◆ちゃんとしゃべれ!治納由気(はるなゆき)◆

変な日本語、敬語もどき、崩れていく日本語、そして、正しい日本語とハムスター。

「やられる」がだめなら「おられる」は?

2009-01-28 20:04:48 | めちゃくちゃな敬語
                        参りやした
 「○○をやられる」なんて敬語じゃないよぉ~と書いたところ、「おられる」はどうなの? というご質問を複数のかたから頂きました。例えば、「△△さん、おられますか」とか、「△△さんは~ておられますが」とか、よく聞きますよね。果たしてこれも誤りなのか? いいえ、誤りではありません。では、「~ております」はただの丁寧語? それとも謙譲語? 「~ており」「~ておらず」は?
 手元の辞書によれば、「~ております」「~ておられる」は古風でやや丁寧な言い方ということです。でも、私(私の世代)は、「~ております」は謙譲語だと習いましたから、世代によってずれがあるかもしれません。「~ておられる」は、動作・状態の継続を表す「~ている」の文語的な言い方「~ておる」に尊敬の助動詞「れる」が付いて尊敬語化したものです。そして、「~ており」「~ておらず」は尊敬でも謙譲でもない、「~ていて」「~ていなくて」の文語的な言い方です。こういう整理でいかがでしょうか?
 もちろん、異論のあるかたもいらっしゃるでしょう。以前、「~ております」は謙譲語なので、「~ておられる」という尊敬表現に違和感を持つ人がいるという話をNHKの番組で聞いたことがあります。放送業界というのは冷静にきちんと考えるのが苦手なようで、この「違和感を持つ人がいる」という話から、「~ておられる」は誤用だ、「~ており」「~ておらず」も変だというふうに流れていき、あっという間に「~ていて」「~ていなく」に移っていきました。
 はいっ、ここで「~ていなく・・・?」と引っ掛かったかた、素晴らしい! 「~ていて」はいいのですが、「~ていなく」は何とも間抜けな言い方ですね、日本語として成立していません。そこそこ経験を積んだ真面目なアナウンサーが「~ていなく」なんて言うのですから、開いた口がふさがりませんよ( ̄д ̄)。しかも、「~ております」は謙譲語なのでうんぬんという流れなら「いらっしゃっております」なんて言えないはずなのに堂々と言うのですから、全く矛盾しています。
 私は「~ております」をもう何十年も謙譲語として使っていますから、「いらっしゃっております」のような尊敬語に謙譲語がくっついた表現は受け入れられません。それでも、それでもですよ、「~ておられる」の場合、「やられる」の「やる」とは違い、「いる」の古風でやや丁寧な言い方「おる」に「れる」が付いているのなら誤りとは言えず、コーディネートという点から見ても問題ない、よって、尊敬表現として認められます。
 まぁ、大きな声で「~ておられる」は誤用だと言う人がいる以上、敬意の度合いが低い、万人に通じる尊敬語ではない、と思っておいたほうが無難でしょう。確かに、「△△さん、おられますか」よりも「△△さん、いらっしゃいますか」のほうがずっといいですし、「△△さんは~ておられますが」よりも「△△さんは~ていらっしゃいますが」のほうがいいと思います。もともと「れる・られる」はそんなに上等ではありませんからね。
 ちなみに、「△△さんは~ておられますが」というセリフ、国会中継などでよく耳にしませんか? そのせいか・・・敬意の度合いがますます低くなっているような感じもしますから、敬意をちゃんと込めたいのなら「△△さんは~ていらっしゃいますが」をお薦めします(⌒・⌒)。
コメント (2)
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