「トランス/リアルー非実体的美術の可能性 vol.2 末永史尚×八重樫ゆい」 ギャラリーαM(7/16~8/27)
・「スミルハン・ラディック展」 TOTOギャラリー・間(7/8~9/10)

7月に始まる展覧会が目白押しです。国立西洋美術館で「聖なるもの、俗なるもの メッケネムとドイツ初期銅版画」展がはじまります。



「聖なるもの、俗なるもの メッケネムとドイツ初期銅版画」@国立西洋美術館(7/9~9/19)

メッケネムは15世紀から16世紀のドイツで活動した銅版画家です。デューラーと並び、版画の創始者として称されるそうですが、日本での知名度は高くありません。出品は版画、工芸などを含めて100点。あわせて同時代の版画家も参照します。版画好きには嬉しい展示となりそうです。

江戸東京博物館で「大妖怪展~土偶から妖怪ウォッチまで」が開催されます。



「大妖怪展~土偶から妖怪ウォッチまで」@江戸東京博物館(7/5~8/28)

妖怪をどちらかとすれば民俗学ではなく美術史の立場から紹介しようとする試みです。監修は安村敏信先生。注目は中世の絵画や絵巻です。平安末から鎌倉にかけての国宝「辟邪絵」や室町期の重文「百鬼夜行絵巻」などが展示されます。そのほか江戸の錦絵や絵画も多数。とかく人気の妖怪です。ひょっとするとこの夏、最も混雑する展覧会となるやもしれません。

シーボルトが母国に残したコレクションが里帰りします。国立歴史民俗博物館で「よみがえれ!シーボルトの日本博物館」が行われます。



「よみがえれ!シーボルトの日本博物館」@国立歴史民俗博物館(7/12~9/4)

江戸後期に二度に渡って医師として来日したシーボルト。その際に日本の自然や生活文化に関する資料を多数、ヨーロッパに持ち帰ったそうです。さらにシーボルトはその資料をもとに日本博物館を構想。実際に帰国後、アムステルダムやミュンヘンなどにおいて展示を実現させます。それらは後のジャポニスムなどの日本趣味に先立つ、初めての日本の展示でもありました。

そこに焦点を当てた展覧会です。シーボルト、存在こそ有名ではありますが、こうした日本の博物展示に取り込んでいたことは殆ど知られていません。シーボルトが見た日本観を通して、改めて当時の日本の文化を知る機会となりそうです。*歴博終了後は江戸東京博物館(9/13〜11/6)へ巡回。

たくさん挙げてしまいましたが、いつものように無理せず、時間に自由のある範囲内で、見たいと思う展覧会を廻って歩きたいと思います。

それでは今月もよろしくお願いします。
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