◆ちゃんとしゃべれ!治納由気(はるなゆき)◆

変な日本語、敬語もどき、崩れていく日本語、そして、正しい日本語とハムスター。

「柴先生とお会いしたことは?」って?

2011-09-14 20:50:32 | めちゃくちゃな敬語
                                     アイボ

 「会う」「お会いする」「お会いになる」、同じ意味でもいろいろな言い方があり、それをよく理解していれば、話し手は少ない言葉で多くの情報を伝え、聞き手は多くの情報を受け取ることができます。逆に言えば、その話し手にふさわしい言い方がおのずと決まるということです。
 「予約したらお会いしていただけないと思いまして」は、話し手は学生ですから、「お会いいただけない」と「会っていただけない」のどちらがふさわしいかというと「会っていただけない」ですね。幾ら優秀な学生でも、学生は学生、やはり「予約したら会っていただけないと思いまして」でしょう。それを、無理して今風の敬語(もどき)で書くからおかしくなったのですよ。
 「△△部長がお会いしたいそうです」は、聞いた瞬間はどういうことかやはり分からなくて、△△部長と○○検事が話をしている場面を見て、△△部長は○○検事の上司なのだなと分かりました。また、単純に考えれば「△△部長がお会いになりたいそうです」ですが、△△部長と○○検事が「会う」などという穏やかな場面ではなく、△△部長は○○検事を厳しく問いただしていましたから、この場合、「△△部長がお呼びです」がふさわしいわけです。
 「相棒」の右京さんが言った「殺された柴先生とお会いしたことは?」は、正しくは「殺された柴先生とお会いになったことは?」ですが、これについても、もうちょっと考えてみましょう。殺された柴先生はピアニスト、右京さんが質問した相手はピアノの調律師、この人が容疑者なのではないかと思っただけですから尊敬表現のはず、なのに「お会いしたことは?」はおかしい、それは前回も書きました。でも、その前に、「柴先生と」に「お会いしたこと」と続けることがすでにおかしいと思いませんか?
 目下の人が目上の人に「お会いしたこと」があるとかないとか言うのなら、「柴先生と」ではなく「柴先生に」です。言い換えれば「柴先生に御目に掛かる」ですが、「柴先生と御目に掛かる」とは言いませんよね、同じように、「柴先生と」ではなく、「殺された柴先生にお会いしたことは?」です。
 私は、まずそこで引っ掛かりました。質問の相手と同じ立場で、共通の目上の人に会ったことがあるかないかと尋ねるのなら「殺された柴先生にお会いしたことは?」です。そして、次に、登場人物の立場、ピアニストと調律師の関係、ストーリーを考え、「殺された柴先生にお会いになったことは?」より「殺された柴先生とお会いになったことは?」がふさわしいと思ったわけです。
 右京さんがちゃんと「殺された柴先生とお会いになったことは?」と言ってくれていたらどんなによかったか(ーー;)。「あなたは知識があるのかないのか分からない人ですね」と言われた右京さんが「中途半端にあるやつだと思ってください」と笑顔で言う場面なんて、いいですよねぇ(⌒・⌒)。こういうのを書けるのですから、あとは敬語について少し勉強すればいいのですよ。
コメント
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