「クリスチャン・ボルタンスキー展」 東京都庭園美術館

東京都庭園美術館
「クリスチャン・ボルタンスキー アニミタスーさざめく亡霊たち」 
9/22~12/25



東京都庭園美術館で開催中の「クリスチャン・ボルタンスキー アニミタスーさざめく亡霊たち」を見てきました。

フランスの現代美術家、クリスチャン・ボルタンスキー(1944~)は、庭園美術館での展示に際し、「そこに関わる人たちの亡霊」(解説より)たちの存在に興味を持ったそうです。



亡霊は声、つまりささやきを通して旧朝香宮邸、つまり美術館の本館に立ち上がりました。形態からすれば音声インスタレーションです。タイトルは「さざめく亡霊たち」。館内の随所で声を発しています。



この声、場所が明示されているわけでもなく、俄かには分かりません。一見、いつもと変わらぬ部屋を進むと、殆ど突然に「私の声が聞こえますか?」と呼びかけてきました。



声は日本語です。発声は美しく、しかも礼儀正しい。極めて落ち着いています。実際のところ指向性スピーカーから発せられているため、特定の位置に立たなければ聞こえてきません。しかも語りは断片的です。何らかの物語が生まれるわけでもありません。しばらくすると、ひたすらに声を探し、やがて声の主であった人の存在を空想している自分に気がつきました。声は不思議と体の奥底へと染み込みます。亡霊はあまねく遍在しているのかもしれません。



2階へ上がると聞こえてくるのは強い心臓音でした。ささやきとは比べものにならないほどに大きい。ドクンドクンと波打っています。これがずばり「心臓音」という作品です。場所は書庫。赤い電球が点滅しています。確かに心臓です。音は規則正しいようで僅かな揺らぎがありました。不特定多数の人々のものだからでしょう。かねてよりボルタンスキーは世界中の人々の心臓音をサンプリングし、作品へと取り込んできました。人の死により個々の心臓音はやがて止まってしまいます。しかし音を繋げる、つまり多くの人を介すことで永遠に続くようにも思えなくはありません。ここに人の生死の歴史が刻まれていました。



亡霊が半ば仮の姿を現しています。「影の劇場」です。暗室の奥で踊るのは骸骨や鳥らしき生き物の影でした。解説に「死の舞踏」とありましたが、むしろ可愛らしい。ようやく住み家を見つけて喜んでいるようにも見えます。影絵自体はシンプルです。素材は針金や段ボールなどの日用品です。そこに光を当てています。



面白いのは見せ方でした。というのも影絵の部屋には2つの覗き穴があり、中を伺う仕掛けになっているのです。しかもどういうわけか覗き穴からは冷たい風が吹き出しています。それが殊更に寒々しい。まるで洞穴の入口を前にしているかのようでした。



新館の2つのホワイトキューブにも展示が続いています。1つは「帰郷」と「眼差し」。同じスペースでの展開です。ともかく吊り下がるのはヴェール。前に立ちはだかるように幾重にも連なっています。「眼差し」とあるように目がプリントされていました。目を見つつ、また見られつつ、時折、ヴェールをかき分けながら進むと、巨大なオブジェが現れました。これが「帰郷」。金色一色です。塊は山のように聳えています。



「眼差し」の目は証明写真から転用したものです。既に匿名、誰かは分かりません。そして「帰郷」は一体何なのでしょうか。大量の古着を、防風や防水、さらに災害避難用に使われるブランケットで覆ったものでした。ボルタンスキーにとって黄金は「富をもたらし、災いの元にもなり得る」(解説より)そうです。その表裏一体の関係を指し示しています。

草の匂いが会場外まで漏れ出ていました。「アニミタス」と「ささやきの森」です。作品自体は映像です。匂いの原因は床に敷き詰められた干し草でした。ふかふかです。足元は危うい。映像は干し草の上にある両面スクリーンに映し出されていました。



手前は青空の広がる平原。と言うより荒地です。空気が澄んでいます。標高2000メートル。チリのアタカマ砂漠でした。立ち並ぶのは風鈴です。タイトルの「アニミタス」はスペイン語で「小さな魂」を意味するとあります。とすれば、風鈴を魂に見立てているのかもしれません。チリリと音を発します。とてもか弱い。なす術もなく、ただひたすらに風に揺れています。



反対側の「ささやきの森」の舞台は香川の豊島での作品です。同じく無数の風鈴があります。しかしながら先の荒涼たる景色とは一変。鬱蒼とした森はむしろ生命に溢れています。元はボルタンスキーが同地で行った参加型のインスタレーションに由来するそうです。干し草の匂いを嗅ぎ、木漏れ日を浴び、風鈴の音に耳を傾けていくと、各々の場所の記憶が呼び覚まされるのかもしれません。しばしぼんやりとしながら見入りました。



写真撮影に関する情報です。ボルタンスキー展は会期中、平日のみ本館と新館の双方の撮影が出来ます。土日、及び祝日は本館の撮影が出来ません。(新館は全日撮影可。)

なお3年後の2019年には国立新美術館でもボルタンスキーの回顧展が行われるそうです。(全国巡回予定。)



本館入口右手、映像ルームにてボルタンスキーが自作について約30分ほど語っています。そちらもお見逃しなきようご注意ください。

12月25日まで開催されています。

「クリスチャン・ボルタンスキー アニミタスーさざめく亡霊たち」 東京都庭園美術館@teienartmuseum
会期:9月22日(木・祝)~12月25日(日)
休館:第2・第4水曜日(9/28、10/12・26、11/9・24、12/14)
時間:10:00~18:00。
 *但し11月25日(金)、26日(土) 、27日(日)は20時まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般900(720)円 、大学生720(570)円、中・高校生・65歳以上450(360)円。
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *小学生以下および都内在住在学の中学生は無料。
 *第3水曜日のシルバーデーは65歳以上無料。
 *同時開催の「アール・デコの花弁  旧朝香宮邸の室内空間」展も観覧可。
住所:港区白金台5-21-9
交通:都営三田線・東京メトロ南北線白金台駅1番出口より徒歩6分。JR線・東急目黒線目黒駅東口、正面口より徒歩7分。
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「ダリ展」 国立新美術館

国立新美術館
「ダリ展」 
9/14~12/12



国立新美術館で開催中の「ダリ展」を見てきました。

スペインのカタルーニャ地方、フランス国境に近いフィゲラスの裕福な一家に生まれたダリ。少年時代から絵画の才能を見出され、同地の風景や、バカンスで過ごした漁村カダケスなどを描きました。

その一枚が「アス・ピアンクからのカダケスの眺望」です。光に満ち溢れた港町。スーラを思わせる細かなモザイク状の筆触が広がります。当初はポスト印象派風の様式をとっていました。


サルバドール・ダリ「ラファエロ風の首をした自画像」 1921年頃 ガラ=サルバドール・ダリ財団

ラファエロにもシンパシーを感じていました。その名も「ラファエロ風の首をした自画像」です。後ろに広がるのはカダケス。色遣いは激しい。フォーヴィズムを思わせます。夕暮れ時でしょうか。空は赤く、また黄色に染まっていました。手前でポーズをとっているのがダリ本人です。流し目でこちらを見やります。首が殊更に長い。まるで海から突き出ているかのようでした。

マドリードの王立アカデミーに入学したダリは「反抗的」(解説より)な学生だったそうです。とは言え、この時代にキュビズムや未来派も学びます。後の映画監督のブニュエルや詩人のガルシア・ロルカとも交流。パリでピカソと会うなど旺盛に活動しました。


サルバドール・ダリ「ルイス・ブニュエルの肖像」 1924年 国立ソフィア王妃芸術センター

その友、ブニュエルを描いたのが「ルイス・ブニュエルの肖像」です。やや古典的な画風ながらも、身体のボリューム、顔の肉付きなどはキュビズムの摂取も伺えます。輪郭線は太く、写実的でもあります。先の自画像から僅か3年です。ダリの画風はかなり変化しました。


サルバドール・ダリ「少女の後ろ姿」 1926年 サルバドール・ダリ美術館

写実といえば「少女の後ろ姿」も同様です。ともかく目を引くのは黒髪です。一本一本、とぐろを巻くかようにうねっています。背中は強めの光が当たっているのか、やや赤らんでいました。一方の背後は朱を交えた闇が広がります。まるでバロック絵画のような印影です。モデルは妹のマリアです。ダリはこうした女性の後ろ姿を生涯に渡って描き続けました。

ブニュエルの映画「アンダルシアの犬」の脚本を共同で執筆。公開時には大きな反響を呼びます。この頃にシュルレアリストのグループに参加し、いわゆる「特定の事物に拘りつつ、複数のイメージを重ねる」(解説より)パラノイア的手法にて絵画を制作しました。ただダリの政治思想ほか、様々な問題により、いつしか仲間たちと不和になってしまったそうです。結果的に追放されてしまいます。

この頃が最もダリを特徴付ける作品が多いかもしれません。


サルバドール・ダリ「降りてくる夜の影」 1931年 サルバドール・ダリ美術館

例えば「降りてくる夜の影」です。彼方へと続く砂浜。岸壁が切り立っています。手前からは不穏な影が差し込みます。空は高く、澄んでいて青い。どことなく宇宙的です。まるで別の惑星の光景を前にしているかのようです。右端には像が立っています。包帯のような白い布で覆われていますが、果たして人間なのでしょうか。ダリの故郷の風景を舞台にしているそうですが、この世のようで、この世ならざる不思議な光景が表されていました。


サルバドール・ダリ「謎めいた要素のある風景」 1934年 ガラ=サルバドール・ダリ財団

「謎めいた要素のある風景」はどうでしょうか。見渡す限りの広大な地平。左手には赤い塔と糸杉が並んでいます。そして再び奇怪なる生き物のような影。空の深い青みと地面の黄色の対比は鮮やかです。強い光は壁を焦がしてもいます。手前に1人、男の姿がありました。彼だけが妙にリアルにも見えます。キャンバスへ向き合い、おそらくは絵筆を取っています。何とモデルはフェルメールだそうです。意外にもダリはかの画家を高く評価していました。

第2次世界大戦が勃発するとアメリカに亡命。1948年まで留まって制作を続けます。ニューヨーク近代美術館で展覧会も開催しました。

ダリはアメリカで活動の領域を広めます。注文肖像画も制作。挿画も描きました。さらにヒッチコックやディズニーの映画にも参加したほか、ファッションや宝飾の仕事なども手がけました。


サルバドール・ダリ「狂えるトリスタン」 1938年 サルバドール・ダリ美術館

「トリスタンとイゾルデ」は金とダイヤモンドによる宝飾品です。表ではかの2人が口付けをしています。また「魔術的技巧の50の秘密」や「ドン・キホーテ」、それに「不思議の国のアリス」の挿画も面白い。「狂えるトリスタン」はバレエの舞台美術のための作品です。黄色い建築物には3つの入口があります。奥は荒野、ないし闇に染まる海が広がっています。ちなみに本作の衣装はココ・シャネルがデザインしたそうです。

広島と長崎の惨状に衝撃を受けたダリは、自らを「原子核神秘主義画家」と名乗り、原子力の知見と神秘主義を結びつけた絵画を制作しようとします。


サルバドール・ダリ「ウラニウムと原子による憂鬱な牧歌」 1945年 国立ソフィア王妃芸術センター

うちの一枚が「ウラニウムと原子による憂鬱な牧歌」です。中央には首の曲がった頭部があり、中にははっきりと爆撃機が描かれています。爆弾が炸裂したのでしょう。炎と煙もあがっています。左には口を開けては嘆いているような男の顔も見えました。熱線で歪んだような事物もあります。青空は裂け目から覗くのみ。ほかは一面の闇です。野球はアメリカの象徴なのでしょうか。魑魅魍魎、不気味な雰囲気を感じてなりません。


サルバドール・ダリ「素早く動いている静物」 1956年頃 サルバドール・ダリ美術館

今回、私として一番感銘したのが「素早く動いている静物」でした。これも原子物理学への関心を元にした一枚。とは言え、モチーフは16世紀のオランダの画家、フロリス・ファン・スホーテンの「食物のあるテーブル」から着想を得ています。非常に秩序立った画面です。大きなテーブル上にはグラスやガラス瓶、それに刃物などが浮いています。奥の果物鉢はまるでブラックホールです。大きくねじれています。果物が彗星のごとく飛来してきました。いずれの描写も極めて写実性が高い。オランダの静物画を彷彿させるものがあります。全体は黄金分割の座標軸上に配置されているそうです。動きを伴いながらも、構図には隙がありません。

アメリカから戻り、居をカダケス近くの漁村に構えたダリ。晩年は古典芸術に回帰します。

一枚の大作に目を奪われました。「テトゥアンの大会戦」です。縦3メートルに横は4メートル弱。19世紀に起こったスペインのモロッコへの進軍をテーマとしています。元になる絵画はマリアノ・フォルトゥーニの同名の作品です。ダリは少年時代に同作を美術館で見て印象を受けたそうですが、それを後年になって自らの作品として表現しました。


サルバドール・ダリ「テトゥアンの大会戦」 1962年 諸橋近代美術館

怒涛のごとく進む軍隊。右上には長いサーベルが振り上がり、左には空を駆けるように馬が飛び上がっています。折れ曲がる細い脚が横へとのびます。彼方には聖母でしょうか。あまりにも巨大。もはや異次元の世界です。騎馬隊の顔は判然としませんが、中央の2人だけは別でした。とするのも、ダリ本人と妻のガラの顔が挿入されているからです。しかもガラは高笑いしては剣を手にしています。彼女こそ主役なのかもしれません。いかにも歴史画らしいスペクタクルな作品ですが、随所にダリ色が垣間見えるのも面白いところでした。

全200点。国内では10年ぶりの大規模な回顧展です。スペインやアメリカからも多く作品がやって来ています。思いの外に小品も目立ちましたが、スケールとしては申し分ありません。また映画や舞台、それに宝飾や衣装デザインの仕事など、ダリの制作を幅広く紹介しているのもポイントです。ダリの業績の多面性が浮き彫りになるような展覧会でした。

「アンダルシアの犬」、及び同じくブニュエルとの共作映画「黄金時代」、またヒッチコックの「白い恐怖」などの映像も展示されています。60分を超える大作も少なくありません。映像の観覧に際しては時間に余裕をもって出かけるのが良さそうです。


「メイ・ウエストの部屋」(撮影コーナー)

最後に混雑の情報です。既に先行した京都市美術館でも20万名を動員。東京展でも早々から多くの人が詰めかけています。



今回、私は平日の午後に出かけてきました。するとチケット、入場待機列もなく、館内はいささか混み合っていたものの、特に待つこともなく、比較的スムーズに観覧することが出来ました。



とは言え、土日は状況が異なるようです。これまでの最大の待ち時間は30分待ちです。土日は午後を中心に10分から20分弱程度の待機列が常に発生しています。公式アカウント(@s_dali_2016)がこまめに混雑の情報を発信しています。金曜の夜間開館なども有用となりそうです。

12月12日まで開催されています。

「ダリ展」@s_dali_2016) 国立新美術館@NACT_PR
会期:9月14日(水)~12月12日(月)
休館:火曜日
時間:10:00~18:00
 *毎週金曜日は夜20時まで開館。
 *10月21日(金)、10月22日(土)は20時まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1600(1400)円、大学生1200(1000)円、高校生800(600)円。中学生以下無料
 * ( )内は20名以上の団体料金。
 *9月17日(土)~19日(月・祝)は高校生無料観覧日。(要学生証)
住所:港区六本木7-22-2
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東京駅周辺4美術館にて「EDO TOKYO NIPPON アートフェス 2016」が開催されます

東京駅周辺、駅を挟んで東西南北に位置する出光美術館、三井記念美術館、三菱一号館美術館、東京ステーションギャラリーの4美術館。合同での新たなイベントです。「EDO TOKYO NIPPON アートフェス 2016」が開催されます。

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[EDO TOKYO NIPPON アートフェス 2016]概要
・主催者:EDO TOKYO NIPPON アートフェス 2016 実行委員会
・開催館:出光美術館、三井記念美術館、三菱一号館美術館、東京ステーションギャラリー
・期間:2016年10月22日(土)〜10月30日(日) *但し10月24日(月)を除く。

会期は10月22日(土)から10月30日(日)。平日と土日を問いません。開催館は上記の4館です。但し各館の休館日に当たる10月24日(月)は除きます。

[東京駅周辺ミュージアムバス]
・東京駅周辺エリア内を無料で巡回するミュージアムバスを運行します。
・バスに同乗するガイドが周辺の歴史スポットを紹介する「EDO TOKYO 今昔ガイド」を行います。
・運行時間:11時〜18時(木、金は19時まで。)約30分で美術館4館を巡回。



最大の目玉は4館を連絡するバスが発着することです。ステーションギャラリーと一号館美術館しかり、何も4館の徒歩移動は難しくありませんが、今回はより便利なバスが運行。オープンデッキの設置されたクラシックスカイバスです。さらにガイドによる「EDO TOKYO 今昔ガイド」も行われます。

[美術館割引クーポンプレゼント]
・4館とミュージアムバス内で、各館ですぐに使える「何度でも200円割引クーポン」をプレゼントします(フェス期間中限定)

[美術館巡回スタンプラリー]
美術館割引クーポンの裏側にある「スタンプラリー台紙」に3つのスタンプを集めた方に美術館オリジナルプレゼントを贈呈します。(各館先着500名様限定)
・出光美術館:「大仙がい展」オリジナルパッケージ石村萬盛堂「鶴の子」限定200個、または仙厓スタンプ。
・三井記念美術館:次回「日本の伝統芸能展」(11月26日より開催)の招待券。
・三菱一号館美術館:オリジナルクリアファイルとロートレックグッズ
・東京ステーションギャラリー:東京駅オリジナルペーパークラフト

[建築ツアー&ギャラリートーク&関連イベント開催]
各美術館でトークイベントほかツアーを実施します。
・出光美術館:学芸員による「大仙がい展」深読みギャラリートーク」10月27日(木)15時〜、28日(金)18時〜。
・三井記念美術館 :「五大明王ご朱印頒布」(1枚300円)10月22日(土)、23日(日)、29日(土)、 30日(日)10時30分〜12時30分、13時30分〜16時30分。
・三菱一号館美術館:「三菱一号館建築ツアー」10月28日(金)10時30分〜11時。(当日先着15名)
・東京ステーションギャラリー:「東京駅レンガタッチ&トーク+特別ツアー」10月28日(金)15時から。(当日先着15名)

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アートフェス期間中のイベントは上記の通りです。割引クーポンの配布をはじめ、プレゼント付きのスタンプラリー、トークイベントなどが開催されます。またフェス期間中、10月27日(木)、28日(金)は各美術館で開館時間が延長されます。

[アートフェス 2016期間中の各館展覧会]



「開館50周年記念 大仙がい展ー禅の心、ここに集う」
出光美術館
URL:http://www.idemitsu.co.jp/museum/honkan
会期:10月1日(土)~11月13日(日)
時間:10時〜18時(フェス期間中)。10月27日(木)、28日(金)は19時まで開館。



「松島瑞巌寺と伊達政宗」
三井記念美術館
URL:http://www.mitsui-museum.jp
会期:9月10日(土)~11月13日(日)
時間:10時〜17時。10月27日(木)、28日(金)は19時まで開館。



「拝啓 ルノワール先生ー梅原龍三郎に息づく師の教えPARISオートクチュール」
三菱一号館美術館
URL:http://mimt.jp
会期:10月19日(水)~2017年1月19日(月・祝)
時間:10時〜18時。10月27日(木)、28日(金)は20時まで開館。



「動き出す!絵画ーペール北山の夢―モネ、ゴッホ、ピカソらと大正の若き洋画家たち」
東京ステーションギャラリー
URL:http://www.ejrcf.or.jp/gallery/
会期:9月17日(土)~11月6日(日)
時間:10時〜18時。10月27日(木)、28日(金)は20時まで開館。

東京駅周辺の4美術館ではこれまでにも七夕フェアや学生無料ウィークなどの様々なイベントを行ってきました。また2019年には現在建て替え中のブリヂストン美術館もリニューアルオープンします。今後も連携しての企画に期待出来そうです。


アートフェス期間中に運行される「クラシックスカイバス」

東京駅周辺4美術館合同イベント、「EDO TOKYO NIPPON アートフェス 2016」は10月22日(土)にスタートします。

[EDO TOKYO NIPPON アートフェス 2016]
・開催館:出光美術館、三井記念美術館、三菱一号館美術館、東京ステーションギャラリー
・期間:2016年10月22日(土)〜10月30日(日) *但し10月24日(月)を除く。
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「モードとインテリアの20世紀」 パナソニック汐留ミュージアム

パナソニック汐留ミュージアム
「モードとインテリアの20世紀ーポワレからシャネル、サンローランまで」
9/17~11/23



パナソニック汐留ミュージアムで開催中の「モードとインテリアの20世紀」を見てきました。

ファッションデザイナーの森英恵が石見地域の出身という縁もあり、同地の島根県立石見美術館には多くのファッションの資料が収められているそうです。

20世紀における西欧のファッション史をインテリアを交えて俯瞰しています。出品は130点。ほぼ全てが島根県立石見美術館のコレクションでした。

重厚なドレスを纏っていた19世紀末の女性たち。20世紀に入ると生活スタイルの変化から、より機能的な衣服が求められるようになります。身体の自然なラインを意識させるのも特徴です。マリアノ・フォルチュニイの「プリーツ・ドレス『デルフォス』」が美しい。真紅に染まるドレス。造りはゆったりしています。素材はサテンです。おそらくは肌触りも心地良いことでしょう。僅かな揺らぎも身体に馴染むための工夫なのかもしれません。

一部展示室の撮影が可能でした。


「フェミナ」1932年2月号 ほか

マリア・リカルツのバックも可愛らしい。ビーズ製です。何もファッションはドレスだけではありません。ほかブローチ、ネックレス、靴などの装身具も充実しています。また当時の「レ・モード」や「フェミナ」などのファッション誌などの資料も目を引きました。


ジョージ・ホイニンゲン=ヒューネ「ヴィオネ」 1939年 ほか

1920年代に入ると装飾的なドレスにコートを羽織るスタイルが流行します。さらに1930年代は細身のロングドレスが人気を集めました。トレンドは目まぐるしく変化していたようです。


マドレーヌ・ヴィオネ「イブニング・ドレス、ストール」 1938年

マドレーヌ・ヴィオネの「イブニング・ドレス、ストール」はどうでしょうか。金のモールはブドウの房を表現しているのかもしれません。気品があります。また隣のピンク色のドレスの紋様はウサギでした。何やら賑やかです。動物のモチーフも巧みに取り込んでいます。


スザンヌ・タルボット「イブニング・コート」 1925年頃

スザンヌ・タルボットの「イブニング・コート」が豪華でした。地は黒。そこに金糸でヤシの葉や小花を刺繍しています。袖と衿は毛皮です。こうした黒と金の配色、ないし植物のモチーフは、アール・デコのスタイルを踏襲しているそうです。東洋などへの異国趣味もファッションに影響を与えました。


「テニス・ウェア」 1926年頃 ほか

機能性に関してはテニスウェアが挙げられるかもしれません。19世紀末の女性は何とコルセットをしてテニスをしていました。さぞかし窮屈なことだったでしょう。1919年、ウィンブルドンに出場したスザンヌ・ランランはゆったりとした綿のワンピースを着用。見事に優勝を果たします。それを機に一般の女性用のウェアも変化しました。

さらに時代を進めて第二次世界大戦後です。戦時下で休業していたメゾンも復活。ディオール、バレンシアガなどが市場を拡大します。その後、1960年頃になるとオートクチュールにもミニスカートが登場。元はロンドンの若者の間で流行していたそうです。ハイ・ファッションも大衆文化の動向を無視することは出来ません。さらに素材も多様化。ビニール、金属、紙などを用いたドレスも登場しました。

「モードとインテリアの20世紀展/美術出版社」

60年代は近未来を志向したデザインが多いのも特徴です。飛行機や宇宙開発にも目が向けられた時代。SF的とも言えるかもしれません。洗練されながらも、実用的なファッションが生み出されます。


「海水浴用シューズ」 1920年頃

インテリアもファッションに華を添えていました。いつもながらに展示の美しい汐留ミュージアムのことです。会場演出には抜かりありません。


「アールデコ草花文ブロンズマウント付クリスタライズドグレイス台の電気スタンド」 1925年

11月23日まで開催されています。

「モードとインテリアの20世紀ーポワレからシャネル、サンローランまで」 パナソニック汐留ミュージアム
会期:9月17日(土)~11月23日(水・祝)
休館:毎週水曜日。但し11月23日は開館。
時間:10:00~18:00 *入場は17時半まで。
料金:一般1000円、大学生700円、中・高校生500円、小学生以下無料。
 *65歳以上900円、20名以上の団体は各100円引。
 *ホームページ割引あり
住所:港区東新橋1-5-1 パナソニック東京汐留ビル4階
交通:JR線新橋駅銀座口より徒歩5分、東京メトロ銀座線新橋駅2番出口より徒歩3分、都営浅草線新橋駅改札より徒歩3分、都営大江戸線汐留駅3・4番出口より徒歩1分。
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「明治有田ー超絶の美」 泉屋博古館分館

泉屋博古館分館
「明治有田ー超絶の美」 
9/24~12/4



泉屋博古館分館で開催中の「明治有田ー超絶の美」を見てきました。

明治時代、欧米各国でも人気を博した有田磁器。今年でおおよそ創業400年を迎えました。


有田「染付蒔絵富士山御所車文大花瓶」 1873(明治6)年 有田ポーセリンパーク

驚くほどに巨大な有田焼がやって来ました。「染付蒔絵富士山御所車文大花瓶」です。図版ではまるで分かりませんが、高さは何と180センチ。身長を超えるほどです。もちろん明治有田では最大級。青は染付、富士山と龍を表しています。その上を覆うのは蒔絵です。桜で漆塗りでした。ウィーン万国博覧会の会場写真に本作と同じ花瓶が写っているそうです。とすると出品作と考えて良いのかもしれません。

有田が世界で注目を浴びた一つの切っ掛けが万国博覧会でした。ウィーンを皮切りに、フィラデルフィアやパリの万国博覧会へも出品。大きな成功を得ます。実際にパリ万国博に出されたのが「金彩雲透彫天女陽刻文三足壺」です。器は内と外の2つ。外は雲の透彫りです。内側は天女のレリーフが彫られています。つまり外器の中に内器を入れれば、雲越しに天女が垣間見えるという仕掛けです。何とも心憎い。海外でも賞賛されたのではないでしょうか。


香蘭社(辻勝蔵)「色絵菊花流水文透台付大花瓶(対)」 1876(明治9)年頃 個人蔵

明治有田を牽引したのは2つの製造会社でした。1つが「香蘭社」です。明治8年に有田焼の有力窯業者らが設立。当初から輸出を志向していたのでしょう。個人の窯では叶わなかった大量生産にも対応します。日本最初の有田焼メーカーとして万国博へも意欲的に作品を送り出しました。

しかし僅か5年もしない間に会社は分裂。経営方針などで対立があったそうです。メンバーの一部は離脱し、新たに「精磁会社」を立ち上げます。結果的に「精磁会社」は設立後、約20年で終焉。一方の「香蘭社」は現在まで続くメーカーとして生き残りました。


精磁会社「金彩パルメット桐文チュリーン」 1879(明治12)〜1897(明治30)年頃 個人蔵

「精磁会社」は最新鋭のフランス式設備を導入したそうです。やや短い制作期間ながらも多くの傑作を生み出しました。特に目を引くのは洋食器です。華麗でかつモダンで美しい。紋様は極めて精緻です。鹿鳴館の饗宴にも供されます。宮中へも納められました。

香蘭社では作品の元になる図案が出ていました。「色絵亀甲地羽根文瓶」はほぼ図案と同等の紋様が表現されています。これらの図案、今回の展示のために新たに調査されたものです。ゆえに初公開が多数。また興味深いのは図案と必ずしも一致しない作品が多いことです。いわゆるアイデアの一つとして位置付けられていたのでしょうか。


香蘭社「色絵麒麟花喰鳥文鳳凰形トレイ・コーヒーセット」 1875(明治8)年~1880年 株式会社賞美堂本店

イスラムやギリシャの紋様を取り入れた作品も多い。世界をあっと驚かせた明治有田の超絶技巧。よほどの高い技術に裏打ちされていたのでしょう。今では再現が難しいものも少なくありません。


精磁会社「色絵鳳凰花唐草文透彫大香炉」 1879(明治12)年~1897(明治30)年 個人蔵

図案などを入れると100点超。いつもの手狭なスペースですが、思いの外にボリュームもありました。

「明治有田ー超絶の美/世界文化社」

ちょうど上野の芸大美術館でも明治の工芸を集めた「驚きの明治工藝」展が開催中です。(10/30まで)あわせて観覧するのも良さそうです。



12月4日まで開催されています。

「明治有田ー超絶の美」 泉屋博古館分館
会期: 9月24日(土)~12月4日(日)    
休館:月曜日。但し10/10は開館、10/11は休館。
時間:10:00~16:30(入館は16時まで)
料金:一般800(640)円、学生600(480)円、中学生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体。
住所:港区六本木1-5-1
交通:東京メトロ南北線六本木一丁目駅北改札1-2出口より直通エスカレーターにて徒歩5分。
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10月の展覧会・ギャラリー

10月に見たい展覧会をリストアップしてみました。

展覧会

・「あざみ野コンテンポラリー vol.7 悪い予感のかけらもないさ展」 横浜市民ギャラリーあざみ野(10/7~10/30)
・「動き出す!絵画ーペール北山の夢ーモネ、ゴッホ、ピカソらと大正の若き洋画家たち」 東京ステーションギャラリー(~11/6)
・「松島瑞巌寺と伊達政宗」 三井記念美術館(~11/13)
・「朝井閑右衛門展 空想の饗宴」 練馬区立美術館(~11/13)
・「大仙厓展ー禅の心、ここに集う」 出光美術館(10/1~11/13)
・「NEW VISION SAITAMA 5 迫り出す身体」 埼玉県立近代美術館(~11/14)
・「香月泰男と丸木位里・俊、そして川田喜久治ーシベリアシリーズ・原爆の図・地図」 平塚市美術館(~11/20)
・「河口龍夫ー時間の位置」 川口市立アートギャラリー・アトリア(10/8~11/26)
・「KENPOKU ART 2016 茨城県北芸術祭」 茨城県北地域6市町内各会場(~11/20)
・「月ー夜を彩る清けき光」 渋谷区立松濤美術館(10/8~11/20)
・「モードとインテリアの20世紀ーポワレからシャネル、サンローランまで」 パナソニック汐留ミュージアム(~11/23)
・「特別展 禅ー心をかたちに」 東京国立博物館(10/18~11/27)
・「クリストとジャンヌ=クロード アンブレラ 日本=アメリカ合衆国 1984~91」 水戸芸術館(10/1~12/4)
・「速水御舟の全貌ー日本画の破壊と創造」 山種美術館(10/8~12/4)
・「ピエール・アレシンスキー展」 Bunkamura ザ・ミュージアム(10/19~12/8)
・「さいたまトリエンナーレ2016」 さいたま市内各会場(~12/11)
・「藤田嗣治展 東と西を結ぶ絵画」 府中市美術館(10/1~12/11)
・「漆芸名品展~うるしで伝える美の世界」 静嘉堂文庫美術館(10/8~12/11)
・「BODY/PLAY/POLITICS」 横浜美術館(10/1~12/14)
・「ゴッホとゴーギャン展」 東京都美術館(10/8~12/18)
・「色の博物誌」 目黒区美術館(10/22~12/18)
・「拝啓 ルノワール先生ー梅原龍三郎に息づく師の教え」 三菱一号館美術館(10/19~2017/1/9)
・「レオナール・フジタとモデルたち」 DIC川村記念美術館(~2017/1/15)
・「クラーナハ展 500年後の誘惑」 国立西洋美術館(10/15~2017/1/15)
・「デトロイト美術館展~大西洋を渡ったヨーロッパの名画たち」 上野の森美術館(10/7~2017/1/21)
・「デザインの解剖展:身近なものから世界を見る方法」 21_21 DESIGN SIGHT(10/14~2017/1/22)
・「マリー・アントワネット展 美術品が語るフランス王妃の真実」 森アーツセンターギャラリー(10/25~2017/2/26)

ギャラリー

・「ノザイナー かたちと理由」 ギンザ・グラフィック・ギャラリー(~10/31)
・「ミリアム・カーン展」 ワコウ・ワークス・オブ・アート(10/1〜11/5)
・「フィットネス. | ftnss.show」 アキタマビ21(10/2〜11/12)
・「樫木知子展」 オオタファインアーツ(~11/19)
・「Inaugural Exhibition: MOVED」 タカ・イシイギャラリー(10/21〜11/19)
・「水屋・水塚ー水防の知恵と住まい展」 リクシルギャラリー(~11/26)
・「リビングルーム2 ミシェル・ブラジー展」 メゾンエルメス(〜11/27)
・「ホセ・パルラ Small Golden Suns」 ユカ・ツルノ・ギャラリー(~12/3)
・「トランス/リアルー非実体的美術の可能性 vol.5 伊東篤宏・角田俊也」 ギャラリーαM(10/29~12/3)
・「蜷川実花展 Light of」 小山登美夫ギャラリー(10/21〜12/3)
・「小林正人 Thrice Upon A Time」 シュウゴアーツ(10/21〜12/4)
・「トラフ展 インサイド・アウト」 TOTOギャラリー・間(10/15〜12/11)
・「伊藤隆介 天王洲洋画劇場」 児玉画廊|天王洲(10/29〜12/24)

さて10月。一枚のチラシを見て興味を引かれたのがBunkamuraです。ベルギーの現代美術家、ピエール・アレシンスキーの個展がはじまります。



「ピエール・アレシンスキー展」@Bunkamura ザ・ミュージアム(10/19~12/8)

1927年生まれのアレシンスキーは現在、90歳近く。それでも旺盛に活動を続けているそうです。時に文字や言葉を取り込み、動きを伴った即興性のある絵画はインパクトも強い。日本初の回顧展でもあります。

国内では過去最大スケールとなります。国立西洋美術館で「クラーナハ展」が開催されます。



「クラーナハ展 500年後の誘惑」@国立西洋美術館(10/15~2017/1/15)

ドイツ・ルネサンスの画家、クラーナハ。油彩は40点です。ほか素描、版画をあわせると100点ほどの作品が集まります。また「ホロフェルネスの首を持つユディト」は3年間の修復を経ての公開。さらにデューラーらの同時代の画家を参照するとともに、クラーナハに触発された近現代の作家までを網羅するそうです。その点ではチャレンジングな企画とも言えるかもしれません。

会期が春から秋に変更されました。六本木アートナイトが10月23日(金)よりはじまります。



「六本木アートナイト」@六本木ヒルズ・東京ミッドタウンほか六本木一帯(10/21〜10/23)

メインアーティストは名和晃平。日程は1日延長しての3日間です。今年も六本木界隈にて様々なプログラムが行われます。(リリース

なおアートナイト初日、同じく六本木に新たなギャラリースペース、「complex665」がオープンします。

「小山登美夫ギャラリー、シュウゴアーツ、タカ・イシイギャラリーが入居する『complex665』が六本木に誕生!」@東京アートビート

移転オープンしてくるのは上記の3ギャラリー。場所はオオタファインアーツなど入居するピラミデビルのすぐ近くです。

3ギャラリーはアートナイトにも参加し、21日(金)と22日(土)の2日間は21時まで営業時間を延長します。ピラミデのほぼ向かいにはギャラリーモモもあります。「complex665」の誕生で六本木がギャラリーの一大集積地と化しそうです。

それでは今月も宜しくお願い致します。
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