◆ちゃんとしゃべれ!治納由気(はるなゆき)◆

変な日本語、敬語もどき、崩れていく日本語、そして、正しい日本語とハムスター。

「彼の判断力が空白の57分を作った」って?

2012-06-17 09:06:49 | 気になる言葉、具体例
                                電波感染だもんね

 「影響力を及ぼす」というおかしな言い方を実に多くのアナウンサーやキャスターがします。もちろん、ナレーターも。ひどいのになると「影響力を与える」です。どちらも「力」が余計で、「影響を及ぼす」が正しいのですが、こんな簡単な間違いでも、正誤を気にしない放送業界ではあっという間に広がりました。
 最近ちょいちょい聞こえてくるのは「想像力をかきたてる」です。「想像力をかきたてる女性の姿」というナレーションは、NHKの「日曜美術館」にて、フェルメールの絵の解説で聞きました。この番組のナレーション原稿を書いている人、そして、そのまま読む人も、かなり問題がありますね。これもNHKですが、「地球ドラマチック」のナレーションは「想像力をかきたてられてきました」です。
 「想像力かきたてられる」と言ったのは羽鳥慎一、「私たちの想像力をかきたて続けます」は「THE世界遺産」のナレーション、「想像力を膨らませる」と言ったのは西尾アナ、ほかにも、「見る者の想像力をかきたてる」「想像力をかきたてる味わい」「確かに○○だろうなという想像力は働く」など、どれもこれもみんな「力」が余計ですよ~(ーー゛。
 「底上げを重視し、競争力をあおらない」というのも聞いたことがありますが、これも単純に「力」が余計で、正しい言い方は「底上げを重視し、競争をあおらない」です。人をあおる、けんかをあおる、競争をあおる、これが、何をどうしたら「競争力を」になるんだか( ̄д ̄)?
 では、「感染力の速さ」はどうですか。感染には、飛沫感染や空気感染など、幾つかの経路があり、人から人へ伝染するのに時間のかかるもの、かからないもの、いろいろあります。飛沫感染より空気感染のほうが速いというのは何となく想像できますね。素早く広がるということは、それだけその病原体の「感染力が強い」ということになります。「速さ」と言うのなら「感染の速さ」ですね。
 それから、以前、「冷静な判断力」という例について書いたことがありますが、「力」なら、あるかないか、強いか弱いか、大きいか小さいか、高いか低いかで、「冷静な」なら「冷静な判断」であり、「力」が余計です。あるいは、「判断力」に意味があるのなら、「冷静な判断をする力」または「冷静に判断する力」と言うしかありません。
 そして、ついにここまで来た変な「~力」・・・「アンビリバボー」の「彼の判断力が空白の57分を作った」というナレーション。「彼」というのは座礁した豪華客船の船長で、この船長の避難の決断が遅れたために被害が拡大したという話です。船長は事態を甘く見ていて、正しい判断をすることができなかった、つまり、判断力が極めて低かったわけです。それは「彼の判断力の低さが空白の57分を作った」ですが、ナレーションらしくすれば「彼の誤った判断が空白の57分を作った」ですかね <( ̄ ̄)>。
コメント
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